冷凍みかん「うっわ!冷たっ!!!!」
急に自分の知らない感覚に襲われて咄嗟に声が出る
「サニーィイブリスコォオー!!」
「ははっ、冷凍みかんだ」
俺がこういう反応をするってわかってるよっていう余裕綽々な笑い方をして少し腹が立つ
「お?くれんの?それはサンキュー」
「さぁな、それはどうだか」
そうして頬の横にあった冷凍みかんをギューっとさらに俺の頬に押し付けてくる
「つめた、つめた!!!!」
「それにしてもあっついよなぁ〜」
そうして次の話題にさっさと移り冷凍みかんを机の上に置く。
それを無造作に俺は剥き始めた
「あっつくなるのが夏だろ」
「ほうか?(そうか?)」
いつのまにかサニーも冷凍みかんを頬張っている
「あっつい夏、俺は好きだ」
「そりゃあいいことだよ、制服が暑くてたまんないんだよね」
そうか、俺の服に比べるとサニーの服は幾許か暑そうだ
「そういえば前海行くってみんなで話してたよな」
ぎくっと自分の背中が反応する
「あ”〜〜〜」
「なぁ、なんでお前がそんなに乗り気じゃないか教えてくれないか」
「いや、暑いじゃん?!やっぱり…!!」
「さっきと言ってること真逆だが。」
別に、行ってもいいんだけど…いいんだけど…いや、やっぱり良くない!俺のポリシーに反する!
だって
ふーちゃん(←絶対サイボーグだからガタイ良さそう、そもそも機械が腕にある時点でゴツそう)
ウキ(←同じくらいの身長のくせにいつもの態度とかこの前フワッと身体を触った時のガタイの良さ…あれは絶対隠れ筋肉…)
アルバーン(←アルバニャンのくせに背も高いし、怪盗とか職業にしてるくらいだから筋肉絶対ある)
サニー(←こいつはいわずもがな)
そうして自分の視線を下に落とすと、スゥーっとゴツゴツした筋肉がなく手が通り過ぎていく
「アアアアアアア”””!!!やっぱりだめだ!ダメだ!」
「変なの〜、夏が好きなやつとか、夏といえば海!とか言いそうなのに」
「べっつに!夏が好きなわけじゃないし!」
ダラダラと汗が垂れてくる
これは冷や汗なのかそれともただのこの暑い夏のせいなのか。
だっっってこいつにバレたらぜっっってぇ馬鹿にされる!!
「ふ〜ん、じゃあ4人で行ってくるかなぁ〜?」
「ぐぐ、」
「あ!もしかして泳げないとか?」
「は?そういうことじゃない!!!別に泳げないとかそういうことじゃないし!海は泳がなくても楽しめるじゃん!」
あ、やべ自分で、墓穴、掘った
「なおさらわかんねぇよお前」
ふ〜ん、と気にせずに次はスマホをいじり出した
「まぁ、別に海じゃなくてもいいかもな。温泉旅行とか!みんなでいい感じの旅館とかに泊まってみたいなぁ〜!!」
ブツブツとアルバーンの浴衣姿だの、部屋割りはどうだのと呟く。おい、なんでこいつは裸になるようなところに行きたがるんだ……
「温泉は1人で入った方が楽しいだろ…」
「はぁ、お前マジでどこも行きたくないんだな」
そう言ってしゅんとした顔をする
「そういうことじゃなくて…じゃあ、山!山の方がいいじゃん!」
「DJが山行きたいとか言うの新時代だな面白い」
「いや、まぁ、山……」
確かに山よりは海の方が好きだし、別にみんなと出かけたくないわけじゃないし、むしろ出かけたい。
「はは〜んわかったぞ、お ま え」
そうして「トン」とお腹を突かれる
「気になるんだよなぁ〜?貧相 な の が」
一気に顔の体温が上がり、真っ赤に染まるのがわかる。
ううううううぅ
「うっっるさい!!お前それみんなに言ったら絶対呪うからな!!」
「ははっ!お前そんなこと気にしてんのかよ!おもしれぇ〜!」
「気にするだろ!いやでもお前らと並ぶんだから…」
「はぁ…誰も気にしてねぇよ…」
「俺が気にするんだよ!!」
「はいはいそうですねぇ?なぁ、、変なところで意地張ってないで楽しめればいいじゃん、それに身体のこととか、最初だけだろ、お前が気にしてるようなことわざわざ突っつくメンツでもないのに。」
純粋だ、お前は濁ってないよ
「そうだけど…」
「俺は好きだけどなぁ〜このまっさらな お な か、可愛くていいじゃん」
そうして、もう一度「トン」とお腹をつつく
「ちょ、近いって!」
「でも、お前のせいでみんなどこも行かなかったらそれもそれで嫌だろ?な?お前が筋肉がないってことを気にしてたってことを黙っておけばみんななんも言わないよ、そうだろ?」
そうしていつもは俺より上にいるやつが下から見上げてきて、そのなんともいえない風景に新鮮味を感じる。
ーー
「俺はお前がそんなこと気にしてたってこと自体が面白いからもういいやww」
いっつもみんな気にしてないようなところで妙に神経張って、結局、みんな気にしていないって、そうなった瞬間、ユーゴ自身が恥ずかしくなってるのを何度も見た、あ〜またこいつ気にしてんなって気づいて、それでどうなったのかな、って本人を見るとしょうもないことだったんだって気づいてて、ほんとお前といて楽しいよ
でもたまに変なところで突っ張るから、頑張らなくていい時は頑張らなくていいのに。休みなんだから気軽に休めばいいのに。そんなに心を許してくれてないのかな?って気分にもなるんだ。
そんなの、俺は嫌だから、その部分だけ少しずつ少しずつ、ぎちぎちに縫われた糸を解くなんて比喩、不器用な俺には全く似合わないけど、なんなら、そんなのどっかやっちまえよ!って銃で撃つスタイルの俺だから。
でもそんな俺を少しずつ許してくれてまた新しい顔を見せてくれればそれでいいってなんとなくわかったんだ、
「ああーー!!!お前!せっかく冷凍したみかんが溶けてんじゃねぇかよ!!」
そうサニーに言われて机の上の剥いたみかんに目をやるといつのまにかみかんの氷が溶けていた
「あ?あああああ!?ベタベタ垂れて服に水が!!」
「まてまてまて!!!立ち上がるな!立ち上がったらソファーが濡れるだろ!?俺がタオル持ってくるから!!」
「乾くからいいじゃん?」
「お前のソファーじゃねぇんだぞ!おいマジで立ち上がんなよ?」
そうしてサニーはタオルを持ってくる
「はい」
「サンキュー」
「じゃあ、これで借り1だからとりあえず海は決定だな!」
「借りもなにも、そんなふうに言われたら行くに決まってるよ、それにみんなと、遊びたいし」
「わざわざ借りにしとけばいいものを…ま!お前の気が変わってくれて嬉しいよ!これで、アルバーンの浴衣姿が…!!」
「お前ほんとそればっかりだな〜!」
氷が溶けたみかんはまだ、冷たさを帯び、酸っぱいながら甘さを拵えていて、ゆっくりと俺の喉元を通っていった。これが、甘酸っぱいっていうやつか。