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    りりさん

    @_melotiger

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    りりさん

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    #mmm

    envy me水曜日の放課後、学校の近隣にあるファーストフード店でハンバーガーを食べる。それは、どちらが定めた訳でもないし、約束をしたとかでもないにも関わらず二人の間に出来た慣習の様なものだった。飼育者(父親)が毎月テーブルに置いていく、子供二人が生活するには困らないだけの金銭――。それさえあれば十分だとでも言うように年々希薄になっていく父親との関係性。同じ食卓を囲むことも無ければ、まともに会話をすることも無い。永夢が記憶している限りでも、エムが記憶してる限りでも宝生家では父と子だけが同じ屋根の下に暮らしていると言うのにも関わらず、互いに関心を持ち合わせない暮らしをしていた。だからといって、どうということも無い、永夢にとって或いはエムにとっては、基本不在の父親の存在等に重きを置くほどの価値もないのだから。
    小学校の頃、それも低学年の頃だったか。永夢は全てが面倒になって、人生をリセットしようと思い立った。別に深い悲しみがある訳でもない、この環境を哀れだと客観的に思う人間はいくらでも居るだろうが、それがどうという訳でもない。傷ついた訳でもないし、苦しかった訳でもなくて、あまりにも世界が、生きるということが、退屈過ぎた。産まれた時から常に一緒に居る片割れ……エム。永夢にとってエムだけが世界の彩りであったが、その片割れも結局は外側へ触れ合えば外側へと染まっていく。瓜二つなその顔も、似通った思想や感情もいずれは他者との交わりによって分離していくのだろう。ゲームは好きだし、新作のゲームが出来なくなるのは惜しいが、だからと言ってエムが父親の様にただ存在するだけの存在に成り果ててしまうのであれば、そんな世界にいつまでも固執する必要はない。ただそれだけだ。最初の違和感は、小学校という四角に切り取られた箱の中に押し込められた時だ。永夢にとってエムだけが居れば良いのに対して、エムは直ぐに誰とでも仲良くなれた。エムが永夢をそっちのけで誰かと一緒に居ることは一度としてなかったが、エムは永夢から見てもクラスの人気者だった。それはそうだろう、明るくて気さくでゲームが上手くて時にお調子者なエム……顔こそ似ているがゲームのこと以外は正反対とも言える永夢。人に好かれるのがどちらなのか、分かりきったことで、実際にエムには友人とも呼べるクラスメイトが居たのに反して永夢には特定の仲のいいクラスメイトは居なかった。ならば、永夢が存在し続ける意味などあるのだろうか?飼育者の都合でまともな人間関係とやらも構築できない、授業だって地域が変わればやり方や方針も変わる。そんな日々になんの意味があるだろうか。極めつけにゲンムコーポレーションから送られてきた試作用ゲームロムだ。難しいゲームで、クリアが出来ないそのゲーム、楽しいと思う反面でプツリと何か世界そのものと接続されていたであろう細すぎる糸が切れてしまった。ああ、こんな不都合で理不尽の積み重ねの様な退屈な人生ならば、さっさとリセットしてしまいたい。ゲームの様に、そして新たにニューゲームだ。そこに、エムも居れば、何よりだが、まあ一人だったとしてもそれはそれだろうな。そう思いながら日々を消費して、それに気がついたエムが訊ねた。
    「死にたいの?永夢」
    「うーん、リセットしたいなって」
    「なら、リセットしようよ二人で」
    幼い子供の戯言。だが永夢もエムも本気だった。二人一緒なら、きっと新しい世界でも一緒に居られるだろう。そう、思った。だが死ぬということは痛いという事で、痛みこそが生である様に決して無にはなれないのだと病院で目覚めた時に思った。死ぬのは怖いことだ。
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