小さな村だった。
戦後の復興調査の旅をしている旨を告げ、大国の紋章入り封筒を見せると旅人はすぐに村の中心部に通された。
「大魔王は倒れたが、長く続いた魔の脅威が完全に去ったわけではない。各地の被害とその復興状況に加えて、何か不穏な動きがないかも聞き取っている。必要なら中央からの後援をつなげる縁にもなろう」
村長をはじめ集まった村の重役や年寄り達を前に、旅の身なりを解くこともなく、銀髪の青年は語りかけた。若いが、よく通る落ち着いた声。
最初、村人達はこれといって被害など何も、と顔を見合わせた。なにせ辺鄙な場所の小さな村である。大戦での直接的な被害はなく、どちらかというと戦時下の流通や物価の乱れの方がまだ生活に影響があるくらいだ。そういう話題に傾きかけた。
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