「い、いや、それはちょっと、」
「何故だ? 僕に不満があるなら言うといい」
不満? そんなのある訳がない。だって目の前にいるのはかのベリタス・レイシオなのだ。石紋症の治療法を確立し、それ以外にもたくさんのことを成し遂げ、結果として多くの人々を救い導いた真理の医者。彼に不満を抱ける人なんているのだろうか。少なくともアベンチュリンには不可能だ。
いや、そうじゃない。そうなじゃないのだ。アベンチュリンは決して彼に不満があるから言い淀んでいる訳ではない。そうではなくて、彼の発言自体が問題なのだ。
「確かに僕はカンパニーの社員だけど、えっと……その、人権? は他の人とはちょっと違う扱いになってて、」
「知っている。だから事前にジェイドからも許可を貰った。これが契約書だ。ダイヤモンドも把握している」
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