戦いを終わらせる銀河(ズウィユディ)建物に隠れていた狙撃手を切りつけると完全に気配が無くなった。我が最後の一人を斬ったようだ。
他の戦士と分担し建物内部及び周辺を調べたが無人だった。
これでこの星は制圧した。ここは老若男女問わず全員が戦闘に加わっていた為完全に全滅させてしまったが…。
大半の戦士たちに船に戻るよう指示し、残りの戦士と手分けして、念の為最初に降り立った場所から歩き、生き残りがいないか確認していく。
ズウィージョウは若くしてベルギャーの突撃部隊最高司令官となった。
しかし、どれ程鍛錬をし強くなり、最高司令官となって星を制圧しても戦争は終わらなかった。強いだけではこの無益な戦いを終わらせる事は出来ない。終わりの見えない地獄の日々に、ズウィージョウの心は蝕まれ始めた。
─何か無いのか…この戦争を終わらせる希望となるものは──
「!」
7割ほど歩いた所で建物の影に気配を感じた。
死にかけでは無い。その気配の元へ急いだ。
気配の正体は少年だった。水色の、少し長めの髪と小さな二本角。それなりに怪我をしているようだが死に至るような深手では無い。おそらく飛ばされた衝撃で気絶しているだけだろう。
自分と同じような年だろうが、万が一という事もある。ここで始末しておかねばなるまい。
「おい貴様」
「……」
抜刀し声をかけるとすぐに顔を上げた。
その銀河を湛えたような瞳に釘付けになる。
「……!」
どこまでも澄んだ目だった。
星を滅ぼされ、自身も傷だらけだと言うのに、その目に負の感情は微塵も無い。
──そんな事がありえるのか。
…もしこの少年が戦士になったらどうなる? 地獄を見続けても尚その目は、心は、穢れをしらないのか。 ならば本当にこの戦いを終わらせる事が出来るのではないか──
ズウィージョウは剣を戻し敵意を消した。
「……貴様、名は何と言う?」
「…ユウディアス」
「そうか、ユウディアス。
お前の星を滅ぼしておいてこんな事を言うのは非道だと、重々承知した上で言う。」
「…?」
「我と、この戦争を終わらせてほしい。」
「……?
何を…?」
少年は困惑している。とどめを刺されると思っていた相手に、共に戦争を終わらせてほしいなどと、訳がわからなくて当然だろう。
「我はこの長きに渡る戦乱に終止符を打つ為戦ってきた。しかしそれだけではこの戦いは終わらない。力の強さだけでは駄目なのだ。
戦いを終わらせる事の出来るものを探していた。お前がきっとそうなのだ。お前のその目に光が見えた。」
少年に手を伸ばす。
「共に行こう、ユウディアス!」
「……」
少年はズウィージョウと、伸ばされた手を交互に見ると、強い瞳でその手を取った。
そのまま手を引っ張り少年を立たせると、少年がふらつくので慌てて支える。
「ズウィージョウ・ズィル・ベルギャーだ。よろしく頼む。」
目の前の銀河に映った自分は少し笑っていた。