こんな夜遅くに来てもらって申し訳ない。
自力で歩けないほど酔い潰れた獄は今はソファで横になっている。
このあとシンジュクに戻らないといけなくて……。獄のこと、頼んだよ。
獄さん、大丈夫っすか?
ん……じゃ、くらい……?
神宮寺さんはシンジュクに帰ったっす。ここは獄さんのお家っすよ。
獄は寝ぼけているのか苦しそうに云々と唸るだけだった。
お水持ってくるっす。
台所に向かおうと立ち上がったそのとき、腕を強く引かれた。
バランスを崩し、ソファに倒れ込むと獄の顔が目と鼻の先にある。
お前はいつも……そうやって逃げようとする。
え、え?
言葉の意味がわからず困惑していると唇に柔らかな感触
獄とキスをしていた。
状況が飲み込めず固まっていると頭に手を回され、口づけがさらに深くなる。
力いっぱい獄を突き飛ばした。
獄は勢いよくソファに倒れ込む。
いってぇ……
頭をさすりながら
十四……?
寝ぼけ眼だった瞳は意識を取り戻し焦点が自分に定まる。
じ、自分!帰るっす!お邪魔しました!
おい!十四!
呼び止める獄の声を無視して逃げ出すように家を飛び出した。
真っ暗な道をただひたすら走った。
好きな人とのキス。
嬉しいはずなのに。
でも獄さんは自分にしたとは思っていなくて。
口の中には酒の苦味が残っていた。