とあるカフェダイニングにて スクイザーで念入りに絞り水気を切ったモップで、丁寧に床を拭く。ゴミの落ちているところはないか、汚れているところはないか、テーブルの影、椅子の下、隅から隅まで、一つ一つ、丹念に。
まだロールカーテンを開けていない、通りに面した大きな窓や『Close』の札がかけられている入口のガラス扉からは、温かな陽の光が僅かに差し込んでいる。時折間近を通る人のシルエットは誰しもが急ぎ足だが、朝の通勤時間帯ほどではない。
そろそろ、開店の時間が近づいている。
最後の仕上げにとあちらこちらへ目を配りながら手を動かすが、昨日の閉店後の確認担当も自分であったため、大きな乱れや問題は見当たらない。しかし清潔にしておくに越したことはなく、この業界において、その点の第一印象は非常に重要だ。
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