Bumblebees 生い茂る広葉樹が、昼下がりの太陽をちらつかせる。
光の差さない紫の森に、石臼に似た轟音が響いている。
息をひそめ、一歩、また一歩と距離を詰めるラーハルト。
後方で岩の陰に隠れ、固唾をのんで見守るヒュンケル。
ぶぅん。
二人の視線の先には、小鹿サイズの巨大蜂、キラービーのてらてらした尻がある。
仕掛けた花束に夢中になっていて、背後の男たちには気づいていない。
短剣ほどもある針の根元にそろそろと手を伸ばし――。
「……やったぞ!」
雷のような唸りとともに、キラービーが舞い上がった。
だいぶ怒っている。
一撃必殺の針攻撃を辛うじて避けたラーハルトが、ヒュンケルの隣に転がり込んだ。
標的を見失ったキラービーは、木々を縫ってジグザグと飛び始める。パニック状態のまま、一目散に逃げ始めた。
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