Southern Cross「な。言ったとおりだったろ」
浅瀬で海水を跳ね上げる、裸足の指先。
膝までまくった白い足は、以前より目に見えて細い。
ああ、まあな。
ラーハルトはしぶしぶ認めて、夕暮れの浜辺に腰を下ろす。
乱気流のため気球でも到達困難な、断崖絶壁の孤島。
小型の帆船で丸一日格闘し、やっと唯一の入江に潜り込む。
命がけの航海をやり遂げて、島に隠された清い泉ではしゃぎ、遮るもののない絶景で朝日を浴び、割れずに無事だった蒸留酒で乾杯して。
若さを持て余し、意味のない無謀な冒険を繰り返したあの頃は、もう何年前になるのか。
「二回目はないな、などとほざいていたな、ラーハルト」
「貴様。少しは自覚しろ。病で先が短い身で、またこんな無茶を繰り返せると誰が思う」
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