「っ寒……」
腕がひやりとする感覚に意識が押し上げられる。この感覚はいつまでも慣れない。
心当たりのある方へ視線を移すと、やっぱり。
ユウ、エアコン切り忘れてる。寝る前消してって言ったのに。通りで寒いわけだよ。
エアコンはこうこうと唸っている。
明け方。四時二十二分。
カーテンに透ける外は、既に少し明るいけど雀が鳴くにはまだ早いかな。
起きる時間まであと……四時間もないけど、それまで休ませてあげよう。ヘッドボードに手を伸ばしてリモコンをなんとか捕まえる。ピ、という電子音を合図に、エアコンは待ってました、と羽をしまった。
ふと、隣でぐーすか眠る恋人に目を向ける。僕はこんなに寒いのに、悔しい程かっこよくついた筋肉のせいでかけらも寒くないらしい。年の割に、寝顔は幼くて、何だか気が抜ける。
逞しい腕が目に入った。大胸筋を潰して僕の方に投げ出された腕は、ベッドとの間に三角形を作っている。
……入れそう。
そう思ったときには、もう僕の手はユウの腕をそろりと持ち上げていた。体を滑り込ませて、目の前にはユウの胸。それから、冷えた体にユウの腕がじんわりと熱を分けてくれる。ちょっとだけ、こうしててもいいよ、ね。
「ぅん……」
眠りから一瞬顔を出したユウの声がして、ぐ、と僕に乗る腕が背中を押す。顔が胸にくっついてしまいそう。途端にユウの匂いが強くなって、意識がとろりと溶けだした。
ユウのせいで僕、すごく寒いんだから、ユウが、あっためて、よね。
朝までに突き放されてるだろうなぁ。ユウ暑がりだし。ちょっと寂しい。
だから、朝目が覚めたら、汗だくのユウが目の前で寝てるのには心底びっくりした。