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    Mutsu

    @mist_bluesky 復活の6927が好き

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    Mutsu

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    現代骸さんとムクロウが仲良くなる話。未来編の後、継承式編の前らへんの設定で時間軸をちょっと捏造してあります。最後にちょっと黒曜メンバー2人が出てます。
    お題『照れ隠し』
    # 六道骸版深夜の真剣物書き一本勝負

    2016.3.17

    #二次創作
    secondaryCreation
    #家庭教師ヒットマンREBORN!
    tutorHitmanReborn!
    #六道骸

    ペットは飼い主に似る「……」

    六道骸は困惑していた。

    原因は目の前にいる生き物だ。

    それはちょこん、とテーブルの上に乗り、首を傾げ油断なくこちらを見つめている。

    雪のように白い羽毛に、鋭い目つきの猛禽類。

    フクロウだ。

    クロームの目を通して観察した所によると、こう見えて匣兵器というれっきとした兵器らしい。

    戦闘になった際に使うか、くらいに軽く考えていた骸だったが、クロームから「骸様、戦闘で使う気があるならまずムクロウと仲良くなるのが先…」としつこく言われてしまい、仕方なくクロームの体に憑依して出てきてみると目の前のテーブルにそれは居た。

    しかしクロームと交代して時間が経っても1人と1匹の距離は縮まらず、この状況はずっと変わらなかった。

    人間なら会話で何とかなる事もあるが、言葉も通じない生き物相手にはどうすればいいか、いくら六道輪廻を巡ってきた骸でもまるっきり見当がつかなかった。

    一体僕にどうしろと。

    それに誰だ。ムクロウとかいうふざけた名前を付けたのは。

    とりあえず撫でてみるか、と手を伸ばしてみると、途端にムクロウはブワッと羽を膨らませた。

    まるで真っ白な雪だるまだ。

    更には姿勢を低くして両方の羽を体の後ろで扇のように広げると、カチカチカチ、と嘴を鳴らしこちらを睨み始めた。

    もしかしなくても、これはフクロウの威嚇行動なのだろう。

    まぁ己の主人が、いきなり全く知らない別人に変わったらどんな生き物だって警戒はするだろう。

    「……」

    骸は諦めて目を閉じると、クロームと交代した。





    "骸様…"

    "何ですかクローム"

    "ムクロウ…かわいそうでした"

    "匣兵器をそのふざけた名前で呼ぶのはやめなさい。今日はお前の望み通り仲良く遊んであげましたよ"

    "……"

    無言だが、しかし困った雰囲気がクロームからありありと伝わり骸は舌打ちをした。

    まさか骸が匣兵器に威嚇されるという事態が起きて1日経った今日。

    骸は再びクロームに説得され、クロームと交代するとまたもムクロウはテーブルの上に居た。

    ただし今度はクロームと交代した途端に、まん丸に膨れ上がって。

    あっと言う間にテーブルの上にムクロウだるまが出来上がった。

    ここまで来ると骸はこの匣兵器に嫌われてると考えて間違いないだろう。

    「(…畜生道でも使いますか)」

    骸は無言のまま目の数字を三に変え、ムクロウだるまを見つめる。

    以前クロームが練習で畜生道を使い誤って暴走させたところ、近所の野良猫などの動物を呼んだだけでなく犬まで暴れる事態にまでなっていた。

    畜生道を、蛇だの人間を死に至らしめる危険生物を召喚し、それも無理矢理使役するためにしか使った事のない骸にとって、畜生道は普通の動物も呼べるのだというクロームの話はどこか新鮮だったのを覚えている。

    「(匣兵器とはいえ、動物。畜生道を使えばさすがの匣兵器でも抗えないでしょうね)」

    するとムクロウはピタリと膨らむのを止めジッと骸を見つめた。

    「(…効いたのか?)」

    そう思い骸はそっと手を差し出し、ムクロウの頭を撫でようとした。

    すると雪のような羽毛に骸の手が触れた途端、ムクロウは首を捻って口を開き、骸の指目がけて噛みつこうとした。

    骸はすんでのところで引っ込めたので指を噛まれなかったが、骸の指を噛み損ねたムクロウの嘴が空中でカチン!と鋭い音を立てた。

    「……」

    骸は再び、ムクロウを見つめる。

    今や目の前のムクロウは昨日と同じように雪だるまになって、翼を扇のように広げカチカチと威嚇を始めていた。

    どうやら骸のスキルは匣兵器には通じないようだった。

    こうして骸は黙って空中から大量の蛇をテーブルに召喚しておくと、目を瞑りクロームと交代したのだった。

    骸とムクロウの攻防戦はこうして何日もの間続いた。

    その度に骸はムクロウに威嚇され、骸もムクロウに蛇だの何だのとフクロウの天敵を沢山召喚した。

    もうここまで来ると、この匣兵器は自分で操作するしかないのではないか。

    最初にクロームに呼ばれてから一週間程経って、骸はそう考えテーブルに肘をついた。

    相変わらず目の前のムクロウだるまは、威嚇の姿勢を崩さない。

    目をランランと見開き、嘴でカチカチと音を立てムクロウだるまは今日も骸を威嚇する。

    「(…未来の記憶によるとこの匣兵器も契約すれば乗っ取れるようですしね。)」

    そう考えると、骸はため息をついて席を立ち廊下に出た。

    瓦礫の沢山転がる黒曜ヘルシーランドの廊下を、骸は静かに歩く。

    このままではどう考えても自分が戦闘中にムクロウを使うリスクは大き過ぎる。

    となると自分でなくクロームが匣兵器を使うのが一番理想的なのだろう。

    しかしそれではクロームでは歯が立たない敵と遭遇して自分が表に出る事態になった時、骸は匣兵器の力無しで勝たなくてはならない。

    果たして、匣兵器の力無しで勝てる敵とばかりそう都合良く遭遇するものだろうか。

    どうしたものか、と背を廊下の壁に預け戦闘の事を考えていると、ふと自分が来た道から小さな気配を感じた。

    気配のする方向へ顔を向けると、先程骸が出てきた部屋のドアから白いモノがチラチラと見えていた。

    「………」

    骸は一度その物体から目を逸らし、しばらく出てきた部屋とは反対側の廊下を眺め、再び視線を戻すと、今度は廊下に転がる瓦礫の横から白い物体がチラリと見えていた。

    「……」

    何だ、あれは。あの匣兵器は何がしたいんだ。

    骸は眉間にシワを寄せるともう一度視線をそらし、またしばらくして元に戻した。

    今度は骸とそう離れてない場所でムクロウは瓦礫の陰に隠れていた。

    何だ、この状況。

    まるで端から見ているとムクロウは、子供がやる、だるまさんが転んだをしているようにも見えた。

    「………グーフォ・ディ・ネッビア」

    骸は試しに、未来の記憶の中で聞いたフクロウの名前を呼んでみた。

    が、目の前の白い物体はピクリとも動かない。

    「……ムクロウ」

    少々気に触る呼び名ではあるが、骸は再び声にして瓦礫の向こうにいるムクロウに呼びかける。

    すると今度は瓦礫の向こう側から音もなくムクロウがフワリと空中に姿を現し、まっすぐ、そして迷いなく骸に向かって飛んで来た。

    思わず骸が左腕を伸ばすと、ムクロウは躊躇いもなくその腕をがっしりと掴み、骸の腕に着地した。

    「………」

    骸がジッとムクロウを見ていると、ムクロウは片足立ちをし、持ち上げた足と同じ側の羽も斜め下に向かって広げ、足と羽を一緒に伸ばし始めた。

    まるでその姿はリラックスしているように見えた。

    「……ふ、」

    骸は思わず声を漏らすと、ムクロウの頬に手を伸ばした。

    すると今度は噛みつかれる事もなく、ムクロウは頬の羽を膨らませ、首を骸が撫でている側と反対側に曲げた。

    まるで、その姿は骸に向かってそこを掻いてくれ、と言っているよう。

    「……お前も素直じゃありませんね。撫でて欲しかったのなら、もっと早く態度にするべきですよ」

    骸はブツブツと呟きつつも、ムクロウの頬を掻いた。

    「あっあれやっぱ骸さんら!骸さーん!」

    「…骸様」

    久しぶりに聞く声に思わず振り返ると、いつの間にか廊下には犬と千種がいて、骸のいる所に向かって走ってきていた。

    「骸さんの匂いしたんで来ましたー…って、それブス女が拾ってきたフクロウびょん!オレらには触らせねーくせに!」

    「骸様…いつの間にクロームの匣兵器と仲良くおなりに」

    口々に言葉を発する部下の前に、骸も口を開いて一言。

    「この子がどうしても僕に触れて欲しそうだったので、仕方なく撫でてあげているだけですよ。本能を忘れ人に懐くなど愚かな事だ」

    そう言いつつムクロウを撫でる骸の表情はどこか満足気で、犬も千種も思わずこっそり顔を見合わせ笑った。

    骸と意識を交代したクロームも、沈む意識の中温かい骸の雰囲気を感じとり、クスッと笑みを零した。
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