愛しき温もり(ラーヒュン) ビュービューと吹雪の音が耳に届く。音の激しさから察するに、当分は止みそうに無いだろう。不幸中の幸いは、この洞窟が緩くカーブを描いた構造になっており、奥まった場所にいれば直接吹雪にさらされることがないことか。
そんなことをぼんやりと考えながら、ヒュンケルは自分を抱く腕の主を見た。鋭い視線も、瞼を閉ざしていれば見えず、その顔立ちの端正さを教えるだけだ。
魔族と人間の混血児。その容姿は魔族の父に似ているのだと語っていた。確かに、人間の要素は薄い。高位魔族は人間に近しい外見をしていることを考えても、ラーハルトの父はそれなりの実力者だったのではないかとヒュンケルは思う。思うが、それを確かめたことはない。
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