夜語り 深夜。窓の曇りガラス越しに差し込む月明かりが、書類が積まれた机や、雑多な物が押し込まれた段ボール箱を淡く照らしている。机の横に置かれた衝立の裏のソファでは、横になった黒髪の青年、藤丸が静かに寝息を立てていた。阿国やヘクトール、小次郎、そして高杉が、同じく事務所のソファや壁際でそれぞれに身体を休めている。
カルデア重工の事務所である。吉田松陰と共にクロフネを倒した後、奇神に魔力を集めるため利用したサイタマ各地の魔力炉が軽い暴走を起こした影響で通信が不安定となり、レイシフトから安全に帰還できる状態が整うまでの間サイタマで待機するよう、藤丸たちにダ・ヴィンチらからの指示があったのだった。昨夜の事件もなんのその、存外逞しくいつもと変わらぬ日常を見せるサイタマの街で、藤丸たちは日中を思い思いに過ごした。明日の朝には用意が整う見込みとの知らせをカルデアから受け、最後の夜は拠点である事務所で休息を取ることにしたのだった。吉法師は自分の会社の方でやる事があるとかで、別行動をしている。
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