俗世に興味を持った兄と被害にあったマスター「お前は俺との情交に満足はしてるのか」
「ごほっ?!」
お気に入りのマグカップに暖かいミルクが口に入ると同時にカストロの発言に立香は酷く噎せた。
「おい、汚いぞ」
「ごほっ、ごめん…いや、カストロのせいだよね」
噎せてる自分を、品が無いと言いたげに眉を寄せて見てるカストロに、こんな事になったのはカストロのせいだ!と咳き込んでまともに話せないので涙目になった瞳で睨みつけた。
「俺のせいでは無い。ただ問い質しただけた」
「げほっげほっ…その内容でびっくりしたの」
「驚く程か。幾度に我らは交じりあったではないか」
「今度は言い方!」
顔が熟した林檎の様に再び真っ赤に染めて声を上げる立香に、カストロは何故そんなに少年が羞恥心を顕にしてるのかと更に眉をひそめる。
「お前は初心が過ぎる。いい加減慣れろ」
未だに初すぎる幼い恋人にカストロは小さく息を吐く、立香も気持ちを切り替える為に態とらしく咳払いをする。
「いきなりそんな質問してどうしたの。誰かに何か言われた?」
「いや…」
視線を合わせない様に避けて言葉が続かないカストロを見た立香はやっぱりと小さく息を吐く。
嘘をつく時、言われて図星をつかれた時に出る癖は立香にとって貴重な彼に心が許されているサインで同時に胸がじわじわと暖かくなっていった。
「ほら、言ってよ。俺、カストロの気持ち知りたいな」
「…お前と会う前にイアソンに会った」
「ん…?うん」
カストロが語ったのは、立香のルームに行く途中でイアソンと出会ったということだ。
カストロを見つけるなりにやにやと近づいて来た船長に、座に返そうと腕を上げるがそれより先に胸元に紙袋が抑えられていた。
「これやるよ」
「いらん」
「そう言うなって!これ読んでマスター満足させろよ」
「は?」
そのまま紙袋を押し付けたままイアソンはそのまま立ち去った。
そのままゴミへと押し込めたかったが立香との時間が減ると思いそのまま紙袋を持ってきたとの事だった。
「それでその…え、えっちと何関係でもあるの?」
「お前が来る前に捲ってみたがどうやら趣向が変わった性交の書籍ようでな」
「え、怖っ…ってよく怒らなかったね」
「座に返してやろうかと思ったがお前を満足させてないと言われて…」
「怒らずに読んじゃったって事…?」
「ふん」
「か、可愛い…」
「貴様…ポルクスの方が」
「うんうん、ポルクスも可愛い。ちなみにどんな本なの?」
「はぁ…これだ」
「どれどれ…えっ、」
「阿呆な顔をしてどうした」
「ちょ、これほんとにエッチな雑誌じゃん!」
指を指して叫ぶ先の紙袋の中身は数冊のアダルト系雑誌が入っていたのだ。
カルデアに入る前には世話になった物だが今では恋人も居るし、何より立香の自室でも常にサーヴァント達が居座ったりとしているのであっても使い道がない書物だった。
(処理に困ってカストロに押し付けたんだな…イアソンのヤツ!)
後で告げ口してやる。と意気込んでいると自分の名が呼ばれてはっとカストロに気づく。
「このえすえむぷれい、とやらをやってみるか?」
「やらないけどてか色んな特集雑誌の中からそれを選ぶの?」
空いた口が塞がらないままカストロを凝視していた。その反応に何か間違っていたのか?と困惑した表情で見返していた。
「その…これ意味か分かる?」
「知らん」
「せ、聖杯に聞く?」
「お前に関しては聞きたくない」
か、可愛い。
立香は無意識に自身の胸元を手で押さえつけた。神である恋人のふとした可愛さに静かに悶えていると、声が掛かる。
「立香」
「な、何?」
「お前が紙袋の中覗いた瞬間、それが最初に目に付いて眺めていただろ」
「それは」
ごくりと唾液を咀嚼する。
実は見た瞬間にかなり興味を持った文字だったのをバレていた。
カストロとのセックスは普段の彼を知っている者ではありえないぐらい優しく、常に立香の様子や雰囲気で立香を乱す。それでも偶に物足りなく感じてしまうのにこんな未知の領域のセックスを恋人とするなんて今の立香では想像がつかなかった。
「立香」
もごもごと言葉を口の中で動かしていると手に暖かいものが触れるのを感じた。
「カストロ?」
「望みを言葉で示せ、貴様のくだらない我慢は俺がいる時だけはやめろ」
暖かい感触はカストロの掌だった。触れていた手が軈て立香の手を握り、寂しげな瞳を滲ませたままそのまま立香を待った。
「カストロ」
自分でも分かる期待した声音、それに合わせて頬が赤く染った顔をカストロへと向ける。
「なんだ」
「カストロがよければし、してみたいです」
「ふん、えすえむの方だな」
「だから言わないでよ!」
叫ぶ少年に遂にカストロは腹を抱えて笑いだした。また羞恥心で顔が下がる立香に笑いながらも目元を緩ませる。