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    青汁苦瓜

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    青汁苦瓜

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    パッチ5.5までのネタバレと死ネタが少しだけあります。
    うっすら両思い時空かもしれないなんかそんな感じのアイ光♂話。

    光を男性想定で書いていますが、名前と一人称と種族を明確にはしていないので、
    性別はどちらでも読めるかもしれないです。

    ##アイ光♂

    馬酔木/アイ光♂ 帝国とエオルゼア・東方連合との戦いが長期化する中、属州が次々に決起し、辛くも勝利が見え始めた頃、突如としてそれは起こった。大気の揺らぎと共に、自身の中のエーテルが腐り落ちるような感覚に思わず膝を付く。鼓膜に焼き付いて離れないほど絶えず鳴り響いていた爆発音や剣撃の音は、不気味な程に静まり返っていた。
     辺りを見渡せば、敵味方関係なく地に倒れ伏し、同じように膝をついた者も呆気なく力を失う。先ほどまで殺し合いをしていたはずの戦場は、今や立っている者はいない有様だ。荒くなる呼吸を整えようとするたび、エーテルが抜け落ちる。
     どさりと後ろから音が聞こえ、咄嗟に振り向けば、冒険者がうつ伏せで倒れていた。弱々しく震える体をどうにかひっくり返し、顔を見れば、悲しみややり切れなさをないまぜにした瞳がこちらを見上げ、弱々しく差し伸ばされた手を、アイメリクは両手で包み込む。

    「いっしょ、に…ぼうけ……いき…た……」

     ひゅうと、吐息混じりの声にならない音が口から漏れ出たのを最後に、呼吸は止まった。
    だらりと投げ出された四肢に力は無く、眠るように閉じた瞼の縁からは雫がこぼれ落ちる。徐々に視界が暗くなり、ああ、そろそろかと思う頃には既に身体は地に伏していた。
     倒れる衝撃で痛みを感じる間もなく、どうにか上体を起こし、眠るその人へ口付けを落とす。
     歌や詩に謳われているように、どんな苦難も乗り越えてきたこの人ならばと、祈りに近い想いを込めて空気を送り込んでも、ぴくりとも動かず。
     既に生命活動を停止した亡骸が息を吹き返すような奇跡は起きない。そんな事はアイメリク自身も承知の上で、それでも唇を重ねないという選択肢はなかったのだ。願うならば、イシュガルドの民が前に向かって進んでいく様を見届け、共に冒険の旅に出るという、いつかの楽しみを叶えたかった。朧げな意識は泥濘に沈んだまま、二度と浮かび上がる事はなかった。

     妙な夢を見た気がする。内容を思い出そうにも霞のように掻き消えて、残るのは一抹の寂しさだけだった。
     石の家のテーブルの一角、うたた寝をしていた冒険者は眠気を払うように頭を振りかぶり、辺りを見渡す。そこには暁の面々が雑談に興じていたり、あるいは競うように体を鍛えたりと、瞼を落とす前の光景と何ら変わりはない。既に第八霊災を伴う、世界統合の要因は取り除かれたのだと安堵する。
     テンパード化の治療法が確立され、蛮神問題への対策など獣人との関係改善の兆しが見え始め、深く根付いていた問題も解決の糸口が掴めた。
     先の防衛戦線はヴァリス帝が殺害され、事実上終わりを迎えた。だが、エリディブスから己の体を取り戻したゼノスとアシエン・ファダニエルが結託し、終末を引き起こさんと動き始めるなど、新たな問題が浮上したのだ。
     もう一度自分と再度刃を交え、死合いたいというゼノスの渇望は、いとも容易く周囲を巻き込む。こちらを無視すれば無辜の民が被害に遭うとまで宣言をした上で、怒りや憎悪といった執着の目を向けさせたいのだろう。ある意味で自分という存在が原因の一つとなっている事実に、内心やりきれなさでいっぱいだった。

    「難しい顔をしてどうしたのよ。具合でも悪いの?」

     そういった思考は深みに嵌れば嵌るほど抜け出せなくなるものだ。側から見たらあまり良くない表情をしていたのだろう、心配そうにこちらに近寄るアリゼーに、冒険者は取り繕った笑みを浮かべる。

    「ううん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
    「それなら良いんだけど……あまり無理しないでよね」

     その笑みに思うところはあるらしく、釈然としない様子ではあったが深くは聞いてこなかった。もし、この状況は自分のせいだ。などと言えば、この優しい少女はとても、いや、大分怒るだろう。
     地脈の結節点を狙う異形の蛮神を討滅し、どうにか最悪の事態は免れたものの、これで終わるはずもなく。各国が獣人と連携をとり、新たな被害を防ぐ間、暁は終末の塔から発せられるエーテル波の対策と塔の謎を解明する為、シャーレアン本国へと向かう手筈になっている。一度船に乗れば、暫くはこちらに帰ってくる事も難しくなるだろう。
     そう考えると寂しさからだろうか、無性に彼に会いたくなり、冒険者は勢いよく立ち上がった。旅支度を済ませなければいけないが、先の戦いの疲れを癒す為の休暇も与えられているのだから、それくらいの余裕はある。

    「ちょっと、いきなりどうしたのよ!?」
    「出掛けてくる。明日には戻るから!」

     驚いたアリゼーの疑問にそう答えながら、テレポを詠唱してその場を後にした。



     イシュガルドへ転移し、すぐさま神殿騎士団本部へと立ち寄れば、突然の来訪にも関わらず、ルキアが快く出迎えてくれた。聞けば、アイメリクは総長室にて業務を行っているらしく、そろそろ茶を持っていこうとしていたらしい。良い気分転換になるだろうと、ポットと二人分のカップ、そしてバーチシロップの入った瓶が乗せられた盆を渡され、落とさないようしっかりと受け取った。
     案内されるまま昇降機へ乗り総長室に向かえば、石造りの廊下には見張りの者以外の人気は無く、しんと静まり返っていた。扉の前に着き、両手が塞がっているのを見兼ねたのだろう、見張りの騎士が代わりにノックをし、入室の許可を与えられる。一言感謝の気持ちを伝えると騎士は少し口元を緩め、扉を開く。そのまま部屋に入れば、アイメリクはこちらの姿を見るなり、呆気に取られたように目を丸くした。

    「驚いたな……まさか君がいきなり尋ねてくるとは」
    「お忙しいのにごめんなさい……」
    「何、構わないさ。そろそろ休憩を取る頃合いだったからね」

     そこに置いてくれないか。そう言いながら立ち上がり壁際へと向かう。言われるまま盆を机の上に置けば、どうやら椅子を持ってきてくれたらしく、机を挟む形で置かれ促されるまま座れば、きぃと微かに木が軋む音がした。
     目の前の美丈夫はポットを持ち、並べられたカップへと茶を注ぐ。葡萄色えびいろの透き通った液体からふわりと白い湯気が立ち上り、柔らかな香りが鼻腔をくすぐった。ポットを盆の上に戻し、瓶の蓋を開け、ティースプーンで中身を数匙入れたところで、こちらへと視線が送られる。

    「君も入れるだろう?」
    「ひと匙分だけお願いします」
    「遠慮しなくても良いのだが……」

     どこか困ったように柳眉を下げられる。甘い物を好むアイメリクからしたらそう見えるのだろうが、冒険者はそこまで甘党ではない。苦笑しつつも、きちんとシロップひと匙分が入れられたカップを受け取り、口に運ぶ。心地良い渋みのあとに酸味のある甘さが程よく舌を潤し、漸く人心地がついた気がする。

    「ところで、何か悩み事でも?」
    「えっ」
    「君が連絡もなしに尋ねてくるなど珍しいからな」

     微笑を浮かべながらも、こちらを見る瞳は気遣わしげだ。何か重い事情があると思われているのが言外に分かり、冒険者は言葉に詰まった。どうしよう、ただ単に顔が見たくなったから、などと言える雰囲気ではない。どう伝えたら良いのだろうと、真っ白になった頭を動かしても全く思いつかず、目が回りそうだ。その様子にアイメリクの表情から笑みは消え、真剣な面持ちでこちらを見つめる。

    「……ここでは話し辛い事なのであれば、改めて時間を作るが」
    「ええと……」

     このまま選ぶ言葉を探していると、ますますいらぬ心配をかけてしまう。それは冒険者にとって本意ではなく、意を決して口を開いた。
     
    「その……近いうちにシャーレアンへ向かうので、暫く会えなくなるなと思って……」

     熱い。恥ずかしさやら何やらで顔に血が集まるのを感じる。何で部屋に入った時に言わなかったのだろう、穴があったら入りたいとはこの事かと、視線を下に向けて彷徨わせる。

    「なるほど、それで……」
    「ごめんなさい……」
    「いや、謝る必要はない。こうして来てくれて、私も嬉しいんだ」

     くすりと、笑みを溢したような音が聞こえ、咄嗟に顔を上げると、アイメリクは暖かく柔らかな笑みを浮かべていた。一等好きなその表情に、冒険者は益々顔の熱が高まるのを感じる。このままだと比喩ではなく湯気が立ち上ってしまうのではないかと錯覚するほどだ。
     どうにか熱を落ち着かせようと、カップの中身を飲み干せばすっかり温くなっていた。

    「……あの、もし全部終わったらまた来ても良いですか?」
    「もちろん、断る理由なんてないさ」

     当然、旅の話をしてくれるんだろう?いつかの食事会の時の、まるで少年のようにキラキラと目を輝かせたその人の表情に、一抹の寂しさは掻き消えた。

    「いつか、絶対に旅をしましょうね」

     強い意志を込めて冒険者は独りごつ。
     きっと出来なかったであろう別の未来の自分達の分まで、絶対に叶えるのだと。
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