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真夜中。寮の自室。床には空の薬の入っていた容器と、薬を流し飲むためだけに開けた酎ハイの缶が数本転がっている。
動悸、高揚感、目眩、暑さ、鮮やかに彩られた世界、多幸感、寒気、虚無感、吐き気、気持ち悪い、忘却…………
感情も感触も一気に押し寄せては消える。何度も波のように繰り返される。嫌なことだけ消えて忘れさせて。どこかに置いてきたい。そう思って飲んだはずなのに、一瞬だけ忘れてもまた思い出す。
あれが自分に向けられたものじゃない悔しさが忘れられない。何でこんなにそばにいるはずなのに、どうして私じゃないのか。
床にしゃがみこんで、意識が朦朧としている中、ずっと握りしめていた携帯電話から、ボヤける視界でアドレス帳から目的の名前をなんとか探しだして通話ボタンを押した。
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