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    九条なぎさ

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    九条なぎさ

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    6.0クリア後から衝動的に書いて永遠に懐で温めていたゼノ光♂【6.0クリア必須】
    私が読んで楽しければいいので小説のルール基本無視。細かいこと気にしない人向け。置く場所が無いのでポイピクに一旦供養。
    ※自機の名前は出ていませんが、黒髪長髪のヒューラン♂の設定。

    #ゼノ光♂

    【FF14/6.0クリア必須】シリウスの流星【ゼノ光♂】メーティオンが飛び去った宙の先。夜明けの明るい空がどこまでも続いていく。脅威は退き、アーテリスの、宇宙の全てが絶望の闇に飲まれることはもう無くなった。終わったのだ。エオルゼア主要都市の近辺から始まった小さな一歩が紡いでいた冒険の日々が、ようやく。
    長かったな、と深呼吸をする。
    木桶で川の冷たい水を掬い、酔っ払い客にぶっ掛けたこともあった。逃げ出した羊を捕まえて柵の中に戻したこともあった。ダンスの先生を探すだけのはずが、ダンスをレクチャーされた事もあった。人攫いを解決するために身体を張った捜索活動をして、気づいたら当時脅威とされていた蛮神を目の前にすることもあった。あれよあれよという間に多くの蛮神を討ち倒していた。気づけば帝国からエオルゼアを守るための大きな戦いに身を投じ、千年もの長き間続いていた竜詩戦争を終わらせ、帝国の配下となっていたアラミゴとドマを解放し、第一世界という別の世界を光の氾濫から守り抜いた。
    根本の脅威はアシエンではなく過去のとある些細なきっかけだった事を知り、根源を討ち倒すため、最古の蛮神すら討ち破り、こんな遠い遠い宙の果てまで来てしまった。
    あぁ、本当に長い、長い旅だった。英雄と呼ばれた光の戦士の旅はここで終わり、やっと俺は──。

    「まさかこのまま帰れる、などと思ってはいなかろうな?」

    決して忘れていたわけではないけれど。
    そこはほら、実は空気も読めるんですよとか、そういうアピールがあったって良かったりはするものだろう。実際にそうであれば驚きはしつつも結果上々、大手振って皆で大団円、というのも悪くはなかっただろうに。
    いや、どうだろうな。そう思っているのは実は自分だけで、周りからしてみればちょっと遠慮したいところかもしれない。この話の結末がどんなものであったにせよ、その過程が忘れ去られるわけでも、無かったことになるわけでもないのだから。

    「これでも結構俺、ボロボロなんだけどな」

    先ほどの激闘ともいえる戦いを思い返しながら後ろを振り返る。
    強敵だったか、と言われるとそう。規模的には一番だっただろう。けれど自分の中で史上を極めるか、と問われると別にそうでも無かったりはする。第一世界で戦ったランジートなんかは下手をすれば普通に死ねたし、転身したエメトセルクも結構強かった。この旅路で戦ってきた人たちは、皆強かった。
    けど。
    目線の先で相対する男を見て少し心が躍る自分が居た。本音を言うとこっちの方が楽しみだったんだよね、とか周りに知られようものなら怒号が飛んでくるかもしれない。アリゼーあたりにはこっ酷く怒られそうだし、普段怒るより呆れそうなエスティニアンやサンクレッドまでもが怒鳴ってきそうではある。
    そういうのも悪くはない。悪くはないけど。

    「傷口をふさぐ程度は待ってやるが?死掛けの獲物をいたぶる趣味はないからな」
    「俺に白魔法の会得あると思ってるわけ?」
    「はっ……、連戦でも問題ない、と。見くびられたものだな俺も」

    事実、もうすでに倒してしまった敵である。もはや障害にすらなりえないことをどちらも知っていた。知っていて、分かったうえで、それでも“こんなに愉しい事”を見逃せるはずがない、という理由だけで殺し合いを始めようとするのだから常人の理解の度を超えている。

    「でも獲物も変えて、それに合わせて技も会得しなおしたんだろ?ちょっと楽しみ……いや、大分楽しみかな」
    「やはり、愉しいという概念を持っていたな?」
    「普段から戦いを楽しんでいたら気味悪がられるって。これでもそれなりに自重はしているんだぜ?あんたと違って」

    そうでもしなければ国も世界も救えなかった、なんていえばやはりまた怒号が飛んでくるだろうか。
    そう望まれて、そうであるようになり、そうならざるを得なかった。本当は国も世界も、どうでもよかったのだ。周りの、自分の大切な人たちを守れればそれでよかった。大層な大義名分のために武器を手に取ったわけではなかった。
    ただ、いつの間に、そうなっていただけで。
    守りたかったものは、今はもうなに一つ残っていなくて。
    心が疲弊していたときにあんたが現れたんだ。あんたはいともたやすく「光の戦士」を倒してしまった。けれど実のところ、少しほっとしていたんだ。神をも殺す化け物を止められる人がこの世界に居たことに。
    でも悔しくもあったんだ。世界にはまだずっと強い人が居たことに。
    だから、あんたを目指さないと戦い抜いてこれなかった。あんたを理由にしないと「英雄」を背負うことなどできなかった。
    心のどこかで、“もう何度やっても敵わない”と誰しもが思えばいいのになんて、少しだけ思いながら。

    玉座に刃が届いてしまった。

    今も鮮明に覚えている。夕暮れ時。真っ赤に染まる太陽を背に、鮮やかに咲き誇る花々を眼下にし。刹那。血飛沫がゆっくりと飛び散る様を。
    あの瞬間に悟ったのだ。自分が光の戦士であり続ける限り、自分の本当に守りたいものなんて何一つ守れやしないんだと。

    「なぁ」
    「なんだ」
    「失いたくないものを目の前にして失わざるを得ない現実が待ち構えていたら、あんただったらどうする?」

    少しばかりの沈黙があった。思案していたのかは分からない。
    ただじっと、その問いの意図を探るかのようにこちらを見やる。

    「さてな。俺には到底縁のない話だ」

    あぁ。まぁ、そうだよな。お前はそう言う奴だ。守るべきもののために力を振るうのではなく、抱いた目的のためにその力を利用する。

    「だが」

    「他者による略奪であるならば、それが俺の目的の妨げになりうるのならば」

    一時の間を置いて続けられた言葉に少しだけ驚いた。あまりにも意外だった。”縁がないからその問いにも意味はない“で、俺は素直に納得するつもりだったから。
    両の目は真っ直ぐ俺を捉えていた。

    「俺はそれを決して許しはしない」

    まるでさも当然かのように言ってみせた。当たり前であるかのように。疑いもせず。真っ直ぐに。愚直に。

    「……じゃあもし俺が月でゾディアークを操るファダニエルに殺されかけてたら、代わりに討ち倒してくれたって事?」
    「お前があれに負けるわけがないだろう」

    思ったよりも。と言うか想像以上に。
    ゼノスは俺を過大評価、あるいは絶対的信頼をしている。
    一度負けたから、でできるものではない。彼は俺というある種の特異な、あるいはイレギュラーな存在を客観的に理解しているのだ。
    驚きはしない、といえば嘘になる。こちらがどうして特異なのか、その理由を彼は知らないはずなのに、彼自身が出した結論が間違いなく、正当であるが故に、揺らぎようのない現実を見据えていることが──。
    ──あぁ。だからなのだろうか。
    今この場に居て、これから殺し合いを、命のやり取りをするというのに「この男にならば殺されてもいい」と片隅で抱いてしまっているその理由はきっと、光の戦士ではなく、英雄でもなく、ただここに居るだけの居合わせただけの好敵手であると、彼がそう思っていて、俺もそれを理解しているからなのかもしれない。
    そして彼が先ほど背に俺を乗せたのも。いや、乗せたなどとは微塵も思っていないだろう。たまたま俺が乗っただけ。勝手に足場にしただけ。彼はそれを気にも留めず、ただ邪魔だった彼女を追いかけただけ。
    腑に落ちた。こっちの方が楽しみだった理由。初めて戦いに心を躍らせる理由。”こんなに愉しい事”と口にできる理由。
    そう、ただそれだけの事だった。うわべの理由もなく。誰かに強いられることもなく。背に抱えるものもなく。
    したいから、そうするだけの事。
    守るために特化させた装備を震わせて、エーテル操作をして攻撃に特化した装備へと変換しなおす。腰に携えていた直剣は緩やかな曲線を持つ刀に。身体を覆っていた鋼鉄のプレートは跡形もない。

    「折っていなかったか」

    その声はどこか少し嬉しそうで。

    「一応、ね。あんたを殺すまではこの装いは捨てられないし」
    「……ハッ、面白い」

    刹那。
    重い踏み込みと共に鎌を構えた彼が一瞬で距離を縮めて突っ込んできた。それをさも当たり前かの様に既所のところでかわして刀の柄を強く握りしめて一閃。
    互いにこの程度の攻撃に当たるわけがない、といった様子で繰り出した初撃は次の手へと緩やかに移されて、双方が大きく離れる間に果たしてどれほどの打ち合いがあったかなどを知る由はなく。
    幾ばかりかの剣戟の後、その間はさらに広くなり、これでは到底剣圧など届かないと距離を詰めようとしたその時だった。
    気の高まりに呼応し増大するデュナミスの影響か、圧倒的なパワーとなって叩きつけられたタイダルウェーブが胸を直撃して僅かに肺が潰された。押し流す水に逆らうために刀を地面に突きつけ水流は逃れ切ったが、呼吸のペースを乱されて暫く身動きが取れなくなる。

    「お前もまだいけような?」

    その隙を狙ってか呼び出したアヴァターを自身に憑依させた彼が再び一気に距離を詰めてくる。避けようにもまだダメージの残った身体ではとっさに動けず、憑依によって得た力か、エーテルの刃を纏った鎌が俺の胸に深く突き刺さる。

    「ッガ、ハ」

    体内で濁流の様に噴き出た血が行き場を失って口から吐き出る。

    「どうした、この程度でくたばるのか?」

    そんなわけにはいかない。
    こんなあっさり終わっていいものか。こんな一瞬で終わっていいものか。まだ満足していないのに。殺し合えていないのに。愉しめていないのに。
    鎌の刃を掴んで引き抜こうとする。
    まだ、終われない。
    終わらせるものか。

    「……ッ、ま、だだ……!」

    さらに傷口か広がることも気にせず鎌を引き抜く。胸からびっくりするぐらいの血が流れ落ちるが、そんなことはどうでもよかった。
    まだやれる。まだ戦える。それだけで傷口の痛みなど気にならなくなっていく。

    「フッ!そうだ!果てるにはまだ早かろう、友よ!」

    剣圧でけん制しつつ体勢を立て直す。
    柄を握りなおして彼を見やる。アヴァターに憑依されているためか、少し異形の姿格好となっているが、その本質まで変わっているわけではない。
    ただこの時のためだけに手に入れたもの。
    ただこの瞬間に消費されるためだけのもの。
    それは何も彼だけのものではない。こちらだってここに至る旅の中で得たものはあった。それを出し惜しみするというのはあまりにも礼を欠くというもの。むしろ余計な血が流れ出たこと頭がすっきりした。乱れていた呼吸も整えられた。ならば。
    刀を鞘に納め直し、ひと呼吸の後。
    瞳でしっかりと彼の姿を捕らえ、一歩二歩と踏み出し三歩目でそれは神速に達した。

    「甘い!」

    が、それ自体は彼もよく知る速度だ。
    鎌が振り下ろされる。鎌は、空を切る。

    「ッ!」

    気配を感じたのか彼は後ろを振り向きざまについでに鎌も振り回す。だがそれも空振り。
    やみくもに振り回すのが妥当でないとすぐさま気づいた様子だったがもう後の祭り。

    「奥義・波切」

    口頭と共に四方から突然真空刃が波状になって降りかかる。
    けれども流石と言うべきか、凄まじい反応速度で真空刃の嵐を防ぎきって見せた。少し前の俺ならば感服していたかもしれない。

    「返し波切」

    カツン。と刀が鞘に納められ、鍔が鯉口に当たる音が響いた瞬間。防いだはずの真空刃が間髪入れずに降り注いだ。
    並外れた反応速度をもってしても防ぎきれないそれが直撃した。
    逆にそれを防ぎきられたら流石に頭おかしいだろとか騒ぎ出すところではあったけど。
    ゴフッと一回咳き込んで口元を手で覆うともうべっとり。一回見せてしまった以上二度は通じないし、身体も割と結構悲鳴をあげているし。ここがデュナミスにあふれた空間じゃなかったらとっくの昔に倒れていてもおかしくない。もうそれぐらい疲弊してる。

    「……まだだ……!俺はまだ、生きている!」

    でもその一声が聞けて安堵した。まさかそんな、この程度で倒れるはずがないだろ?という絶対の信頼。彼を信じるなんてどうかしている、のかもしれないけれど俺にしてみたらその辺の他人よりかはずっと信頼できる。
    彼がただこういうやり方しか知らないだけのことで。
    だからいま振り下ろされているこの鎌が、それで絶命するはずがないという彼なりの信頼であることも分かっていた。分かったうえで振り向きざまに受けた。……いや、嘘を吐いた。そう見栄を張りたいだけ。
    流石に二度も胸を食い破られるとか聞いていないし。そのうち心臓を取り出して食われそうな勢い。

    「それは流石に……、勘弁かな!」

    かき集められるだけの力を集めて彼を引きはがす。それでも飽き足らない彼は鎌を大きく振りかざしてきて、それ自体は受け止めた刀を起点にエーテルのバリアを張って弾き飛ばした。
    宙に投げ出された彼がそのまま空中で体勢を整え直すと、手放してしまった鎌の代わりに拳で殴りかかってきた。だから俺も同じく弾き飛ばした際についでに弾き飛ばされてしまった刀の代わりに拳で迎え撃つ。
    正真正銘ただの殴り合いになった。
    殴って、殴り返して。ただそれだけ。たまに蹴りも入れられたけどそれはご愛嬌。
    もう力が篭っているのか篭っていないかの感覚も分からない。ちゃんと殴れているかも正直分からない。お互いに血を流しすぎて、多分もうほとんど見えていないのかもしれない。
    なのに。
    不思議と愉しいんだわこれが。
    もうすぐ自分は死ぬだろうという、何となくざっくりとした感覚はあったけどそれ自体怖くはなかった。ただ、うん。約束果たせないなって、それだけ。
    しょうがないよね。すごく愉しくて仕方がないんだから。

    ──あぁ。

    この時のために生きていたんだ。
    この一瞬のために生きていたんだ。

    あの時の君はこんな気持ちだったのだろうか。
    もしそうだとしたら、ようやく理解ができた。
    その極致に、ようやくたどり着けた。

    互いの拳がクロスして互いの顔に直撃する。衝撃でお互いにふらふらと後退して、先に倒れこんだのは彼の方だった。けどこっちもそう長くたっていられず、続けざまに床に転がり込む。
    もう足の一本、指の一本動かないほどに疲れ果てた。

    「……あぁ、俺はまた、負けたのか……」

    宙に彼の声が響く。

    「……悔しいものだな……」

    しみじみと。心の底から悔しそうな。でもどこか、満足しているような声。
    そのあまりにも弱々しく、けれどまだ残る芯の強い声音は俺の心をグサグサと抉る。

    「あぁ……、悔しい……。心底悔しい。……あんたに勝っちゃったら……、俺は、どこに行けばいい……?」

    勝ってしまったことが。終わってしまったことが。何もかもが悔しい。
    もっと、戦っていたかった。殺し合っていたかった。この時間がずっと続けばよかったのに。それがもうここで終わり、この先がないのだとしたら。

    この心は、どこに行けばいい?

    未踏の地は俺の心を掻き立ててくれるのだろうか。未開の地には心躍るようなものが眠っているのだろうか。まだ見ぬ地にはあんたよりも強い奴が居るのだろうか。
    あぁ、そんなことを考えてみても。なにも、ちっとも、わくわくしない。むしろ淋しさばかりが大きくなっていく。
    だって。
    その景色の中にあんたは居ない。
    あんたほど俺を理解してくれる人なんていないだろう。
    あんたほど戦っていて楽しいものももうないだろう。
    そう。ここで終わりなんだ。
    答えを得てしまったんだ。
    もっと早くに知りたかった。もっと早くに分かりたかった。
    他人からしてみたらそれだけの、取るに足らないくだらないもの。
    こんな間際で分かったって、この身体はもう動かないし、声も震えてうまく出ない。伝える術がないのに、どうすればよかったのか。

    「最悪だ……」

    鞭を打つ。
    どうせ死ぬ身だ。今更肺がつぶれようが腸がちぎれようが大したことでもない。むしろそれぐらいで済んで、例えば魂の一片にでも焼き付くなんてことがあったらその方がずっとましだ。そっちの方が不可能に近いけど、それぐらいの夢は見たっていい。バチは来世の自分がどうにかするだろ、とか、そういうノリ。
    何とか身体を返して這い蹲って。ずるずると身体を引きづって彼に近づく。

    「なぁ、ゼノス」

    もう声になっているかどうかも正直分からない。

    「次、逢ったら、旅に出よう」
    「旅……だと?」
    「ふたり、で」

    「それで、いろんな景色を見て」
    「いろんな人とあって」
    「おいしいものを食べて」
    「時にはきょうてきとたたかって」
    「きょうもたのしかったって、ねむりにつける」
    「そんな、たび」

    「……ハッ……、わるく、ない……」

    よかった。
    これで、もう、だいじょうぶ。
    ここがアーテリスから、どんなにとおく、はなれていて。
    たましいが、かえるべきほしをみうしなっていたとしても。
    そのかがやきがあれば。


    何度だって巡り合えると信じているから。
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    九条なぎさ

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    ※自機の名前は出ていませんが、黒髪長髪のヒューラン♂の設定。
    【FF14/6.0クリア必須】シリウスの流星【ゼノ光♂】メーティオンが飛び去った宙の先。夜明けの明るい空がどこまでも続いていく。脅威は退き、アーテリスの、宇宙の全てが絶望の闇に飲まれることはもう無くなった。終わったのだ。エオルゼア主要都市の近辺から始まった小さな一歩が紡いでいた冒険の日々が、ようやく。
    長かったな、と深呼吸をする。
    木桶で川の冷たい水を掬い、酔っ払い客にぶっ掛けたこともあった。逃げ出した羊を捕まえて柵の中に戻したこともあった。ダンスの先生を探すだけのはずが、ダンスをレクチャーされた事もあった。人攫いを解決するために身体を張った捜索活動をして、気づいたら当時脅威とされていた蛮神を目の前にすることもあった。あれよあれよという間に多くの蛮神を討ち倒していた。気づけば帝国からエオルゼアを守るための大きな戦いに身を投じ、千年もの長き間続いていた竜詩戦争を終わらせ、帝国の配下となっていたアラミゴとドマを解放し、第一世界という別の世界を光の氾濫から守り抜いた。
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    OH_msc

    SPOILER5.4メインクエ後のヒカセンとリセのこばなし
    ゼノ光だけどゼノスは出てこない
    何もかも、すっかり燃えてしまった。空中庭園に足を踏み入れた冒険者は、改めてその事実を再認した。
    「リセ。下で話し合いするってさ」
    「え? ああ――ごめん、すぐ行くね」
     すぐ行く、と口にしながらも、リセは冒険者に背を向けたまま動かない。きっと焼け焦げて乾いた土の一画を見つめているのだろうと、冒険者は思った。そしてその目に映るのは死した土壌ではなく、つい先ほど前までそこに広がっていた、一面の花々なのだろうとも。
    「あんなに綺麗な花畑だったのに――ゼノスも、ファダニエルも、なんとも思わないのかな」
     リセが自分を見ていないことに冒険者はひどく安堵した。どうしてだか今ばかりは、あのまっすぐな視線を受け止められそうになかったのだ。
    「花だけじゃない。人の命を、世界を、全部めちゃくちゃにしたいだなんて、そんなのおかしいよ」
     リセは冒険者の沈黙を同意として受け止めたらしかった。切り立った渓谷の上に建てられたここアラミゴ王宮からは、ギラバニア湖畔地帯が遙々見渡せる。夜闇の中まばらに広がる灯は、そこにある人々の営み一つ一つを思わせた。
     冒険者は多くを見た。うつくしいものも、奇妙なものも、ときには汚 1486

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