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    MT24429411

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    MT24429411

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    ラーヒュンワンライ「熱帯夜」

    #ダイ大(腐)
    daiDai
    #ラーヒュン
    rahun
    #ワンライ
    oneLai

    熱帯夜はあ、と溢した吐息は寝苦しさを紛らわせるには程遠い。
    湿度の高い空気が部屋にこもり、お陰で寝汗が引かない。窓は開け放してあるが、酸素を取り込めるのが精々で、風のない今夜は内も外も気温はさほど変わらない。
    ラーハルトはうんざりしつつも、とりあえず水を飲んで一息つこうと寝台から身を起こし、ふと窓の外を見遣る。賑やかに響く歌声と楽器の音、笑いさざめく人々の歓声。方々に点った灯りが夜の町を明るく照らし出している。
    この街には昨日に着いた。老いも若きも何やら賑やかに犇めく人の群れに、何事かと宿屋の主人に聞いたところ、祭りがあるのだと。
    この街では年に一度、夜店を開き花火を上げ、夜もすがら歌って踊って過ごすらしい。それがちょうどこの日であると。
    異常事態かと構えていたヒュンケルはホッと肩の緊張を和らげ、人混みの苦手なラーハルトは片眉を僅かにしかめた。

    「眠れないのか」
    寝入っていたと思っていた相方の声が、掠れた響きで問うた。
    「ああ。こうもやかましい上に蒸し暑くてはな」
    驚くでもなく、ラーハルトは窓の外に顔を向けたまま応える。
    「お前は案外暑さに強いのだな」
    「オレの育った地底魔城は休火山だったからな…これくらいならまだ爽やかな程だ」
    意外そうな声を返され、ヒュンケルは友の背中を眺めて口許を緩めた。外の灯りを跳ね返して、ラーハルトの黄金色の髪が艶やかに煌めく。
    「眠れないなら、外に出てみるか?」
    「外に?何を言う。オレは人混みは好かん」
    予想通りの言葉に苦笑いしつつヒュンケルは寝台を降りた。窓から床に差す灯りが、ヒュンケルの足の白さを照らし出す。
    「……おい、何を」
    「どうせこうしていてもお前は気が休まらんだろう」
    「馬鹿なことを、お前は体を休めろ。明日ここを出られんぞ」
    「なに、延長するさ。幸い路銀には余裕がある」
    長旅のうちに見せるようになった友のふてぶてしさと、彼がそれだけ打ち解けて――心を許している事実に喜びを感じている自分に呆れつつ、ラーハルトは壁に掛けた服を下ろす。言い出したら梃子でもきかないのはこの男の性分だ。
    「まったく。ちょっとでもフラつくようならすぐに取って返すぞ」
    「それは困る。お前の手を焼かせないようにしなくてはな」
    窓の桟に足を掛け、眼下の通りを見下ろしながらヒュンケルは身を乗り出す。
    大胆な手口で外に消えたヒュンケルをやれやれと見送りつつ、羽根飾りのついた帽子を目深に被ってラーハルトも後に続いた。

    赤、青、黄、白。広場を照らし出す灯りの洪水。空間を賑やかに埋め尽くす、楽器の音色。銘々に着飾った人々が、地元民も旅の客も関わりなく踊り、歌う。
    ラーハルトはその人いきれにやや圧倒されながらも、手を振るヒュンケルの姿を追った。
    「遅いぞ、こっちだ」
    人々の密度がやや薄い広場の隅、夜店で買ったとおぼしき二人分のジョッキを手にヒュンケルが物申した。
    「オレは人の多いところは慣れておらんのだ、分かってるだろう」
    溜め息をつきつつ、満更でもなさげなラーハルトへジョッキが押し付けられる。
    「ほら、お前の分だ」
    「お前の奢りか?」
    と、帽子の鍔で塞がっていたラーハルトの視界が明るく広がり、ヒュンケルの吐息が近づいたかと見た刹那、唇に柔らかな感触が触れた。
    「これで返したことにしてやるさ」
    一瞬唖然と固まったラーハルトの顔を、愛しい友が楽しげに見つめる。
    ――まったく、生真面目かと思えば大胆で、オレはこいつにやられっぱなしだ。
    愛しさと僅かに悔しさの絡み付いた楽しさを胸に、ラーハルトは麦酒の満ちたジョッキを呷る。負けじとヒュンケルも続き、二人は剣槍の手合わせの様にニヤリと好戦的な笑みを交わした。
    「私と踊っていただけますかな?剣士殿」
    ラーハルトがおどけて、しかし真摯な光を瞳に湛え手を差し出す。
    「喜んで。陸戦騎様」
    ヒュンケルが、闘志を受けて立つように、そして陶然と見とれるように目を細め、外套の裾を摘まみ上げる。

    互いに手を取り合い、白い陶器のような指と藤紫のしなやかな指を絡めて、扇情的な旋律と歓声に沸き立つ中へ二人は縺れるように身を投じた。
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    related works

    岩藤美流

    DONEワンライお題「かわいい」です。
    何がかわいいって二人の関係ってことにしようと思ったんですけど、あずにゃんが「かわいい」って言いすぎていでぴが慣れて信じてくれない、みたいな設定でいこうかな、だけ考えて書きました。どっちかっていうと「火」とか「恋」のほうが主題に見える気もします。相思相愛です。


     あれは随分前のことだ。といっても、数か月程度のことだけれども。
    「イデアさんって、かわいいところがありますよね」
     何がきっかけだったか、部活の最中にひとしきり笑った後で、アズールはそうポツリと漏らしてしまった。気が緩んでいたのだ。口から零れ落ちた本音は、もう取り消せない。見れば、ポカンとした顔のイデアがこちらを見つめている。
     まずい。
     一瞬でアズールは、それまでの本気で笑っていた表情をいつもの営業スマイルへと切り替えた。
    「本当に、かわいい人だ」
     繰り返すことで、言葉に含まれた真実を、嘘で上塗りする。我ながら咄嗟の判断でよくできたと思う。思惑通り、イデアは顔をしかめて、「そーいう煽り、キツいっすわ」と溜息を吐いた。よかった。本音だとは思われなかったようだ。アズールはイデアに気付かれないように、そっと胸をなでおろした。



     陸の事はよく勉強したから知っている。人間は、一般に同性同士や親族間で番にはならない。今でこそ理解の必要性が問われ、寛容な社会の形成が始まっているとは言うけれど、それでも一般的なことではないのだ。多種多様な生態を持ち、性的タブーの形が全く異なる人魚の 3062

    岩藤美流

    DONEアズイデワンライ第21回お題「お菓子」お借りしました!
    なんかキャンディキスの話を書こうかなと思って、詳細を調べようとしたらマシュマロをちゅっちゅするとそれっぽい感じがするという記事が出てきたので、これアズイデちゃんでやってたらかわいいなあ、と思って書いてみました。
    なお全く描写してませんが、アズールもめえっちゃ練習はしてます。努力の君だもんね。
    イデアはオルトがスリープモードに入ったことを確認すると、いそいそと机の引き出しに隠していた紙袋を取り出した。中に入っているのは、マシュマロとチョコレート、それにキャンディだ。なんのやましいところもないお菓子……なのだが。イデアはそれをこそこそとベッドの上に並べて、溜息を吐き出した。
     そう、これらはイデアにとっては、恥ずかしい品物……つまり、彼はキスの練習をしようとしているのだった。


     経緯を簡単に説明すると、イデアは部活の後輩アズールとお付き合いをする関係になった。アズールが了承してくれたのは奇跡だと思っているし、未だに彼が自分のことを本当に恋愛対象として見ているかどうかは怪しいのだけれど、とにかく、関係は築けたのだ。これまで、部屋デートのようなことや、スキンシップは繰り返してきた。次は、キスだ。年上であるからして、こういうことはイデアがリードするべきだろう、と思っている。しかし、やり方を全然知らない。
     そこで頼ったのがネットの知恵だ。キスをするにはまず清潔感、そしてムード、ダメ押しにテクニック。イデアは熱心に記事を読み漁って、念入りに歯磨きをするようになり、練習に踏み出そうと 2823

    岩藤美流

    DONEアズイデワンライ「カップ」
    前回の「誕生日」の前、アズール視点の話。バグったアズールが双子に相談しているだけの話です。
    「おまえたち。イデアさんへの誕生日プレゼントに何を贈ればいいと思いますか」
     アズール・アーシェングロットがソファに腕組みをしたまま腰かけ、そう尋ねて来たのは11月18日の夜であった。テーブルの上には会計書や誓約書が束になっており、それを整理していたジェイドと、ソファに靴を履いたまま転がっていたフロイドがアズールを見る。
    「おまえたちの考えを聞かせてもらいましょう」
    「えー、なんでオレたちがアズールのプレゼントを考えなきゃいけねえの」
    「僕たちより、あなたのほうがイデアさんのことは詳しいでしょう?」
     リーチ兄弟の言葉に、アズールは「ふぅ」と溜息を吐いた。
    「いいですか? 僕とイデアさんの関係については、二人共理解していますよね」
    「恋人同士、ということですね」
    「そんな身内のプライベートなこと、オレ、首つっこみたくねぇんだけど」
     フロイドが嫌そうな表情を浮かべている。ジェイドも「できれば先に会計書を処理したいのですが」と顔に書いてあったけれど、アズールは無視して続けた。
    「そんな僕が、イデアさんへのプレゼントに失敗したとしましょう。どうなると思います? ああ、僕はショックのあまり会 2934

    岩藤美流

    DONEアズイデワンライ「誕生日」
    いつものハードプレイしている時空のあまあま誕生日。ノーマルなえっちをしたことがない二人にとっては特別なのは普通のことでしたとさ。
    『18日、金曜日ですよね。生憎モストロ・ラウンジの仕事も年の瀬を控えて忙しいので。当日はお伺いはできませんが、祝福しますよ、イデアさん』
     大切な後輩兼友人かつ恋人であるアズールが、いつも通りの営業スマイルでそう言ったのは先週のことだ。イデアは自室で一人、高級そうで繊細なティーカップを眺めている。青を基調とした優雅なそれは、確かにイグニハイドや、イデアの髪に近い色をしていたし、美しいとは思う。けれど、この汚部屋にリーチのかかったオタク部屋には不似合いだ。
     今日は日付変更からゲーム仲間にお祝いされテンションが上がったものの、この学園でバースデーボーイが晒し者になるのだということに気付いて憂鬱になりながら部屋を出た。顔も知らない寮生達にお祝いの言葉をかけられるのは、通りすがりに雪玉でもぶつけられているような気分で、イデアはとても気分が落ち着かなかった。
     購買に行く道、できるだけ人のいないところを……と、裏道を通っていると、ばったりとアズールに出会った。いやもうそれは、教科書に載せたいほど偶然に、ばったりと。
    『ああ、イデアさん。こんなところで会うなんて偶然ですね。そういえば今日、あなた 2794

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767