ワンドロお題「手紙」「これを頼む」
そう言われた差し出された封筒をドラキーがニッカリ笑って器用に尻尾を巻き付ける。
傍目には心もとない固定だが、ドラキーがそうやって運ぶものを落とすことは滅多にないとヒュンケルは知っている。
送り先は、定期的にパプニカの王城で陸戦騎の役割を果たしている伴侶ことラーハルト。
ところでドラキーの速度は速くない。というか遅い。山奥から海岸近くまでのほほんとえっちらおっちら飛んでくるのだ。軽く一週間は過ぎる。
「…行き違いになるとは思わんのだろうか…」
手紙を読みながら、何故かその辺が気になるラーハルトである。
手紙の内容は色気のかけらもない、パプニカで調達して欲しいものリストだ。
主に調味料香辛料、油紙や紙や布、インクなど。
基本一緒に暮らしているのだから必要なものはラーハルトも知っている。というかラーハルトの方が知っているくらいなのだが。
おそらくは、この買い物リストが彼なりの精一杯の手紙なのだろう。実際自分が彼に手紙を出すとしたら何を書けばいいのかさっぱりわからない。お互い様だ。
「よろしく頼む。待っている」
末尾のその文章をそっとなぞって、自分の表情が緩むのを自覚するラーハルトだった。