0210の日:2024「……あんたは、あまり自己主張というものが無いよな」
「…それをお前が言うのか」
日中のあたたかな日差しは影に隠れ、すっかり冷え込んでしまったとある月夜。まだ冬の半ばであると思わせる肌寒さは、室内で暖をとりつつ酒気を帯びるには何とも心地よいものである。勿論、逢引がてら酒を囲むことの多い大典太光世と鬼丸国綱にとってもそれは同じことであった。
二振りとも滅法酒に強い性質であるが、普段より早いペースで飲んでいた様子の大典太は、この日珍しく饒舌に話していた。
大典太は、万屋で見かけた飴細工の小鳥がよかっただの、今宵の夕餉の唐揚げが美味かっただの、思ってはいてもあまり口に出さないような些細な話を、先ほどからポツリポツリと鬼丸に吐露し続けていた。時折、鬼丸が飲酒を止めさせようと声をかけたが、酔っていないと一言ではねのけてはぐいぐいと猪口を煽り、今の今まで大典太は深酒を続けている。
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