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    yu___n1227

    @yu___n1227

    すけべしかないです多分。

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    yu___n1227

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    裏切りのキス「行くな」
     もう何度目だか分からない。その細腕は簡単に俺の手をすり抜けて、一番行っては欲しくない場所へ向かう。彼も忌み嫌っていたはずの父親の元へ。
     シンジケートは今やAPEXゲームを越えて、アウトランズ全体を支配しようとしている。ドゥアルド・シルバは全てを掌握すべくあらゆる手段を使い、体裁などお構い無しだ。自分の家族すら省みず、おかげでオクタビオは日に日に立場を失くしていった。
     情報のやり取りの末、俺とオクタビオは周りには言えない爛れた関係にある。オクタビオから仕掛けたこととは言え、断らなかった俺にも非があるのは分かっている。分かっていて止められない。まだいるはずの家族からの愛に飢え、周囲を裏切り危うい立場に向かっていく愚かな青年を愛してしまった。俺にとって忌むべき煩わしい相手であるにも関わらず。遊び半分だったオクタビオも、情を渡せばそう時間を取らずに応えを寄越した。二人とも孤独に飽きていたんだと思う。
     ゲームの合間に何度も逢瀬を重ね、触れていない場所は無いほど抱き合った。見た目よりも傷付いていた中身を触れ合わせるのは心地が良い。互いに隙間を埋めるように、余計な言葉も無く関係を続けた。口にすれば壊れると分かっていたからだ。
     それなのに、オクタビオはまた父親を手伝いに行くという。友人にも、ライフラインにさえ手を差し伸べられなくなった今、彼が必死に縋るのは父親だ。彼は信じている。ドゥアルドを支持すれば何もかも上手くいくと。離れていったものも取り戻せると。一番欲しいものは父親からの愛だと疑わない。
     どれほどその身体に印を残しても、こちらを振り向くことは終ぞ無い。俺との関係はただの享楽でしかなく、彼の求めている愛には代わりようがない。求めても、オクタビオを困らせるだけだった。
    「親父が待ってるんだ、行かなきゃ」
    「本当に全て取り戻せると思っているのか? お前の父親はもう敵を作りすぎた。お前を振り向く暇なんてない」
    「必要だって言われたんだ、家族だぞ? オレが信じなきゃ誰が信じてやるんだよ」
    「何も分かっていないのか。……頼むから行くな。これ以上お前が辛い思いをしているのは見たくない」
    「辛くなんてないさ。みんな分かってないだけだ。全部終わったら、みんなオレを認めてくれる」
     世迷言ばかりを紡ぐ口を無理矢理塞ぐ。驚いて引いていく身体を強く抱き寄せ、後ろ頭を手のひらで抑え、呼吸を奪った。胸元を押し返す力は俺には敵わない。手を取り指先を絡めても、オクタビオがそれに応えることはもう無い。暴いた粘膜を味わう唇を強く噛まれ、反射的に口を離した。目元を赤く潤ませた瞳が力無く俺を見る。
    「……アンタも、分かってくれないんだな」
     もういいよ、と手を跳ね除け離れていく。それを追い掛ける資格が自分にあるのか、今もまだ分からない。
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    yu___n1227

    MOURNING
    スタンドプレイ「オクタン! 深追いはするな、周囲に多数他部隊がいる! 」
     緑の閃光は止まることなく、瞬く間に銃声のする方へ駆けていく。俺の言葉など耳にも届いていないだろう。目の前に転がったデスボックスを漁る暇も無く、急いで彼の後を追いかける。アドレナリンでブーストする彼は、味方と言えど見失ったら手間がかかる。
    「、っ……」
     銃弾もシールドも回復すら追い付いていない。無意識に舌打ちをして、坂道になっている山肌を滑り降りながらバッテリーを巻いた。近付く銃声にオクタンの姿を探し切ることは出来ず、加勢が間に合わないと思いとりあえずハックを宙へ飛ばす。マークされる敵影は四人、そこへジャンプパッドの派手な音が響いたので、すぐに端末をしまい駆け出す。立ち止まらないと支援出来ない俺のスタイルは、今のオクタンとは相性が悪いように思う。最近の彼は、何か振り切れたかのように無茶な戦い方ばかりしていた。味方を省みず自分の足だけで稼ぎ、回復も疎かに激戦区へ向かう……他のレジェンドからも呆れたような声を聞く。以前はこんなこと無かったのに、と擁護する声が無くはない。だが連携の取れなさは扱いにくさに直結し、部隊の存続を簡単に左右する。多くのレジェンドが今の彼を敬遠しているのは明らかだった。
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