不良生徒「おい!!!遊馬!!!またお前そんな所から入って!!」
ひょいっと身軽に外壁を超えてきて中に侵入する。普通なら門を通って入ってくるのだが、今日はあいつにとってはお堅いお堅い風紀委員からの校則チェックがあって、それを掻い潜るためだろうと分かり俺ははぁー、とため息をつく。
「なんかーー!!人だかりいたんでこっちから来ましたー!!」
馬鹿か
窓越しでもわかる、あいつが思いっきり笑ってるって
ーー
「おはよー」
そう言って教室に入ってくる
みんなにおはよーと返されながら来たのは自分の席でもなく俺の前の席、椅子に股がってこっち向きに座る
「うっわ、お前また俺が外から入ってくるところ見てただろ、趣味悪ぃ〜〜」
「はぁ、別に見てたわけじゃない。たまたまお前のうるさい声が聞こえただけだ。」
「そうかよ」
それだけ言うとスマホをポチポチといじり始める
「普通に校門から来ればいいだろ。」
「はぁ〜、分かってねぇな、校則反しまくりだろうが、普通に入ろうたって無理なこった」
「だから、校則通りにしてこればいいのにって言うことだよ」
「ん〜だるい、それよりこれ見ろよ!!」
そうしてバッと出されたのはとあるDJかなんかの写真
「この人、今度あのクラブでやるみたいだ!!なぁ、次こそサニーも…!!」
「行かない。」
「やっぱ行かないかぁ〜、まぁいいけど…」
そんなこんな、あちぃ〜だの、次の授業のことだの話していたら予鈴がなりさっさとユーゴは元の席へと戻っていった
ーー
「じゃあ、この次の問題、サニーと〇〇と△△、それぞれ小問一つずつ解いてくれ」
人が当てられて前に立つと教室が少し緩んでガヤガヤとうるさくなる
これは、こうだからここにこうやって代入して、仮説をこうしたから、この数式を使っ…
「おい、またあいつ見ろよ」
「マジでやってんな、なんかああやって悪いことやって気取ってんだろ」
その2人の視線の先には真っ白なヘッドホンをつけて机に突っ伏しているユーゴだった
はぁ、あいつ…授業中くらい聴くのやめたらいいのに…
「なんかあのピアスも変じゃね?」
「あーわかる、&)@“‘jgikm……」
関わりたくないけどちょっと腹立つし…
よし、あいつらがいるところはここだからそのまま後ろに、っと!
「うわっ!!!」
「なんか場違いだよn…;:/7&”@(sfm」
俺が間違えて偶然、なぜか分からないけど飛んでしまったチョークがちょうどそいつらの1人に当たってそいつ髪の毛が白くなる
「わわわわ、ごめんごめん!飛ばしちゃったよ〜!」
「おいサニー、なんでこんなことになるんだよ」
「いやほんとごめん!ごめんーいやまじごめんー手が滑った!でもお前、白い髪も似合ってるぞ、爺さんみたいで」
「はぁ???」
「男子こわ〜〜〜」
こう言う時の女子は助かる
「はいはい、喋らない、洗って落としてきなさい」
ユーゴはまだ机に突っ伏して音楽を聴いていた。
ーーー
後からクラスの女子から聞いた、そのサニーの行動は俺を助けるため?っていう思ってのことなんじゃないのかって。
俺はあいつのこう言うところが気に食わない。
何かしたらしたよって、言えよ、感謝したいし、されたいもんじゃねぇの?ただのお節介だって確かにそうかもしれないけどそれをただなんも無視して気にせずはいそのままって言う俺もどうにかしてんだろあーーーもーー、でもわざわざ言うことでもないだろうし
「おいサニー、帰るぞ」
「あ〜疲れた〜、現文眠すぎるだろ」
「はいはい、ラムネでも奢ってやっから」
「え、?なんの風の吹き回し……?こわ…」
「うるせーーー!気分だ気分!」
なんか少し申し訳ない気がしてラムネを奢った
プシュ、と炭酸が弾ける音がして、ごくりと喉が鳴る
あ〜、さっきから喉乾いてたからめちゃめちゃ美味そう…
ラムネの瓶を一気に傾けて自分の喉奥にシュワシュワとした、ピリピリとも言える強炭酸が流れ込んできて、喉がピキリと反応する
「ぷはぁぁ〜!!うっま!!!」
「うはぁっ〜!!奢りのラムネうめぇ〜!!」
「は!?一気飲み…??」
「うん。ラムネって少ないから一気に飲んじゃった。」
まだミンミンゼミが鳴くには早い時期に駄菓子屋の前のベンチで2人腰掛ける
でももうそろそろ鳴きそうな気もする
「ねぇ、ユーゴ、ユーゴは最近噂の猫知ってる?」
「ねこ??」
「うん。とある番地で見つけられたからアルバニャンって言うらしいんだけど。」
「え?お前、犬派じゃなかった?」
こいつ自身が犬っぽいし本人も犬が好きだって言うから実は犬の生まれ変わりだったりして。
「いや、オッドアイの猫らしいんだ。めちゃくちゃ可愛くないか…?見てみたい………」
「ほぇ〜〜とある番地ってどこのなんだよ、オッドアイの猫なんて見たことない、本当に存在するのか?」
「でもネットで見たし…いると信じたい」
「そうだなーーあ、そういえばなんか、3年の先輩に人目も何も気にしないでイチャイチャする男同士のカップルがいるらしい」
「へぇ~時代の進歩だなぁ~どんな感じなんだろうな、気になるかも」
「サニーはその、誰か女の人じゃなくてもそういう相手作ったりすんの?」
「んー…じゃあ俺ら…?」
割とガチな感じでこっちみんなよ…………?
「?????は????」
俺ら?おれら?お れ ら?
「はぁっ!?!?!?ちげぇだろ!俺らはそういうんじゃなくて」
「じゃあなんなの?」
なんなんだ、クラスメイト?ともだち?親友?
なんで俺が言わなきゃなんないんだよ!
「いや、まぁ俺らは俺ら……」
「はぐらかした〜別に『友達』とか『親友』とかって別に言いにくくないだろ〜、あ。もしかして『恋人』の方だった?」
「うっせぇ!むずいわ!」
「むずいんだ?」
「はいおわりおわりこの話おわーりー!!!」
そうして残っていたラムネを飲み干した
「ぷはぁ〜!!飲んじゃった」
「ゴミちょうだい、捨ててくる」
「あ。ありがとう」
大きな図体がゆっくりと戻ってくる。
ラムネ瓶からとったビー玉を手の上で転がしながら太陽に当たってキラキラとひかるビー玉を上にかざしてさらに光らせる
「なぁ、サニーは文理、どっちにすんの?」
「はぁ、その話な、俺は多分ルーレットで決めるよ。」
「は!?!?!?!?!?!?!?」
「うるさいうるさいw」
「いや、いくらなんでも適当すぎねぇか…?」
「特殊警察なりたいからさ、別にどっちでもいいんだよね。あと、どっちも興味あるからどっちでもいいって言うのも強い」
いやぁ、なんかなんでもできるやつってマジで羨ましいや……
「そっか〜」
「なになに、悩んでんの?」
「いや別に聞いてみただけ、」
「一緒にしたいの?」
「そう言うわけじゃない」
「また素直じゃないなぁ〜w」
「それはお前にはわかんないだろ〜?」
ラムネも飲み終わってマシンガントークみたいな会話をつらつらと重ねたのに、まだ明るいこの空。この前はこのぐらいで暗かったのにおかしいな。
でもまぁ
「そろそろ帰るか」
無造作に鞄を持ち上げて2人とも立ちあがり帰路に着く
「明日はちゃんと校門通ってこいよ、明日はなんもないから」
「はいはーい」
ーーー
「はぁあああ!?!?ちょお前その話具体的に話せよ」
「はぁ、そのまんまだろ、あのセクハラジジイ先生の前でガム落としてすっ転ばせたんだよ」
とあるお昼休み、久しぶりに晴れていたので屋上でダラダラとしながらご飯を食べていたとき、あ、そういえばと何かを思い出したみたいにこいつは衝撃の出来事を言い出した
「まてまて、は?なんでそんな面白いこと言わないままだったんだよwwww」
「いや別に言うことでもないかなぁって」
「その判断基準意味わかんねぇ〜」
こいつなんかこう言うところあるよな、少し悪い、ガキみたいなところ、まぁでも懲らしめてるからヒーローなのか?
「でもマジあの時のあのセクハラ野郎の間抜けな顔、面白かったわwww」
「お前ってヒーロー目指してんの?」
「ヒーローじゃなくて、特殊警察な。」
「そういうことじゃなくて。」
「あ〜まぁ、そのジジイ先生の間抜け面見たかったからかな〜」
「それ、怒られなかったのか?」
「いやあいつ前は見てたんだけど…それこそ多分女子に夢中で下向いてなくてガムに気づかなくて引っかかったってわけだ。いやぁ〜面白かったなぁwあれを知らない顔でどうしたんですか大丈夫ですか!?って話しかけた時のあの間抜け面ww特等席だったよ」
いや!!!!やっぱりお前はガキだーー!!
ーーー
アア””ーー低気圧はキッツイし、傘は忘れるし、遅刻して来たら今日2限までとかですぐ帰んなきゃ行けないしなんのために来たんだよ、嫌なことばっかじゃねぇか、なんかでもこんくらいなら大丈夫か…?
夏が来たんじゃなかったのかよ、暑いと思ったら雨がザーザー降って、本当にこの時期体調も心も不安定だな…
「傘、入れてほしい?」
「はっ…?サニィィィイー!!」
天使のように見えたよお前が
「ん〜にひひ、じゃあお願いして?サニー様入れてくださいなぁ〜って」
前言撤回。悪魔だよこいつは。
「帰る。」
「あっ、おい待t——」
あいつにあんなふうにお願いするくらいなら濡れてでも帰る!!!一択!!!!
「ぶっっえっっくしょん!!!!!」
風邪ひいた……クソ………
まぁいいや、学校休むのは普通として、ゆっくり過ごそう
学校に今更熱ですって連絡すんのもこう言う時だけ連絡すんなって言われそうだしそのまま無視した、まぁみんないつも通りあいつ休んでんなくらいだろ
“ピロン”
『玄関出て』
サニーからだ、プリントかなんかかな?
いつも手渡しすんのになんでわざわざ
言われたまま玄関を出るとぽつんと家前の通路にプリンとスポーツドリンクが置いてあった
『どうせ熱だろ、俺は移りたくないから、それ俺の奢りだから貸し1ね。』
そうしてアパートの外からサニーがこっちを見ていた
「あ、ありがとう!!!!!!」
『そんなに叫べふなら明日は来れるな😊お大事に😷』
ヘンテコな絵文字をつけてくんのも、誤字すんのもいつものことだ
なんで見透かされてんだよ…かっこわる…
なんであいつあんなかっけえんだよ…素直に傘借りればよかった、でも、あいつが…!!
いや、やめよう普通に嬉しかったしありがとうだって心の底から出たものだし。
プリンのカラメルとスポーツドリンクの味が混ざると見事に美味しくなくて、笑ったことだけ覚えてる
ーーー
はぁ、何度怒っても何度そう言われても何も変わらないってわからないのかな
「だから、遅刻もひっきりなしに休むのもやめなさい。あと、そろそろ校則を守って……………」
俺はこのままでいたい。ルールなんかで、俺を壊したくない。
「お前のためだけに言ってるんじゃない、最近サニーの悪い噂が立ってるんだよ」
「は………?」
「お前を叱る場でサニーのことを言うのはどうかと思うが、ユーゴと一緒に行動してるから夜中までクラブで遊んでるだの、本当は裏で人を殴ったり、非人道的なことをしてるだの。」
「意味わかんねぇ、俺もあいつも人を殴ったことはねぇよ…クラブは…俺だけだ」
「はぁ…わかるよな、サニーは警察官を目指してる。それはお前も知ってることだと思う。そんなやつに悪い噂が立ったらどうなるかも」
「はい。」
そうだった、そうだよね、いや、そうなのかよ
いや、想像もしてなかった出来事にそんな噂なんて本当にたてるやついんのかよって思いながらも先生まで知っていると言うことは相当だろうなって思う
そのことを話すと、サニーは神妙そうに少し顔をしかめて、
「俺は、俺が消えるのが嫌だし、でもお前とそれのせいで一緒に遊んだりするのがなく何のは嫌だ。」
「俺は、俺の意見を言わせてほしい。」
そういわれて、覚悟していたことだけど、サニーに真っ向から反対の意見を言われるとなるとちょっとくるなぁってそう思って。少しうろたえる
「あのなぁ、ただ校則を破ればいいって問題じゃねぇの、校則は破らずに悪いことすんのが楽しいんだろ?俺は堅物でもなんでもねぇよ、お前みたいに校則を破るやつでもない。」
そうしてにやりと口角をあげて、なんだその顔
「は…??」
「うん。」
「は……???」
今まで、少しガキっぽいなぁとか思ったところも、そういうこと…??
「う~~んと…えっと、そういうことだ。気づかないようにやるのが楽しいじゃん。やっぱ。人の間抜け面大好きだからさ。」
その数日後、大好きなDJのクラブにまた向かった。好きなものは好きだし、好きなものは変えられない。
「今日も最高でした!!!あの…少し、お話ししたいんですけど」
サニーのことを話しながら、少し自分の考えも混ぜながら、
「何が本当に守りたいものが、貫きたいものができる時、その時までルールは守っていればいい。大人しく、あくまでもそこら辺の人みたいに。でも本当にやりたいことがある時、何か信念を持った時、クソみたいなルールを取っ払っちまえばいいんだ。今の世の中、否が応でも見た目が始めに視覚的に入ることが多い。学生でそんな格好なんて注目の的だ。あと、そのお前の大切なやつも自分なりに守ってやれ。出来不出来は関係ない、きっと何かお前にしてもらったってことが喜んでもらえると思う。」
格言みたいな言葉をもらって、なんだか自分が今凝っているものってすごくもしかしてしょうもないのかも、自分らしさってなんだ。
俺が表現したい俺ってなんだ?
「はぁ、ちょっとだけ校則守ってみるか…」
まだ俺にはなぜ大衆が校則、ルールに縛られて生きているのかは全くわからない。
でも、だからこそわかってみたいと少し思った。
『サニー、○○日は俺の更生日だ!!』
一番に報告したのはもちろんあいつに。
ーーー
ピアスを穴に通してキャッチをつけようとするもブルブルと手が震えて、うまく入らない
人は変わろうとする時が1番受け入れられるか受け入れられないか、それが1番怖い
変わってしまったら、今までの俺じゃなくなったらファンもどんなやつもいなくなっちゃうんじゃないかって、でも、サニーがいればいいかってそう思う自分もいた。あいつさえいれば、生きていける気がした。
でもそんな甘えにもいつまで頼っていられるか分からない。いつかはきっと別の道を行くだろうから。
「はっ、情けねーな俺」
「ほんとお前そのピアス好きだよな」
「は!?!?サニー…?!」
「おう、今日から更生するって言ってたから早起きしてんのかなぁって家まで来たら空いてたから入ったわ」
「不法侵入すぎるだろ…!」
「ん!」
そうしてサニーは手を差し出す
何が何だか分からなかったのでその手に手を置く
「は?何してんのお前w」
「え?」
「キャッチ、貸せよ、俺がつけてやるから」
「はぁあああ!?」
そんなんわかるかよ…急に手だけ差し出してきやがって…
「あ、ユーゴばぶちゃん、おてて繋いでて欲しいならちょっと待っててくだちゃいね〜!キャッチだけつけちゃいまちゅね〜!」
「うるせぇ!!!」
そうして、左に向き直って耳たぶを掴むサニーの手は暖かくて、自分の手よりも何倍も温かくて少し緊張する
「なーに、なんか緊張してんの?」
「ちげぇぇーーし!」
あからさまに少し赤くなっているのが鏡でわかる
「よし、できた!てか本当にそれ気に入ってんのな」
「あ、ありがとう…。このピアス、お前とお揃いだろ、お前はつけてないけど…」
「知ってる、誰がつけてないって言ったんだよ」
「どう考えてもつけてねぇじゃねぇか!」
サニーの身体を上から下まで見回すもお揃いで買ったピアスは見当たらない
「はぁ……」
そうしてきっちりと整えられていたブレザーの制服のシャツをひらりと捲る
嫌なほど鍛えられた筋肉に圧倒されながらも顕になった身体をまじまじと見ると
「あ……」
「ヘソピアスだ、にひひっ」
悪い顔を浮かべて大きな口の角を上げる
「お前、俺よりよっぽど悪いじゃねぇかよ…」
「だから言ったろ、校則は破らずに楽しいことすんのが楽しいじゃん、てか耳はダメだったろピアス」
「耳は、ってヘソもダメだろ…だからこれ以外外したんだってば!」
「はは〜ん、これだけは外せないってか?おもしれぇ〜〜」
「お前だってそんな取りにくそうなところにつけるじゃん、」
「はいはい気にしない気にしない、サニーくんとのお揃い『だけ』は外せないんです〜てんてぇ〜!!でも言っとけば大丈夫だよ」
「馬鹿にしてんだろ…w」
「笑ったからチャラな、ほらさっさと荷物持てよ、行くぞ」
初めて朝早く起きてこいつと登校してるのが本当になんだか大切なひとときに感じれて、大人になったらこんなことなくなるのかなって思ったら寂しくなったりもした。
終わりをすぐに考えるのはやめよう
今はサニーのおかげでこんな大切な時間に気づけたから。
「あ、でもサニー、水泳の時どうすんの?」
「しらね~~まぁ、そんなジロジロ見るやついないだろ、それにプール入っちまえば同じ」
「身長180センチ、筋肉バリバリがたいいいやつが何言ってんだか…目立つにきまってるだろ」
「どうってことないよ。俺がここにつけたいって思ったからつけただけだし。ここだったら、仕事の時も学校の時も外さなくて済むだろ?」
「そういう理由?!?!やっぱお前俺のこと大好きじゃん!!」
「まったくもってブーメランなんだけど??お前のほうが俺のことたぁぁっっくさん好きだろ?かわいいかわいい」
「おおぉい?!かわいいじゃない、お前身長を利用して頭撫でてくんなって!!」
不良はいったいどっちなんだよ。俺なのか?お前なのか?俺らなのか?
まぁどうでもいいか。
夏が始まってもきっとこいつとだらだらしながら生きていくんだろうなぁって。それもまた楽しそうだなぁと思ったことは絶対こいつにだけには悟られたくない。