執務室にて 机の端に置かれている水の入った紙コップと錠剤が入っているらしい薬袋を横目に、斎藤は書類仕事をしている最中の高杉へと封筒を差し出した。
「ほい、頼まれてたもん持ってきたぜ」
「ああ、助かる」
高杉は書類から顔を上げないまま封筒を受け取った。
「なあ」
「何だ」
「それ、飲む時間なんじゃないの?秘書ちゃんが用意してくれたんだろその水」
顎をしゃくり薬を示す斎藤。それを一瞥し、高杉は再び手元へと目線を戻した。
「後で飲む」
「後って言って飲む気ないだろ」
斎藤が薬袋を手に取る。
「おい、勝手に触るんじゃない」
高杉の言葉を無視して、ガサガサと紙袋の中のPTPシートを手のひらに出す。輪ゴムで束ねられたまま一つも錠剤が開けられた形跡の無いそれは、袋に書かれた処方の内容と残量からして一度も飲まれていないらしい。調剤日は一週間前の日付だった。
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