さよならタブレット この話に読者がいるならば、ここからの顛末はわかって頂けることだろう。
バッドエンドだ。注意書きが必要だったかもしれない。
度重なるいともたやすく行われるえげつないおたく行為に、弟の怒りは頂点に達した。
「このクソオタクども!」
修羅場も終わり、完成したところに飛び込んできた彼は、バグショット女史からゲラートが借りてきたタブレットを「こんなもの……こんなものがあるから、アリアナを守れない!」と膝でカチ割った。データが飛んだ。一八九九にはクラウドはない。ただ、雲が流れるばかりである。
修羅場明けで呆然としたアルバスとゲラートだったが、ゲラートが動いた。
彼の怒りも沸点に達していた。
「このっおれがっ、さんざんっ、恥ずかしい思いまでして、参考資料になってやって、やっとやっと完成したっていうのに、わかってんのかこのクソ山羊野郎!絶対許すか!お前なんて…くらえ!」
「ああ!ゲ、ゲラート、それはいけない!やめるんだ!」
「知るか!くらえ!†††磔の呪文†††」
「ああああああ~貴方は◎◎◎◎◎◎人目のお客様~古から伝わる黒歴史呪文!うかつに手が出せない!」
「うっ……くそっ苦しくて……意味がわからないけれどこそばゆい!かゆさで死にそうだ!」
「うう、僕にも、ノートに描かれた伝説の光の勇者でありながら呪われしアバダシリーズ完結していない3巻の記憶が流れ込んでくる……、ゲラート、止めるんだ…止めてくれ…」
だが、さらなる暴風が、黒い嵐が私たちを襲ったのだった。それが止んだ時、私たちは最も愛おしむべき者を失っていた。
アリアナは言った。最期に。
「……みんなでこすぷれをして出かけたいな、あれは……手製で縫った衣装?それとも既成の…?」「「「アリアナーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」
ゲラートは私の人生から消えた。
そして、私は葬式で弟に殴られて鼻を折った。
もう、留まる必要は無くなってしまった。弟のホグワーツ卒業までの手配をして、旅に出た。けれど、どこにもゲラートも、彼に似たよすがをもつものも、世界のどこにも見つけることはなかった。できなかった。おそらく、ずっとそうだろう。
これでいい。
いつか、また、ゲラートと同じジャンルになったら。
サークルが隣になってしまったら。
有望なニュート・スキャマンダーにサークル主代行を頼もう。
あの子は新しきケモナー界の新星だ。上梓したばかりの本は面白かった。
いつか教科書に採用したいほどに。
アメリカのまほケットで、ゲラートが久しぶりに参加したと伝わってきた。
赤紙を貼られたと。相変わらずだ。
その件かテセウス・スキャマンダー率いる闇祓いたちが面会を求めてきている。
古参おたくはめんどくさいのだ。
彼らの望む協力は、私からは期待しないでもらいたい。ただ、大いなる善のために、おたくには解釈戦争はつきものなのだから。
END.
ここまで読んでくださってありがとうございました♥
FB2の予告が出た時あたりの時期に書いた話でした。
普通のあの夏の話を書いたファイルが消えて
泣きたい気持ちで書きなぐった思い出があります。