おんなのこはだれでも*
月に一度、女の子の憂鬱な日。
下腹部に走る重い痛みに、ナイトは慌てて校舎奥のトイレへと駆け込む。
「ぅ……ゲェ……ゴホッ、ゴホッ」
痛みで昼に食べたお弁当が全部食道を通ってリバースする。
血の気が引いて、耳鳴りと寒気に襲われ目の前が白く霞んだ。
額に滲む冷や汗を拭って何とか立ち上がり、ナイトはふらふらとトイレから出る。
次の瞬間、ドンッと誰かにぶつかり慌てて顔を上げるとそこには少し怒ったような自分と同じ顔があった。
「あ、ライト……」
「あ、ライト……じゃないよ!どうせこんなことだろうと思った」
「あはは、やっぱりライトにはお見通しか」
「当たり前でしょ、双子なんだから!ほら、保健室行くよナイト!」
そう言ってライトはナイトの手を引いて保健室へと向かう。
冷え切った指先を包むライトの手のひらの温かい感触に、ナイトは少しだけ生理痛の辛さが和らいだような気分になる。
保険医に鎮痛剤をもらうと、ナイトはライトに追い立てられるようにベッドに寝かされた。
「次の授業が終わったら様子見に来るから、ちゃんと大人しく寝てるんだよ!」
「はいはい、分かりました」
「はい、は一回でいいの!」
「はい、お姉ちゃん」
次の瞬間、見つめ合った二人は同じタイミングで吹き出した。
「ごめんねライト、いつも心配させて」
「もう、ナイトはいつも遠慮しすぎなんだから」
(あれ……もしかしてライト……)
ナイトが口を開こうとした時、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。
「じゃあもう行くね!」
「う、うん」
そう言って慌てて保健室を後にする背中をナイトは一人で見送った。
放課後、すっかり痛みが引いたナイトはライトと一緒に寮へと帰っていた。
「具合大丈夫?ドラストで痛み止め買わなくてもいい?」
「部屋に鎮痛剤はまだあるから大丈夫だよ」
「なら良いけど……」
「あ、そうだライト!」
心配そうに眉を下げるライトに、ナイトはポケットから取り出した包みを渡す。
「何これ……ドライフルーツ?」
「ライト、今日ちょっと機嫌悪かったでしょう?」
図星を当てられたライトは、驚いたようにナイトを見つめる。
「あちゃ~、ナイトにはバレちゃうか」
「当たり前でしょ、双子なんだから!プルーンは甘みもあって鉄分も取れるから生理中のおやつにぴったりなんだって」
「へえ、そうなんだ」
「撮影が近いけど、これくらいなら間食したって大丈夫だよ」
「ふふ、ありがとうナイト」
妹の気遣いに、ライトの頬がへらりと緩むのだった。
*