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    烏のポイピク垢

    @Crow_mmrnll

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    POIPOI 18

    烏のポイピク垢

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    ポイピク使い方慣れる為にやってみました…ウスに告白するノースディンです。結ばれません。

    #ノスウス
    nosus

    告白「やあ!久し振りだな、我が友ノースディン!」

     今日も今日とて読書に勤しんでいたノースディンの元へ、美しい滑らかな黒髪の吸血鬼がやって来た。竜の一族の次期当主たる彼は、何かに行き詰まると親友であるノースディンによく助言を求めに来ている。ノースディンは鬱陶しげに眉間を押さえながらも、つい口角が上がってしまうのを必死に抑えていた。

    「はぁ…ドラウス、今度は何だ」
    「ああ、実は……俺、好きな人ができたんだ!」

     ノースディンは紅い両目を見開き、言葉を失った。ドラウスが己の力を借りに来てくれたという事実に少し浮かれていたというのに、その内容はよりにもよって恋愛相談。こんな仕打ちは無いだろう。先程までの高揚感はすっかり冷め、ノースディンの心が凄まじいスピードで凍りついていく。目の前が真っ暗になる、とはこういう感覚なのか。ノースディンは一度止まった呼吸を何とか持ち直し、手元の本に目線を落として「そうか」とだけ答えた。それが精一杯だった。

    「それでさ、相手の女性が日本の吸血鬼なんだけど俺日本にあまり詳しくなくて…これから色々と教えてくれないか?」

     成程、私に恋の応援をしろと。なかなか酷な事を言ってくれる。しかしここで断ってしまえばドラウスは他の友の所へ行ってしまうだろうし、何より親友に拒絶されれば傷付くだろう。他の女性と笑い合うドラウスは見たくないが、ドラウスの悲しそうな顔はもっと見たくない。ノースディンは覚悟を決めた。

    「……仕方無いな。良いだろう」
    「やった!あっあと、その、女性に対する態度…?とか、スマートな扱い方、とかも教えて欲しいなって……ほら、ノースって俺なんかよりずっと女性経験が豊富だから…」
    「それは…、………分かった、教えてやる」

     さーすディン!!と屈託なく笑うドラウスのこの顔に、声に、ノースディンは逆らえない。これから少しずつ自分で自分の首を絞めていくのか。手の込んだ自殺だ、などと考えながらノースディンはドラウスに血液の注がれたグラスを渡し、ドラウスの想い人についての話を聞き始めた。



     それからドラウスは足繁くノースディンの城へ通った。その度に日本の知識や女性との接し方を伝授しながら、ノースディンはドラウスから聞く恋の進捗状況を1冊のノートに纏めていくことにした。彼女はミラという名であること、他の吸血鬼の能力に干渉し操作する能力を持っていること、長い黒髪に気怠げな大きな瞳がとても美しいということ、聡明で芯が強く心優しい女性であること。日に日にノートへの書き込みは増えていった。

     ある日、ドラウスが遂にこんな相談をしてきた。

    「なあノースディン……その、ぷっ…プロポーズ……って、どんな風にすれば、良いのかな…?」
    「何だ、もうそんな所まで仲を深める事ができたのか。やるじゃないか」
    「いっいやあ、何かそのー…そろそろ、かな?みたいな感じになってきたような…気が、して……」

     いつにも増して恥ずかしそうに後頭部を掻くドラウスに微笑みかけつつも、ノースディンの心中は決して穏やかでは無かった。とうとうこの時が来てしまったか。想い人が自分の手によって他の吸血鬼と結ばれてしまう。親友の関係に甘んじて己の本心に見てみぬふりを決め込んでいたツケが回ってきたのだ。本当の気持ちを伝える勇気など微塵も無い癖に、想いを捨てきれない。この数年間で表情を取り繕う事ばかりが上手くなっている。凍った心に笑顔を彫り、頼れる親友を演じ続ける。これぞまさしく氷笑卿か、などと自嘲してみるがちっとも面白くない。

    「そうか。プロポーズというのはな、その時自分の頭に浮かんだ言葉を綺麗に組み立てて素直に伝えてやればいい。お前のミラ嬢への想いを全てぶつけてやれ。大丈夫だ、お前ならできる」
    「ノース…!」

     プロポーズなどした事も無い癖に偉そうな口を利けたものだな。自分で自分を揶揄する。

    「あの、ノースは…さ、そういう事しようと思ったことある…?」
    「……ん?どういう事だ」
    「えっと…今までにさ、プロポーズしようって位まで思った相手は居るかい?」

     お前だ、ドラウス。私がプロポーズをしたいとまで想う相手などお前しか居ない。そう言ってしまいそうになる唇を咄嗟に噛んだ。ドラウスが何を求めているかは分からないが、それだけは誤答だろうと口をつぐむ。

    「まあ……居なかった訳ではない」
    「本当か!?じゃあさ、どんな言葉を言おうとしてたか教えてくれないか?参考にするから!」
    「絶対嫌だ」
    「そんな!頼むよ親友!ヘイ親友!お願い親友!!」
    「私の恋などどうでもいいだろう」
    「そんな事無い!何ならノースの話も聞きたい位だ!ノースの方からはそういう話してくれないし…」
    「とにかく、私の話はしない」
    「ノース〜……」

     前髪をしおしおと眼前に垂らし、ドラウスが涙目でノースディンを覗き込む。話してたまるか、私の恋など。特にドラウス、お前にだけは。そんなノースディンの想いが通じるはずも無く、ドラウスは捨てられた仔犬のような瞳を向けてくる。ノースディンは根負けした。

    「……分かった、例を出せば良いんだな?」
    「さーーすディン!!」

     何が悲しくて想い人への告白を一例として受け取られる前提で言わなければならないのか。どうしてこうなった、ドラウスに恋人が出来る前に本心を伝えていれば済む話だったじゃないか。…まあ、それがどうしてもできなかった訳だが。ノースディンはドラウスからの拒絶に怯える自らの度胸の無さを悔いた。

    「………ドラウス」
    「うん!」

     ドラウスは先程とは打って変わって前髪をぴこぴこと揺らし、ノースディンを期待の目で見つめる。心臓が張り裂けそうに高鳴る。百年単位で拗らせた想いを乗せるだけの言葉はなかなか見つからない。何が『その時自分の頭に浮かんだ言葉を綺麗に組み立てて素直に伝えてやればいい』だ。そもそも自分ができていないじゃないか。己の脳を叱咤激励し、ノースディンは必死に言葉を探った。


    「ドラウス、お前を一目見た時から私の心は決まっていた。その美しい髪も、瞳も、爪も、涙さえ愛しくて堪らない。……愛している、永遠に。私がいつか塵となるその日まで、お前だけを愛すと誓おう。私のこの燃える想いを受け取ってはくれないか…?」


     言った。言えてしまった。ドラウスの事だけを想い、ドラウスの為だけに紡がれた言葉。いつか言おうと思っていた、いつまでも言える事が無かったであろう言葉が、ノースディンの口からドラウスの耳へと吸い込まれていく。ぽかんと目を丸くして固まっているドラウスを見て、もし感付かれたならここで死のうとまで考えた。

    「おい、言ったぞ。これで満足か?」
    「…………は!!す、凄いぞノース…まるで本当に私に告白する為に考えていたかのようだ!思わず聞き惚れてしまった…!すぐにこんな言葉が出てくるなんて流石はノースディンだな!!」

     心底感心した声を上げるドラウスに、ノースディンは複雑過ぎる気持ちになった。そこまで察しておきながら私の想いに毛程も気付く様子が無い。その事実がノースディンの心を壊れそうな程にめちゃくちゃに突き刺した。結局この技術は、ドラウスが彼の想い人と結ばれる為に使われてしまうのだ。それでも断れない、無視できない、協力してしまう。己の恋心くらいドラウスの幸せに比べれば安いものだ。参考になったのなら何よりだ、とノースディンは笑った。



    全ては、ドラウスの笑顔の為に。
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