忘れられない花言葉川辺で釣りをしているとムーミンが黄色の花を抱え僕の元へ駆けてくる。
抱えている花の名は『クロッカス』だった。

「スナフキン見てよ！フローレンにさっき貰ったんだ！綺麗でしょ」
幸せそうに笑顔を浮かべあらゆる角度からクロッカスを眺めてはフフッと笑みを溢している。「知ってるかムーミン。クロッカスの花言葉は『私を信じて』なんだぜ　君は本当にフローレンに愛されているんだな」と彼に伝えると「スナフキンは本当に物知りだね！」と再びフフッと目を細め笑みを浮かべていた

「色んな場所を旅をしてきたからね…」

嘘をついた。
本当は旅で得た知識じゃない。
幼かった頃の朧げに記憶に残っている彼の姿
川辺でヨクサルはパイプを咥え釣りをしていた。幼い子供にとって釣りは少々退屈なものだ。僕が「退屈だ」と呟くとパパは横目で「好きな所へ行っておいで」と優しく頭を撫でてくれた。辺りの森を散策して周った。そこで美しい黄色の花を見つけた。帰り道にパパが花の名とその意味を教えてくれた後僕の帽子に一輪飾って優しく頬を撫でてくれた。その記憶だけだった。その記憶が唯一ヨクサルと過ごした思い出だった

いつまでもパパの事を待っている。信じている。また会えるって。

ムーミンと別れた後パイプを咥え火を付ける
水辺に映るパイプを咥えた男はあの頃の記憶に残ったヨクサルにどこか似ている
吐き出される『会いたい』の気持ちを含んだ煙に包まれゆっくり目を閉じる。
ふと会いたくなった時にしてしまう癖だ。


冬になると旅先で巡り会えるだろうか

またあの頃のように頬を撫でてくれるだろうか

淡い期待を抱き冬に向け身支度を始める。