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    16natuki_mirm

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    16natuki_mirm

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    「僕と君の間には」の続きの、自覚しはじめイルアズと、あほな僕同盟があほしてる話。新刊「僕らのアオハル狂騒曲」のサイドストーリーにもなっています。12月17日開催のイルアズオンリーの無配だったやつです。
    (ちなみに新刊はとらさんで予約受付中です~→https://ecs.toranoana.jp/joshi/ec/item/040031118617

    【イルアズ】境界線、探して「……と、いうわけで、エッチな本を買いに行きます」
     何が「と言うわけ」なの、という入間の真っ当な疑問はあっさりと無視された。
    「大人の階段を上がるんだよ、イルマくん」
     左右からリードとソイに腕を掴まれた入間は、右と左へと交互に何度も顔を向けるが、両サイドから返ってくるのはニヤニヤとした笑い顔だけだった。
     どうやら、二人の間で何やらの話が盛り上がっていたようで、その何やらの話を一切聞いていない入間も巻き込んで、不道徳な本を買いに行ってみようと、そう言う話になったらしい。
    「えっ、聞いてないよそんなの!」
    「いつか僕らは大人になる――それが、今なんだよイルマくん」
    「そうだよ」
    「い、いやあの、そういうことなら僕は今日は……」
     二人の決意は固いようで、入間が及び腰になったところで、二人の腕ががっしと入間の腕に組み付いてきただけだった。
    「イルマくんは興味ないの?!」
     信じられないものを見るような眼差しで、リードがずずいっと顔を寄せて迫ってくる。その気迫に押されながらも、入間は何とか抵抗を試みる。
    「い、いや、そ、そこまでは……おじいちゃんやオペラさんに、まだ早いって怒られちゃうし……!」
    「ふ、ふ、ふ、ぶりっ子してもダメだよイルマくん、今日僕らは大人の階段を上るのさ……!」
     だからどうしてそんな話になったのさ、と聞いてみても、納得のいく答えは返ってこなかった。分かったのはただ、二人の決意がやたら固い、ということだけだ。
    「だいたい、え、エッチな本なんて、僕らじゃ買えないんじゃないの?」
     入間の知る人間界の法律ではそういうことになっている。魔界では違うのかもしれない、という予感もちらと頭を過ったが、しかし、サリバンやオペラが「まだ早い」という言い方をするということは、魔界でもやはり年齢による制限があるらしいことは想像がついた。
    「え? なんで?」
     しかし、リードはきょとんとした顔で首を傾げて見せた。
    「だって、そういうのって、十八歳……大人にならないと買えない……とか、ない?」
     やはり魔界ではルールも違うのか、と思いながら、それでも一応確認してみようとすると、リードとソイはばっと入間から距離を取り、凄いものでも見るかのような目でこちらを見る。
    「えっ?! い、イルマくん、まさか、そんな大人の本を買うつもり……?!」
    「エッチ罪で捕まるよ?!」
     さすがハーレム王、とかなんとかひそひそ囁き交わすソイとリードに、入間はカッと赤面してあわあわと顔の前で手を振る。
    「えっ?! だ、だって、エッチな本って言うから……!」
    「イルマくん、それは僕らにはまだ早いよ。ほら、僕らこの道は初心者な訳じゃん、やっぱりここは初心者らしく入門編から……」
    「入門編って何?!」
     いまいち、二人の中でのアリとナシの境界線が解らずに混乱気味の声を上げる。と、リードは悪巧みをする時の顔で視線を泳がせながら唇を尖らせ、手を落ち着き無く頭の後ろにやったり胸の前で指先を突き合わせたりしながら、ちら、と横目にこちらを見て、口を開く。
    「そこはそれ、ほら、み、水着グラビア写真集……とか?!」
    「いや待って、それはギリギリ、エッチとは言えないんじゃない? かわいい系のやつも多いし」
     しかしそこへすかさずソイが嘴を挟んだ。だが、リードは負けじとス魔ホを取り出して、そこに表示された写真をばんっとソイの方へと突きつける。
    「でも! 今日発売のサジャちゃんのギリギリビキニ写真集は……エッチでしょ!」
    「そ、それは……エッチだ!」
     リードがソイへと突きつけた画面には、随分と布面積の小さい水着に身を包んだ女性が、セクシーなポーズを取っている、本の表紙を撮った写真が映っている。表紙でこの布面積と言うことは――と、妄想が掻き立てられる構図で、確かに、入間たちくらいの年齢の男子には少々刺激が強い書物のようだ。
    「えっ……そ、それは、僕らでも買えるの……?!」
    「買えてしまうんだな、これが……!」
     とかなんとか、三人がやいのやいのやっていたら。
    「ああああああああああああああああっつぅう!!」
    「ああああああああああーーーーーーーーーー!」
     リードとソイが、ぼっ、と炎上した。



    「貴様ら、性懲りも無くイルマ様にそのような下世話な話題を……!」
     どこから聞いていたのか、いつの間にかリードたちの背後に立っていたアズが、手のひらの上に轟々と燃える火球を振りかざしながら、地獄の底から響くような声で二人の耳元に囁くと、ぷすぷすと焦げたリードとソイは恨めしげな眼差しをアズへと向け、唇を尖らせながらも一応、棒読みで「スミマセーン」と唱和した。
     ええい散れ散れ、というような仕草をリードたちに向けながら威嚇の表情をしているアズを宥めるように、まあまあ、と入間はその真っ白な制服の袖を引いた。
     イルマ様、と何か不満げな様子で振り向くアズの、その表情がなんだか胸に引っかかって、入間はアズの制服の袖をぐいっと引いて、少し俯き気味のまま口を開く。
    「……ねえアズくん、僕が、その、エッチな本の話するの、嫌? なんで?」
     それはもしかして、俗に言う「嫉妬」とか、そのようなものではないのか、だなんて、自分に都合の良い妄想だ、と頭の片隅では解っていながら、期待するのを止められなくて、つい口が滑った。
     するとアズは、ほんの一瞬、怒りにも似た烈火のような色を瞳に宿した。けれど、その炎はほんの瞬き一つのうちに消えてしまって、後は戸惑いと躊躇い、羞恥のような色でその眼差しが揺らぐばかりだった。
    「……イルマ様にはそのような低俗なもの、不要でしょう」
     一呼吸の沈黙のあと、吐き出すようにアズがそう言う。それでは何も答えになっていないじゃないか、と、入間が口を開こうとするよりも早く。
    「あー、全男子の夢を低俗とかー」
     リードが茶々を入れて、話の腰はぼきっと折れた。
     アズはばっと制服を翻してリードの方に鬼の形相を向ける。
    「勝手に一緒にするな! 私はそのようなものに夢など持たんわ!」
    「ああ、確かにお母さんがアムリリス様じゃあ、そこいらのアクドルのグラビア位じゃ夢にならないよね、はー羨ましい悩み」
    「そういうことではないッ!」
     アズは、慎みを持てとかはしたないとかぶちぶちと口の中で文句を言っている。しかし、コゲから復活したリードとソイはぶーぶーと唇を尖らせて不満そうな表情をアズに向けた。
    「いいじゃん、この子たちは見せたい、僕らは見たいでウィンウィンだよ」
     魔界では「見せたい」という気持ちも正当な「欲」として扱われて、アズの言うような「慎み」とかを気にする方が少数派なのかもしれない、とは思いつつ、悪魔たちの標準的な考え方がまたひとつ分からなくなって、入間は口を噤んでいた。
     するとアズは、恐る恐るという様子で振り向いた。その顔には、入間の顔色をうかがうような、自信なさげな様子の表情が浮かんでいる。
    「……イルマ様も、女性のこのような姿の写真、見たいと思いますか?」
    「えっ?! い、いやぁ……?」
     アズからのストレートな問いかけに、入間は口籠もる。全くこれっぽっちも興味が無いといったら嘘にはなるが、かといって、リードやソイの様に積極的に見たいとも思わない、というのが正直なところなのだが、しかし、無言のままのアズの、その視線から感じる圧力の様なものの前に、嘘も吐けず、かと言ってちょびっとくらいは興味がある、とも言い出しづらく、入間は、あるようなないような、と、口の中でもごもごと曖昧に言葉を転がしてみる。
    「え、アズアズってエロ本は浮気扱いする派?」
     そんな二人の様子を見ていたソイが、揶揄うような調子で言い出すものだから、入間はえっ、と顔を上げる。その言い方ではまるで自分達が付き合ってるように聞こえるではないか、と、慌てて、ソイの言葉を上手く誤魔化す方法を考える。何を誤魔化す必要があるのかはよく解らなかったけれど、先日もリードに「二人って付き合ってるんじゃなかったの」などと言われたばかりである。付き合ってはいないのだけれど、入間とアズが付き合っている、などという噂がアズの耳に入って、それで、二人の関係が気まずくなるのは嫌だった。だから、なんとか話の方向を明後日の方向に逸らせやしないかと、入間は頭を精一杯に使う。が。
    「当然だろうが!」
     ノータイムでアズが堂々宣言するものだから、回り始めようとした入間の頭はつるんと空回りしてしまった。
    「えっ、そ、そうなの?!」
     思わず、思考を介さない、発作的な疑問の声が上がってしまう。
    「なっ、い、イルマ様……!」
     入間の言葉に、アズはなんだか焦ったような、その言葉が予想外だったような様子で、情けない声で入間の名前を呼ぶとその柳眉をしょぼんと八の字に垂らした。
    「流石にそれは浮気認定のハードル低過ぎじゃない?」
    「彼女いるのに、誰か一人のアクドルの写真集全部買っててライブも悪取会も全部行ってー、とかしてたらアレだけど、その辺で売ってる本たまに買う位なら、ねぇ?」
     アズがしょんぼりとしているのを良いことに、今だとばかりソイとリードが口々に言い立てる。
     アズが落ち込んだ様子なのは気に掛かるけれど、それでもどちらかと言えば、リードたちの言葉の方に納得感があるような気がして、入間はううんと頷いた。
    「う、うん……それくらいは……いやっ買わないよ?! 僕は買わないけど!」
     途中まで言いかけたところで、アズが大層悲しそうな目で入間を見ているのに気付いて慌てて言い繕う。
    「い、イルマ様が……そう仰るのであれば……そのような書物を買うことは浮気とまでは……呼ばなくとも良いのかもしれませんが……」
    「い、一般論としてね! アズくんが嫌なら、それはそれでいいんじゃないかな?! 僕は買わないし!」
     自分でも何を言っているのかよく分からなかったが、とにかく、アズに悲しそうな顔をさせるのは嫌だとか、サリバンやオペラの言いつけを破って、アズの不評を買ってまでそのような本を買うようなヒトだと思われるのは嫌だとか、そのような気持ちに任せて言い募ると、アズはやっと表情を緩めてくれた。
    「イルマ様……!」
     なぜだか感激したように両の手を胸の前で祈るように組み、嬉しそうな笑顔を浮かべるアズに、入間はひとまず安堵した。



     結局、イルマはアズが大事に保護して帰って行った。
     三人でエッチな本を買いに行こうとしていたのにすっかり出鼻をくじかれてしまったリードとソイは、今日はもう帰ろ、とイルマたちが去って行った方向へと遠い目を向ける。
    「……あれで付き合ってないって言うんだもんなぁ……」
     はあ、とリードが呟くと、ソイが驚いたようにリードの方を振り向く。
    「……えっ、あの二人付き合ってないの?」
    「イルマくんが言ってたから間違いないよ」
     ソイの言葉に、リードが呆れた様に答える。
     二人の視線の先では、遠い所で、アズがイルマの肩を抱く様にして歩いていた。
    「……あれで?」
    「あれで」
     ――たぶんアズは、良からぬ輩から入間を守ろうとしているだけ、なのだろうけれど――
    「……時間の問題に見えるけど」
    「まーね」
     投げやりなソイの声に、同じくらい投げやりなリードの声が答えた。
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    16natuki_mirm

    DONE1/28の悪学で無配にしたセパソイです。イルアズしてるイルマくんに片思い?しているソイソイと、そんなソイソイに片思いしているセパくんによる、いつかセパソイになるセパソイ。
    【セパソイ】あなたと、あなたのすきなひとのために「先輩」
    「ぅわっ!」
     突然後ろから声を掛けられて、ソイは思わず羽を羽ばたかせた。
     ちょっぴり地面から離れた両足が地面に戻って来てから振り向くと、そこには後輩であるセパータの姿があった。いや、振り向く前からその影の大きさと声でなんとなく正体は察していたのだけれど。
    「……驚かせましたか」
    「……うん、結構」
    「すみません。先輩、自分が消えるのは上手いのに、僕の気配には気づかないんですね」
     セパータが意外そうな顔を浮かべる。それに少しばかり矜持を傷付けられたソイは、ふいっと顔を背けると、手にしていた品物へと視線を戻した。
    「……自分の気配消せるのと、他人の気配に気づくが上手いのは別でしょ。……いやまあ、確かにね、気配消してる相手を見付けるのも上手くないと、家族誰も見つからなくなるけどうち。だから普通の悪魔よりは上手いつもりだけど、今はちょっと、こっちに集中しすぎてただけ」
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