前日譚ポーラスのオフィスにて。
「んー…」
水色の研究員が1人、タブレットを手に唸っていた。
「どうしたんですか?」
声に顔を上げると机の向かい側にぴょこりとアンテナが揺れている。
「ん…おぉ、ライか」
セレストがちょいちょい、と手招きするとライはパタパタと駆け寄って隣に座り、タブレットを覗き込んだ。タブレットの画面には色んなクルーのプロフィールが表示されている。(中にはインポスターもいるが…)
「この前少し話したなりアモってやつの準備さ。ライも1度行った事あるだろ?」
「はい、とっても楽しかったです」
はにかむライの頭を優しく撫でるセレスト。
「今回はオレが主催するからさ、こうして色々やってるワケよ」
「そうなんですね」
なりアモ、その存在を知ってからずっと行きたくてたまらなかったセレストだったが、思いの外募集が少ない事を憂いていた。だがそこで思いついたのだ。無いなら自分が開催すればいいのだ!と。
「オレ、主催するわ」
なんていきなり言い出した時は(主にグレーに)驚かれたが、紫からは意外にもすんなりと許可が降りた。なんせ一日まるまる居ないことになるのだ。その間の日課業務の諸々を任せる事になるのを承知の上で承諾してくれた2人には頭が上がらない。
「色んな人達と交流できる貴重な機会だしな、面白い話が出来たらいいなぁ…」
改めて、なんて事ない思いつきから主催まで漕ぎ着けられた喜びを噛み締める。
「…あ、そういえばなんか用だったか?」
「あ!そうでした、マスターに呼んできてって言われて…」
「あー、なら足止めちまってすまんかったな、んじゃ行くかー」
タブレットの電源をプツンと切って立ち上がると、ライの手を引いてゆっくりと歩き出す。外に1歩踏み出すと夜の空気を纏った冷たい風が頬を撫でた。
(楽しみだなぁ…)
日が落ちて星が瞬き始めた空を仰いで、果てしなく遠い、何処かの星へと思いを馳せる。
交わることの無い世界線、しかしその壁を超えて集う、不思議な船、"なりアモ"。
さて、どんな出会いがあるのやら。