首筋の熱、うなじの刻印 8月22日の長い夜を越えた今も、祓い屋の拠点は幽玄坂のアパートのままだ。幽玄坂は夜にこそ騒がしくネオンの光が輝いている。前までなら落ち着かなかったそれに、最近は少し慣れてきた。
僕はあれから適合者としての力を見込まれてアジトのメンバーの一員となっている。KKが抜け出てしまったのであの夜ほどの力はないけれども、エーテルを操れるだけでも貴重な存在なのだと力説され、目下KKの助手兼弟子みたいな状態だ。胸を張って相棒だと言える日はまだ遠いなとため息をつく。
今日は先日の依頼についての報告書を仕上げておきたくて、大学の後にアジトに寄った。ちょうどKKが「ちょっと昔なじみと飲んでくる」と僕と入れ違いに出て行って少しだけ残念だったけど、多分彼には悟られなかったはずだ。
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