第5話、不器用な「さてと、、そろそろか」
読み通り、廊下から慌ただしく近寄ってくる足音が一人分。それと落ち着いた足音が1人分。
「んばッ」
勢いよく開け放たれた襖。気持ちがいい音が鼓膜を破りかねない程よく響いた。
「また燭台切に叱られるぞ」
「んばぁぁぁッ、、良゛か゛ったぁ目覚めたぁぁぁ〜」
俺の腹の上で泣きじゃくる主。
「済まない、随分と心配させたようだ。」
「おはようさん。大事なさそうで何より。
旦那、あんた3日目を覚まさなかったんだぜ?」
嗚咽で言葉を紡げそうにない主の代わりに薬研が事の説明をしてくれた。
俺は重症を負って和泉守兼定に手入れ部屋に担ぎ込まれた。そこでいつも通り主の手によって手入れをされ、いつも通り完全に回復。
しかし、何故か目を覚まさなかった。
こんのすけによると原因は不明と。主は発狂。その場で政府に乗り込まんとする勢いだったらしい。
「そこをどうにか宥めて今に至るって事だ。」
「うぅ、、ほんとに、、ほんとに目覚めて良かったぁぁぁッ、、」
俺を思い涙を流し、濡れる目元は隈が出来てしまっている。
「寝ていないのか?」
「寝れる訳ないやん、、なんなら飯も食べれんでコケたが?」
涙を拭い、隈を撫でれば指から伝わる主の体温。
「そうか、、」
「え、めっちゃ嬉しそうに笑うやん、え、美人。え???」
主は変わった。
「え、、なに、久しぶりに拝んだまんばが”美”過ぎる。」
「…あんたが主でよかった」
「へァ??」
月日を共に過ごす度に俺たちを、刀剣男士を一人一人、人として、自分が愛する者として。
愛し、慈しむようになっていった。
「なんだ、随分と穏やかな面だな。いい夢でも見てたのか?」
「昔の夢を少しな。」
「悪夢じゃねぇか。」
「その説は本当に、、本当に申し訳ありませんでした…」