花火「ねぇ、KK、花火やろうよ」
「は?んなもん、どこでやるんだよ?」
生憎と都会のど真ん中では花火をやれるような場所はない。公園は火気厳禁がほとんどだし、住宅密集地では家の前でも難しい。ましてや集合住宅では。
「ベランダでやろ、これなら大丈夫でしょ」
手には線香花火。確かに、それならたいして煙も音も出ないし、火薬の匂いもエアコンをいれて閉めきっている近隣には影響しないだろう。
水をいれたバケツを用意し、ベランダにでる。外はベタベタと肌に纏わりつくような空気で、早くも室内のエアコンの効いた空間が恋しくなった。
暁人は嬉しそうに、線香花火をベランダの床に並べる。
「どっちが長く落とさずにいられるか、勝負しようよ」
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