不意打ち時々、気まぐれのち、本命。 優しい音色を刻む目覚まし時計を止め、眩しい朝日から逃れるように布団を引き上げる。ふかふかのベッドはキングサイズで、首が痛くならない枕は特注品だったか。滑らかなシーツは肌触りが良く、起きるのが億劫になってしまう。あと少しだけ――そう言い聞かせて寝入ろうとすれば、おもむろに扉が開いた。
ペタペタと足音を鳴らしながら、近付いて来る人の気配。誰か、なんて確認するまでもない。ぎしりとマットレスが沈み、「憂太」と呼ぶ声は低く穏やかだ。僅かな呪力の変化に気付いて、起こしに来たのだろう。そうとなれば寝た振りが通用するわけもなく、横になったまま渋々顔を出す。
アイマスクやサングラスで隠れていない瞳は、いつも通り澄んだ青空のように綺麗だ。そんな呪術師たちが忌み嫌う六眼を、恐れることなく直視してムッと尖らせた唇。「まだ寝れました」と駄々を捏ねれば、「朝ご飯が食べられなくなるでしょ」と正論を突き付けられて口を噤む。年上で一枚も二枚も上手な五条を、言い包めるなど至難の業か。
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