Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ant_sub_borw

    @ant_sub_borw

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 51

    ant_sub_borw

    ☆quiet follow

    スズエン ハロウィンネタ 健全なSS

    ぱたぱたと駆け寄ってくる足音。軽いそれが誰のものかは、振り返らずとも明白だった。
    「お兄さん!」
    鈴を転がすような声に振り向くと、九本の尾をもったヴァルポの少女が立っている。
    見れば手には小さなバスケットを持っており、ああそういえば今日はハロウィンか、などと思い出した。ロドスに暮らす子供たちが浮足立っていたな、と。
    少女はにこっと笑って見せる。
    「お兄さん、トリックオアトリート、してください」
    「お前が菓子を配る側か?」
    「はい!」
    普通逆だろう、と思いつつも、期待に満ちた表情でこちらを見上げる目に真っすぐ見つめられ、これ以上茶化す気にもならなくなる。
    小さくため息をつき、しゃがみこんで目線を合わせる。
    「トリックオアトリート」
    そう言うと、少女は満足気な顔になり、手にしていたバスケットから小さなキャンディを取り出した。
    「だから今日は、タバコはダメですよ?」
    小さな手に差し出されたキャンディを受け取るとき、少女はそう言った。
    喫煙所に行くところだとバレていたらしい。ふっと口角を緩め、受け取りながら答えた。
    「なら、悪戯を選んでやればよかったな」
    「え?」
    少女がきょとんとした顔で首をかしげる。
    「お兄さん……どんな悪戯するんですか?」
    その様があまりにあどけなくて、純粋無垢で、邪な思惑を働かせることすらおこがましく思う。
    これがこの少女の持つ不思議な性質だ。
    「悪さはする。魔族だからな」
    そう言いながら立ちあがり、早速貰ったキャンディの包みを開き、口の中に放る。
    「お兄さんは悪い人じゃありません」
    足元にまとわりつく少女がそう言ったが、喉の奥で笑い、そのまま歩き去った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖☺🙏☺💖💞💞💘💖💖😍💖❤☺㊗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works