マイララバイ.
「おいしくな~れ、おいしくな~れ、萌え萌えキュン♡」
「はぁ…尊ッ……フランちゃんのおまじないでオムライスが100倍美味しくなったよ~ありがとう~」
「えへへ、ボクがお姉ちゃんのためにkokoroを込めたから当然だよね!」
「やっぱりフランちゃんはサイカワ!フランちゃんしか勝たん!!」
「わ~、ありがとう~!じゃあねお姉ちゃん、ゆっくりしていってね」
そう言ってフランが次のテーブルにドリンクを運ぶと、そこにはよく見知った顔が座っていた。
「あれ~キオお兄ちゃん来てたんだ」
「ああ、ボーラさんとの待ち合わせまでまだ時間があってさ……いや~、やっぱりここに来ると癒されるなあ~」
満面の笑顔でそう言われるとフランとしても悪い気はしない。
「そうだ!キオにもさっきのやってあげようか?」
「さっきの……ああ、あっちのテーブルでやってたやつかい?」
「そうそう、キオってここの常連さんだけど、ああ言うサービス全然頼まないじゃん?結構好きそうなのに」
「う~ん……まあ、俺は味覚センサーがついてないからさあ、折角おまじないかけてもらっても分かんないかもしれないし……」
何でもないようにさらりと告げられたその言葉に、フランは少し言葉を詰まらせた後すぐに自分が運んできたコーヒーフロートに視線を落とした。
「おいしくな~れ、おいしくな~れ、萌え萌えキュン♡」
指で作ったハートをコーヒーフロートの上で回して、フランは可愛らしく小首をかしげてウインクを飛ばす。
「フランちゃん?」
「はい、あ~ん」
一方的に差し出されたスプーンの上には、白いバニラアイスが乗っていてキオは訳も分からずそれを口に入れる。
「”フランちゃんのおまじないで美味しくなったよ”」
「……へ?」
「”フランちゃんのおまじないで美味しくなったよ”……はい!」
「ふ、フランちゃんのおまじないで美味しくなった……よ?」
「今はわかんなくても、言葉にすれば分かるかもしれないから……キオが美味しいって言うのが分かるまで、ボクがずっとおまじないかけてあげるね」
正直なところ、いつもと何が違うのかキオにはちっとも分からなかった。元より味など感じた事がないので比較のしようもない。それでも目の前で自分の為に必死なフランの姿を見ると言いようもないkokoroのさざめきを感じた。
「うん……ありがとう、フランちゃん」
キオが照れ臭そうに笑っていると、にわかに店内が騒々しくなってきた。
「え~良いな!フランちゃんのあ~ん!!」
「フランちゃん!僕にも、僕にもやって!」
「もっちろんだよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんも順番!ちょっと待っててね~」
色めき立つ客たちにフランはそう笑いかけた。
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