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    レイチュリ 🧂🦚
    フォロワーさんの誕生日に捧げた話

    かっこいい攻め

     どう、しようかな。目が覚めて、天井を眺めて、服の中をまさぐる彼に気付きながらもそんなことを思う。いや、だって彼の気持ちも分かるのだ。酷く久しぶりの逢瀬で、一緒に食事をして気分もいい。一緒にホテルに行くという予定は元々決まっていたから、そういうことをする準備もしていて。だからまぁ、うん。別にそれについては何の疑問もない。レイシオだって溜まっていただろうし。そのつもりだったのに発散させてあげられないのは、アベンチュリンとしても申し訳ないと思ってもいるし。
     でも、今の今までずっと激務だったのだ。久しぶりの逢瀬であるといことは、つまりそれができない状況が今日まで続いていたということである。疲れなんて当たり前のように溜まっているし、そんな中でうしろの準備までして体力を使って、でも腹は満たされて。しかも、それに加えて今はレイシオが近くにいる。彼の傍というのは一種の安寧をもたらしてくれるから、睡魔がこの身体を襲うことも正直仕方のないことだった。
     だから、うん。やっぱりこれを拒むことはしない。できない。だってレイシオがこうやって求めてくれるのは、別に嫌じゃないのだ。それにこれは彼が一人で、他の人で発散していなかったということの証明にもなるだろう。別に定期的にやっていないと溜まってしまうような、そんなティーンな性欲を持て余している訳でもないはずだ。
     眠っていてもいいなら、それで彼が満足するなら、それでも役に立てるなら嬉しいと思う。それは何の偽りもないアベンチュリンの本心だった。ベッドの上にいるのだから、それだけでも彼の優しさに感謝するべきだろう。
    「……?」
     そう思っていたのだ。本当に、何の言い訳でもなんでもなく。これがレイシオじゃなければ力の限り暴れて、逃げて、逃げた先でぶっ倒れるだろうなと思うくらいだった。だから逃げないということが、抵抗しないということが、言ってしまえばアベンチュリンの彼に対する愛の表れというか、その証明というか。
     上半身はもうほとんど服を着ていなくて、ベルトも外されていればズボンも寛げられている。ひっくり返されて後ろからだろうか。それとも足を持ち上げてそのままだろうか。準備をしている、というのはきっと彼も知っているだろうし、となれば慣らすのもそこそこにすぐ入れるだろう。
     なのに一向にそれが訪れない。肌寒いなぁなんて思っていればばさりと何かがかけられた。冷たい、けれどすぐに温かくなるこれは見なくてもわかる。布団だ。
    「……し、」
    「……起きたのか?」
     声が、出ない。しないのかって聞きたいのに、していいよって言いたいのに、出ない。彼の問いかけに応えられるような体力は残っておらず、となればレイシオだってそんなアベンチュリンに気づく訳もない。
     無言のままに足音が遠ざかっていって、今度は近付いてきて。なんだろう、何をされているんだろう。めくられた布団、肌に触れるのは濡れタオルだろうか。身体の隅々をなぞるそれが気持ちよくて、何よりも心地よくて。それを施してくれるのがレイシオという、彼で。
     耐えられる訳もないだろう、こんなの。タオル越しに彼の温かさを感じながら、遂にアベンチュリンはその意識を完全に手放した。

     ちゅん、ちゅん。これって朝チュンってやつだろうか。そう思うのに昨日あったことを覚えているのだからなんともいたたまれない。いや、最後まで意識があった訳ではないのだ。だから、もしかしたら。そう思う自分に、頭の中で別の自分が問いかける。そんなことをレイシオがすると思うのかい? 思わない。思わないから、だから隣で眠る彼にこんなにも申し訳なくなっているのだ。
     自分の身体を見下ろせばきっちりと部屋にあった寝間着が着せられていて、変な身体の痛みや軋みなんてものはひとつもありはしない。むしろよく眠れたせいで身体が軽いとさえ思う。耳にピアスも残っていない、指にリングも、腕にブレスレットや時計もない。全てがベッドサイドにまとめて置かれている。あぁもう、本当に。
    「……起きたのか」
    「…………おかげさまで」
    「それは何より」
     くぁ、と隣で欠神をこぼしながら起き上がった彼に恨みがましい視線を向けた。だって実際憎たらしくて仕方がないのだ。激務が続いて、だから今日のセッティングは全部レイシオがしてくれていた。家まで直接迎えに来てくれた彼、共に向かった先では人目を気にしなくていい個室でのディナー、そしてそこから移動しなくていい同じ建物内のホテルの一室。そこまで、彼は尽くしてくれたのに。
    「……好きに使ってくれてよかったんだけど」
    「聞かなかったことにしよう。朝食は? ルームサービスが使える、何か食べれるなら頼もうと思うが」
    「みず」
    「それはここにある」
     ぱき、と軽い音がして蓋の開いたボトルが手渡された。一切の無駄がない手つきだ。その頭に寝ぐせのひとつだってありはしない。
    「……昨日、そのつもりだっただろ」
    「確かにそうだが、別にそれを必須としたつもりはない」
    「僕は抱いて欲しかったんだよ」
    「それが君の本心だというのなら受け取ろう。ただし、朝食が終わってからだ」
     酷い。きっと全部分かっていて、だからレイシオはこんなことを言うのだ。アベンチュリンが口にしたそれが正しく本心であることも、そしてそこに一縷の申し訳なさが含まれていることも。でも、だって。レイシオだってずっとできていなくて溜まっていたのは事実のはずなのに。
    「……僕じゃもう勃たない?」
    「……なぜそうなる」
    「昨日、僕の身体触ってたくせに」
    「……起きていたなら言ってくれ。風呂くらいは入れてやれた」
    「そうじゃ、なくてさぁ……」
     言い淀んだアベンチュリンに、大きな手のひらが向けられた。俯いていたらしい。頬に添えられたそれがゆっくりと顔を持ち上げて、だから視線を彼に、レイシオに向けることになる。そしてそこでその赤色を見るのだ。なんとも満足げな、彼の瞳を。
    「……ほんっと、」
     君っていい男だよね。それも、こんな死刑囚にはもったいないくらいの。そう思ったけれど口にはしなかった。それを言えば彼の機嫌を損ねるのは分かっていたし、別に怒らせたいわけでもないし。そしてアベンチュリンとて、これに思わないところがないわけでもない。
     なのにその全てを汲み取って「光栄だな」なんて言われるから、アベンチュリンは照れ隠しと称して彼の口に自分のものを重ねるくらいしかできなくなるのだ。
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