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    おやかた

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    おやかた

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    僕は"わたし"であり続けるついにガイウス・ヴァン・バエサルを殺した。あの日からずっと願った復讐は、結果的にエオルゼアを救う事にもなったのだけれど。

    騒がしくて耳が痛い祝賀会をいい所で抜け出して、姉さん達にその事を報告しにいった。上の2人は泣いて僕を抱きしめたけど、ウララは何も言ってくれなかった。僕の手を引いて先を歩いてくれた、ウララの大事な足を奪った奴らをやっと殺してあげられたのに。



    その日から今日までウララとは全然話せていない。朝、いつもみたいに部屋へ行ったらもうイト姉さんがいたし、僕と目も合わせてくれなかった。ご飯も位置を教えてくれたのはイト姉さんで、ずっと無言のまま。

    ...しばらく家には戻れないから出発前にちゃんと話したいと思ったのに、結局一言も話せないままレヴナンツトールに行く羽目になった。



    「よっ!おはよう、えに」


    「おはようグ・ラハ。今日もありがとう」


    「気にすんなって。朝飯買うついでだからさ!」



    バルデシオン委員会から来たお目付役のグ・ラハ・ティア。どちらかと言えば目をつけられてるのは彼の気もするけれど、アラグの知識は誰よりもある立派な賢人様だ。

    毎朝必ず壁の代わりをしてくれる優しい人でもある。最初の頃に地形を確かめるために色々触りながら歩いていたのを見られていたみたいで、古代の民の迷宮を踏破した後からこうして隣を歩いてくれるようになった。
    ...正直、双剣とか足を使ったエコーロケーションで普通に歩けるんだけどね。気を張らないでいられるのは楽でいいし、朝ごはんの話とかお互いが行った場所の話とか、なんでもない事を話しながら歩くのは案外楽しい。



    「なぁ、お前はどうして冒険者になったんだ?」


    「そんな大層な理由は無いよ?ギルドの仲間にやってみればって言われて、なんとなく」


    「あの『暁』に入ったのは?」


    「それも流れでなんとなく。わたしの目、こんなだから1人で冒険するのも大変で...。で、暁から声をかけてもらって、誰かと行動できるなら楽だなって思ったから、入った」




    本当の理由は言えないけれども、はじめての場所へ1人で行くのが大変なのは本当の事だもの。

    ...良くも悪くも暁を利用していたのは、墓まで持っていく僕だけの秘密だ。たまたま不思議な力を持っていて、同じ力を持つミンフィリアに誘われた、ただそれだけでいい。



    「ふぅん....。それでも辞めようとは思わないんだな、冒険者」


    「え?」


    「いつもああやって岩を触って歩いたり、ちょっとした段差が見えなくて躓いたり...。大体の人は心が折れて、早々に辞めそうなもんだろ?なのにお前は続けてる」


    「それは、まぁ....」


    「しかもあの第XIV軍団まで壊滅させたんだろ?すごいよ、本当」



    その言葉は、僕に浴びせるものじゃないよ。冒険なんてどうでも良くて、本当はウララを傷つけてパパもママも奪っていった第XIV軍団を皆殺しにしたかっただけなんだよ。

    この先ずっと知られる事のない真っ黒い感情は、曖昧な笑顔で押し殺す。




    「.......エニ、何かあったらちゃんと相談しろよ」


    「うん?突然どうしたの?」


    「だってオレら、と.....仲間!同じ調査隊の仲間だろ!?その、ほら!困った時はお互い様って言うだろ!」


    「...大丈夫。もしわたしが困ったら、グ・ラハは助けてくれるでしょう?それに貴方が困ったり悩んだらわたしが助けに行く」



    こういう時、"いい子"の笑顔は立派な盾になってくれる。

    きっと調査隊の役目が終わったら会わなくなるんだから、多少嘘をついたって大丈夫...のはずなのに、どうしてか胸が痛い。


    ウララに無視され始めた日よりはずっと痛くないのに、魚の小骨が引っかかったみたいにちくちくする。

    嘘をついたから?本当のことを言わないから?そんなの、今までだって沢山してきたのに、どうして?



    「ふぁ...あ、おはようっス....」

    「おいウェッジ、シャキッとしやがれ!」

    「っ!」

    「危ない!」


    考え事をしていたら、とっくに調査拠点に着いていたみたい。

    突然聞こえたビッグスの大声にびっくりして、足元の小さな突起に躓いちゃった。グ・ラハが間一髪で腕を引いてくれたから転ばなかったけれど、腰に提げてた双剣が大きな音を立てて地面を転がっていった。



    「すまんエニ!気づかなかった!」


    「ううん、大丈夫。わたしも早く慣れなきゃね」


    「もっとガツンと言ってやってくれッス〜!朝から大声出さないでくれって!」


    「...ウェッジ、顔洗ってきたらどう?少しは目も覚めるよ」


    「エニさんまで敵ッス!?」



    双剣は刃の欠けもなく無事だったけど、もっと気をつけなきゃ。ここの人たちといると妙に気が抜けちゃうから、いつか"僕"を晒してしまいそうでちょっと怖い。

    僕の本当の心を知られて、ノアのみんなが僕にとって悪になるのは嫌だ。そうなったら、みんなを殺さなきゃいけなくなる。

    だから今はまだ、"僕"を知られる訳にはいかないんだ。
    大丈夫、僕ならきっと上手くやれるよ。この調査隊の役目が終わるその時まで"わたし"で居てみせよう。


    「行こうグ・ラハ。今日はどこを調べるの?」


    ほら、きっと大丈夫。






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