陽だまりに染まる僕の世界(仮) 今日も変わり映えのしない一日だった。
講義の終わりを告げるチャイムを聞きながら、カドックは小さく溜息をつく。
ここはイギリスの首都ロンドン。そのロンドンにある始まりにして最高の学府、西暦以後の魔術師たちにとって中心ともいえる巨大学院、それが現在カドックが在籍している時計塔である。魔術師たちの学び舎であると同時に魔術協会総本部としても機能しており、カドックもまた魔術刻印を継ぐ者として故郷のポーランドを離れここで学びを得ている。
一般家庭がイメージするような所謂学生生活とは違い、時計塔では学生も教授も魔術師としての思惑がぶつかり合う中で生きている。歴史の長さが物を言う魔術師の世界において、カドックのような本家ではなく歴史の浅い分家の、しかも対獣魔術なんて今時流行らない魔術を継いだ人間のことなど誰一人として興味を持つ者などいない。ここに来れば誰かしら対獣魔術に理解がある者もいるのではないかと多少の期待を持って訪れたのだが、そんな期待は早々に打ち砕かれた。
12810