【Lucashu♀】はじめてのパンプス。□
頭のてっぺんから、爪先まで鏡で確認して、ため息をついた。学校の女子トイレで佇んで、自分の姿をはじめて、「これはないな」って思った。無地のTシャツに履きなれたジーンズ。綺麗で羨ましいっていわれてる髪だってポニーテールで高く結うだけ。そりゃ、そう。あんなこといわれても仕方ないんだ。
「シュウって、かわいいけど、女には見えねえよなあ」
「そうなんだよな。残念すぎ」
「な。付き合っててもあんな感じなら美人でもすぐ別れる」
げらげらとした笑い声と、クラスの女子をランク付けする言葉。教室のトビラの前で、僕は入ろうに入れず立ったまま。その流れていくランキングを聞き流そうとしていた。廊下。見下ろした自分のつま先。スニーカーなんか、ちょっと履き潰してる。無性に恥ずかしくなった。まるで女子力がない。三姉妹の真ん中で、姉と妹は可憐で可愛いのに、僕はテコンドーして、ヘラヘラ笑って男の子と平気で遊んで、数学解いたりして。まるで男の子みたいな生活してて。思い返しても、僕って。ああそうだ、「僕」なんていってる時点でなんだかもう手遅れな気がした。足元がぐらぐらして、僕は唇かんで教室に入るのを諦めた。その足で駆け込んだ女子トイレで、化粧っ気のないなんの努力もない顔を撫でて、泣きそうになってる自分が恥ずかしくなった。こんなんじゃ、僕はルカに愛想つかされてしまう。
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