紙銭で山査子飴を買う 柳溟煙は灰色の衣を手に取った。普段纏っている紫の絹を払い落し、百戦峰の弟子服を思わせるそれを身に着けた。
髪を高く結い上げ、顔を覆う面布を外す。
弟子時代の兄の姿を知ってる者なら、それがどれだけ似ているか驚くだろう。
夫は遠征でしばらく不在はずだった。
愛剣水色を手に、いつものように地下牢へ向かう。
地面に転がる人影は、成人男性としてはあまりにこじんまりとしたものだった。
「柳師弟…もう銭がなくなったのか?
生前から財布も持ち歩かぬ愚か者だったが…死んでもこの師兄にたかるとは……」
切られたばかりの両足からは未だ出血が続いていた。
残った左腕でなんとか身を起そうとする沈清秋のそばに、柳溟煙は火鉢を降ろす。
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