From your inspiration(ひろ公)サンプル クリスタリウムの街並みが橙色に染まり、居住館からは空腹を誘う匂いが漂ってくる。今では穏やかな隣人となった光が微睡み始め、闇をブランケットのように被る時間だ。 私は数日引きこもっていた塔を離れ、工芸館へと向かっていた。ただ街を見て回りに行くだけだという体を装い、不自然に歩調が早まらないようにと心がける。
今日は、あの人はミーン工芸館にいるだろうか。そんな期待と緊張で、私の胸は満ちていた。
かの英雄――各地の大罪喰いを討ち果たし、闇の手を引いて百年ぶりの再訪をさせてくれた人。私が最期の瞬間にしくじった為に、彼自身が大罪喰いとなりかけながらも冥い海底での決着を付けた人。名を呼んで再会を喜んでくれ、とても優しく微笑み掛けてくれた人……。
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