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    ant_sub_borw

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    ant_sub_borw

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    テ神の伝承保菌者で伝承科でお勤め中のデイビット君の二次創作
    ※CP要素は薄いけど製造ラインはテスデイ

    山間の中にある田舎街。近くに天文台があり、数年前までは一応の観光地としてそれなりの人の出入りがあったそうだ。
    しかし今はそんな面影もなく、どころか人の気配が微塵もしない。
    いや、人はいる。ただそこに居るだけだが。

    曲がりくねった山道を車で登り切ると、開けた広場、それをぐるりと取り囲むように民家が並ぶ光景が目に入る。街の入り口だ。
    手前で車を下り広場へ踏み入れる。異変はすぐに視界を埋め尽くした。
    広場に思い思いに立ち尽くす人々。その立ち姿はばらばらで、共通性はない。だが、まるで一時停止をかけた映像かのごとく、ぴたりと制止してびくともしない点は共通している。
    一時停止というのは直感だったが、この街の調査の末に得た結論としては、当たらずとも遠からずな表現であった。
    『地元のスクールに向かうバスに、この街の子供たちが誰も降りてこない。街に行ってみたら恐ろしい光景が広がっていた』
    スクールバスの運転手やその他数名の、麓の街の住人の証言。それらが何度かの選別を受けたのち、時計塔の伝承科に回ってきたのが昨日のことだ。事件発覚からは五日ほどたっている。
    この光景をただの人間が見たのなら、確かに不気味だと感じるのだろう。
    伝承科の中での短い審議ののち、調査を任され現場へとやってきたデイビットは、無感情のまま念入りに周囲を見渡した。
    しゃがみこむもの。隣にいる者同士談笑している様子のもの。はしゃいだように走り回っているもの。何かを手にして眺めているもの。ぴたりと停止したままの住民たちのポーズは実に様々だ。
    手始めに一番近くにいた初老の男性を観察する。生体反応はなく、しかし死亡後の腐敗などは見受けられない。毛髪や皮膚の上体はまだ血が通っているかのごとく生き生きとして、だというのに作り物のごとく微動だにしない。
    生きているか死んでいるか、実際のところ調査項目は存在しない。原因解明の一端でどちらかが判明したのであれば、レポートに書き加える必要があるのだが。最も重要な項目は、この現象が何であるか、何によって引き起こされたかの解明だ。
    住民の観察は早々に切りあげ、街中を進む。広場にそって円形に連なる民家の奥にも、建物は続いてた。ちょっとした小売店、個人診療所、そして教会。どこにでもありふれている、田舎の小さな街という印象だ。
    歩き回りながら常に生体反応を探してはいるが、見つかる素振りはない。生存者の捜索は簡易ながらもとっくに地元警察が行ったあとなので、期待はできなかったが。
    何軒分か魔術を使ったスキャンを終えたあと、コートのポケットに入れていた携帯端末を取り出す。画面に表示された電波のアンテナは低く、これを使うのは後でいいかと再びポケットにしまった。
    未だ謎はひとつも解明されていないが、鍵となるものの見当はついている。
    というより、おそらくデイビットにのみ、その『鍵』が見えている。
    街に入った時から見えてはいたが、すぐに自分や周辺に致命的な危害を与えそうにない点と、それが街の最も奥に位置していたため、往復の調査効率を考えて後回しにしただけだった。
    街の一番奥にある一軒家。周囲の建物から少し離れているが、外観はごく普通のものだ。
    しかし、その家の周辺には、この世ならざる未知の存在が漂っていた。
    オーロラのような物質。可変する色彩がカーテンのように空中から垂れさがっている光景。南極などで見られれば幻想的な風景だったかもしれないが、雪の気配ひとつない春先の山で見るには明らかに異質だ。
    極光のカーテンは建物を貫通し、それこそ風に揺れているかのごとくゆらめていた。それが自然現象ではなく、地球外の存在であるのは、少なくともデイビットの目には明白だった。
    家の玄関ポーチに近づく。オーロラに生体的なパーツは一切見受けられないが、その存在がこちらを認識した、と感じた。
    屋根上を見上げ、現地民に声をかけるかのように話しかける。
    「ここが気になるのか?」
    最初はごく普通の英語で話しかけた。光のゆらめきがやや激しくなる。何らかの反応であると踏んで、懐を探った。
    「ここだけ仕上がらないから気になっているとか?」
    街に降り立ち、ここに歩いてくるまでに立てた推測に基づき、さらに声をかける。
    すると、耳鳴りにも似た甲高い音ののち、ちりちりとノイズがはしるような音が聞こえる。あくまで肉体が受け取る不可解な音を、精一杯『人間』にも理解できる表現を探したうえで当てはめた言い回しだが、レポートにまとめる時には重要な言葉の置き換えでもある。それを読む者が全て、デイビットと同じレベルの視座を持っているとは限らない。
    少々身構えていたが、幸いといっていいものか、ここ最近研究を手伝っているとある異物、そこに居座っている異星人が扱う言語が応用できそうだと安堵した。コードネームでロゴスと名付けられたその異星人は、とにかく知らない言語を学ぶのが好きらしい。その欲求を定期的に満たしてやるだけで危害はなく、ここでの学習を終えたら元の星に帰りたいという、かなり良心的かつ話の通じる脅威だった。
    「そこにもう生きている人はいないんじゃないか」
    そう告げると、ぎらついていた光の明滅がぴたりとおさまる。しかしすぐにカーテンは揺らぎだして、どころか急速に薄れだした。
    興味をなくすのが速いな、と思いつつ、最後にまた携帯電話を取り出し、カメラモードでオーロラ光を撮影する。上手く撮影できるかはわからない。そもそもこの惑星の物質ではどうしても解析できない代物のほうが、この界隈には圧倒的に多い。それでも保険のためだった。
    携帯電話をしまいながら、玄関のドアに手をかける。鍵は開いていて、特にノックもなくドアを開いた。
    中は静かで、相変わらず人の気配はない。断りもなくリビングを抜け、屋内全体を探し回った。
    くまなくチェックしながら歩き回り、最後に寝室に到達する。中をあけるとそこには、ベッドに横たわったまま死んでいる一人の老婆がいた。
    窓を閉め切りカーテンも引いて、昼間だというのに寝室は薄暗い。構わずベッドに歩み寄り、遺体を確認した。
    皺だらけの手に握られたハンドガン。頭部の損傷具合からみて、銃口をくわえて発砲したのだろうと予想する。
    ベッドの上、返り血などが当たらなそうな個所に、開いたまま放置されている手帳とボールペンがあった。それを拾い上げ、見開きのページの走り書きを読み、もう一度老婆に視線を向ける。
    一体何がおこったかは、もう解明できた。レポートも時間をかけず仕上げられるだろう。
    状況的に見て自ら命を絶ったであろう老婆を見下ろし、胸に手をあて、ほんの数秒だけ黙祷をささげる。
    「あなたは勇敢な人だ」
    そう言葉にし、手帳を持って部屋を後にした。


    置いてきた車に戻り、一本取り出した煙草に火をつける。じっくりと煙を吸い込むと、苦いそれが肺を見たし、血流にじわりと懐かしい気配が滲む。
    車に寄りかかり、バックミラーを見つめる。二、三度煙を吸っては吐いて、ふと苦笑のような表情をとる。
    「宇宙人だからといって、全てが万能というわけじゃないんだよ」
    側には誰もいないが、まるで隣にいる友人の軽口に合わせるように、自然な声音と語り口が零れる。
    側に誰もいないというのは、彼以外の認識でしかないのだが。
    彼の側には常に、最も大切で愛しい存在、その存在に通ずるための触媒が寄生してあり、脈うつ鼓動とともに息づいている。
    「ああ。オレもだ。おまえに会いたいよ」
    煙草をもみ消し、携帯灰皿に突っ込む寸前、彼は一度だけ寂し気に目を伏せそう呟いた。
    「確かに写真のひとつでもあれば、もっとマシだったかもしれないな」





    レポートNo.■■■
    ケースコード:『ローカルな感謝祭とその思い出』
    種別:収容可・要観察
    プロトコル:発生地点は厳重封鎖。認識改変はレベル■で応対。カバーストーリーは以下の通り。

    ─中略─

    事象を発生させた■■■■については、既に地球上より退去済み。再度来訪の兆しについては要観察とする。

    説明:
    ■■■街は■■月■■日■曜日に例年通り地元の小規模な祝祭を開催。

    ─中略─

    事象発覚の三日前、■■月■■日、とある個人カメラマンのSNSに、祝祭の様子を撮影した数枚の写真が掲載される。
    住民は一名を除き全員がそのいずれかの写真に撮影されており、住民の配置やポーズはこれともれなく一致。
    カメラマンに地球外生命体との接触の痕跡はなし。別途ケースにて観察を推奨。

    自殺者『■■■・■■■■■』について:
    年齢■■歳。夫と死別。子供なし。

    ■■■■年の事故以降車椅子を使用。■■■■年に夫が死亡してからは、街に住む元介護職の主婦(■■歳)の補助を受け生活。
    街では唯一■■教を信仰しておらず、祝祭も不参加であり、SNSに掲載された写真にも撮影されていない。
    自宅に残された手記には、自殺直前の様子や心境、自殺に至った経緯が記されている。No.■■■―■として保管。

    筆者所感:
    ■■■■はなんらかの制限により平面情報しか参照できない可能性。
    生物の生死は恐らく判別可能。
    ただ、生死の状態を区別しながら同列に扱えなかった点については不明。
    再来訪の可能性がない限り、考察の優先度は低いものと考える。


    筆者
    デイビット・ゼム・ヴォイド
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    ant_sub_borw

    DOODLEmhykの各国の魔法使いたちがFate世界のアライメントを持ったらどうなるだろう、という妄想メモを単にまとめたものです(無駄に長い)
    キャラの解釈を深めるためという意味でも考えたものです
    あくまで独断と偏見、未履修のエピソードもある中での選定です
    異論は認めます。
    賢者の魔法使いたちの属性についての考察(妄想)・アライメントとは?
    一言でそのキャラクターの性格、人格、価値観、信念や信条を表す属性と、そのキャラクターが生前どんな偉業を成したか、どんな人生あるいは物語を歩んだかなどを考慮したうえで振り分けられるパラメーターのうちの一つ。
    細かく説明すると非常に長くなるので割愛。
    『善』とつくからいいひと、『悪』とつくから悪人、のような単純な指針ではないことだけは確かです。

    ・アライメントの組み合わせ
    『秩序』『中立』『混沌』/『善』『中庸』『悪』の組み合わせで9パターンあります。
    今回はさらに『天』『地』『人』『星』も加えました。
    おおまかに『天』は神様、それに連なるもの。『地』は各国に根付いた物語に出てくるような英雄。『人』は生前に人でありながらすばらしい才能や功績を認められた人物。『星』は人類が作り上げた歴史の中でその技術や知識といったものに大きな進歩を与えるような功績を持ったもの。
    19391

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