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    レイチュリ
    ワンウィーク17回
    お題【おうちデート、ラブレター】

    付き合ってちょっとたってる2人の話

    殴り書きの恋文 それは本当に珍しい光景だった。レイシオが不在であろうとも入って構わないと言ってはいたものの、まさかここまで気を許されているとは思っていなかったのだ。すぅ、という吐息、見えなくなった特徴的な虹彩。机に突っ伏しているせいで上下する肩。眠っている、らしい。
     今日まで遠征だという話は聞いていた。だから今日の夜は会いたいと言う彼に、外での予定ではなく家でゆっくりすることを提案したのだ。数ヶ月前に渡したこの家の鍵を使わせたいという算段もあった。どうにも、勝手に上がり込むということに抵抗があるらしいので。
    「……アベンチュリン?」
     問いかけてみても答えはない。当たり前だ。起こすための声ではなく、ただただ確認するためだけの声。当の本人である彼は呑気にまたすぅ、とその寝息を響かせた。
     今まで、どこにいても気を張っているみたいだった。それは本社にある彼の執務室でも、何度か招いてもらった彼の自宅でも。いや、それはレイシオがいたから、という方が大きいのかもしれない。誰もいない、かの天才の想像した生き物しかいない場所でなら、彼も息をつくことが出来るのかもしれない。
     だからこそ今回、アベンチュリンが「会いたい」と言ってきたことに驚いたのだ。出張で疲れているであろう今日、休むべきであろう今日、自分の家ではなくレイシオと会うことを選択してくれたことが。それに浮かれて早めに仕事を切り上げて、その結果がこれだ。本当に珍しいものを見た。
     兎にも角にも、このままでは身体を痛めるだろう。遠征艇だってそこまで寝心地のいいベッドがある訳でもない。そう思って抱えて、そこでようやく彼が机の上に広げたノートに気が付いた。
    「……? 何かの記録か?」
     確認しようとして、もぞ、と彼が身じろいだ。違う、今は自分の興味関心ではなく、彼をベッドに運ぶのが最優先だろう。いやベッドはさすがに遠いし、階段を上がらなければならないから起こしてしまう可能性がある。となれば、後ろのソファだろうか。
     そう判断して彼を起こさないように運んで、しかしレイシオの頭の中はあのノートへの関心ばかりでうまっていた。遠征の記録であれば電子媒体でやるだろうし、そもそも他人に見せてはいけないようなものをここで広げるとは思えない。そして何より僅かに見えた文字は、「レイシオ」というもの。まさか他のレイシオ性の者と交流がある訳でもないだろう。いや、勝手に両親や親族に手を回している可能性はあれるけれど、だとしてもそれはレイシオにとっても関係があるもの、という判断でいいはずだ。



     今日はべリタス・レイシオという人に会った。いつも通りに拳銃を使ったロシアンルーレットで簡単なゲームを演出してみたら、予想以上に嫌そうな顔をされた。なるほど、こういう人かと思った。あんまり仲良くはなれなさそう。
     今日はレイシオと組まされての仕事だった。上層部は何を考えているんだろう? まぁ従わないと僕は死ぬしかないから、行くけど。でも僕を見てすごく嫌そうな顔をしたから、彼にはちょっと悪いことをしちゃったかもしれない。
     レイシオと僕は戦略的パートナー? らしい。ふぅん。僕なんかと組まされるなんてかわいそうなレイシオ。いや、僕にとっては幸運なんだけど、これって僕が巻き込んだことになるのかな。だとしたらちょっと申し訳ないかも。
     誰かに生きろって言われたの、初めてだったなぁ。多分レイシオは僕が泣くほど嬉しかったなんて言っても信じてくれないんだろうな。いや、確かに泣いてないけど。だって涙なんてもう枯れちゃって一滴も出てこない。でも、本当に嬉しかったんだよ。
     夢かなぁ。多分夢、この文字もきっと明日になったら消えてるんだ。だってあのレイシオが僕のことすき、って。おかしい。こんなの間違ってる。でも、断っちゃったけど、嬉しかったなぁ。ちゃんとかわいいお嬢さんと幸せになって欲しい。その時はレイシオにおめでとうって言って、笑えるようになっておかないと。
     ジェイドとトパーズに呼ばれて行ったらレイシオがいた。なんで? 咄嗟に逃げてきちゃったけどいいよね、だって別に話すことなんて、無いし。僕がただ気まずくて会いたくないってだけ。あ、でもそれが上層部にバレたのかな。まだ戦略的パートナーとして使うつもりだっただろうし、それが解消されると僕の価値も激減するんだろうから。
     夢じゃない、らしい。僕、レイシオの恋人になっちゃった。
     昨日行った星、レイシオと一緒に行きたかったな。珍しいものを貯蔵してる学芸員と仲良くなったんだ。それの価値は僕には分からなかったけど、多分レイシオなら楽しめたんだろうし。
     綺麗な石を見つけた。まるでレイシオの目の色みたいで、だから買っちゃった。でも突然お土産だ、なんて渡しても迷惑かな。うん。自分用にしよう。
     昨日初めて、レイシオに抱かれた。本当に僕でいいのって聞いたのに怒られた。だって僕なんか、多分レイシオにとっては通過点だろうし。いや今の彼からの言葉が嘘だとは思わないけど、僕以上の人なんてたくさんいる。だから君の貴重なそれを僕に無駄打ちするなんて、って思って。僕の中では、この記憶だけを抱えて生きていけるくらいの思い出になったけど。
     バレた。まずい。レイシオのためにって思って買って、結局渡せてなかったものが軒並み。何とか誤魔化したけど大丈夫かな。早めに保管場所を変えないと。
     レイシオに怒られた。どうしてそんなふうに僕の気持ちを受け取らないんだ、って。ちゃんと受け取ってるし、嬉しいよ。でも事実として無くなるものだし。何を言うのが正解だったんだろう。僕、ちゃんとレイシオが好きで今が幸せではあるんだけど。
     レイシオにわがまま言っちゃった。会いたい、って、なんてありきたりな言葉なんだろう。消そうと思ったのにそれより前に返信が来ちゃって、この遠征が終わったらレイシオの家に行くことになっちゃった。迷惑じゃないかな。でも、嬉しいな。綺麗な貝殻を見つけたから、これをお土産にしよう。渡せる、かなぁ。

     それは日記のようだった。とはいえ日付が飛んでる箇所も多くて、そもそも言葉として形を生していないものもある。ただ最初よりも文字が綺麗になっていたし、読み進めるにつれて文法もまともになってきていた。言語モジュールが正常に読み取れるものも増えた。つまりはそれを目的としていたのだろう。おそらくツガンニヤにいた時は文字なんてなかっただろうし、奴隷にまともな教育環境が揃っていたわけもない。しかし文字が分からないのなら仕事ができず、仕事をするなら分からなければ困ることが増えてしまう。それを慣れさせるための、ただの習慣。
     しかしこれはあまりにも、なんと言うか、刺激が強い。いや、彼がレイシオの告白に対してそういう疑いを持っていたのは知っていたし、それが将来なくなると信じて疑わないのには本当に頭を痛めている。ジェイドやトパーズに彼を呼び出してもらったことも事実で、しまい込まれていたレイシオ宛の土産の山を見つけたのも事実。でも、まさかこれ程とは思っていなかった。
     彼の、アベンチュリンのこの日記は、思った以上にレイシオで埋め尽くされていた。遠征先でレイシオが好きそうだな、と思ったもの。レイシオと一緒に行きたいと思った場所。レイシオならもっと詳しく話してくれそう。レイシオは顔を顰めながらも完食してくれそう。そんなことばっかりだ。
     それでいて、彼はまだレイシオの傍を離れるつもりでいる。それがなんというか、酷く腹立たしくて。
    「れいし、お?」
    「起きたか?」
    「あれ、僕寝て……っ!?」
     どたん、と音がした。きっとソファから落ちたのだろうと予想はできたが、今はそれよりもこれを読むことの方が重要だった。ところどころ破り捨てられた場所や、インクが滲んでいる場所、線ががたがたになっている場所。それらをちゃんと見て、これを書いた彼のことを理解したい。
    「レイシオそれっ!」
    「借りている」
    「いやっか、返してくれって!」
     伸びてきた手から本を遠ざけてまた読み進める。腕のリーチはレイシオの方が長いのだから、そうヘマをしない限りは彼に勝ち目は無い。それに今更だろう。既に、最後まで読み終えてはいるのだから。
    「綺麗な貝殻、とある。今回の遠征先は海のある星だったのか?」
    「っ、」
    「僕は君の言う『綺麗な貝殻』とやらを見てみたいんだが。持ってきていないのなら後日君の家にでも伺おう」
    「うぅ……」
     そこまで言われて、最後まで読まれていることを悟って、ついに観念したらしかった。ずるずると座り込む彼に、それでも恨めしそうにこちらを見あげる彼に、くすりと笑ってみせる。
    「くそ……忘れてくれよ、気持ち悪いだろこんなの」
    「何故?」
    「だって僕……本当に、思ったこと書き殴ってるだけだし」
     つまり取り繕わない彼のこの言葉は、レイシオに気持ち悪がられるものだと思っているということだろうか。確かにあけすけで率直で、彼の口から聞かない言葉もたくさんあった。だとしても。
    「僕はこれを、君からの恋文のようだと思ったが」
    「っ、!」
    「恋人から貰う恋文は嬉しいものだな。ふむ……僕もまずは、便箋選びから始めよう」
     もう逃げることはせずに、彼の目の前で同じようにしゃがみ込んだ。真っ赤な顔で、それでも不服そうに、彼の独特な虹彩がレイシオを射抜く。いつもはへらりと笑うそれを崩したのが自分だと思うとなんだかおかしくて、レイシオは声を上げて笑ってしまった。
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    DONEレイチュリ🧂🦚
    ワンウィーク【幸せのかたち、さよならから始まる】

    失ったものが降ってきた🦚の話
     それは、遠い昔になくしてしまったものだった。日中は熱すぎるくらいなのに陽が落ちると途端に寒くなって、そんな中で口にする薄味のスープ。具材なんてほとんどない、いっそ湯を沸かしただけといってもいいくらいのものだ。けれどそれを飲みながら過ごす日々は決して地獄なんかじゃなかった。血のつながった家族がいて、二人でそれを飲みながら他愛もない話をする。明日がどうなっているかも分からないのに、それでも確かに満たされていた。
     地獄というのならその後、そんなたった一人の家族を亡くした時から始まったものだろう。どうして生きているのかも分からない、どうして死ななかったのかも分からない。ただこの『幸運』のおかげで生きながらえていて、この『幸運』のせいでまだあのオーロラの下には行くことができなくて。でも『幸運』以外にも、一族全員の命がこの生の土台にあるのだ。だからそれを自ら手放すなんてあってはならない。そんなことをしたら、オーロラの元で再会するなんて夢のまた夢だから。そんなことばかりを考えて、死ねなくて、ずっと生き続けて。
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    DONEレイチュリ🧂🦚
    ワンウィーク【賽は投げられた、カウントダウン】

    🦚が投げた賽とその末路
     ピアポイントまで戻る遠征艇の中でアベンチュリンは頭を抱えていた。いや、確かにそれの原因を作ったのは自分だけれど。だからある程度の報復というか、仕返しというか、そういうのがあるだろうと覚悟はしていたけれど。でもこれは、決してアベンチュリンの想定内には収まらない。
     どうしよう。どこかに時間を巻き戻すような奇物はないだろうか。もしくは対象者の記憶を消す薬とか方法が落ちていないだろうか。後者ならメモキーパーに依頼すれば、どうにか。アベンチュリンなんていう石心の依頼を受けてくれるようなガーデンの使者がいるとは思えないけれど。
     本当に、どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。でも仕方がなかったのだ。だって今回の遠征はそれなりにリスクがあって、だからもし言わなかったらそれを後悔するんじゃないかと、思って。ピノコニーの時はまだそういう関係ではなかったから何も言わなかったけれど、今はそうじゃないからそれなりの礼儀があってしかるべきだろう。彼という人が心を明け渡してくれたのだから、アベンチュリンも同じものを差し出すくらいの気概はある。
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