埋まらない距離 放課後の教室に男が二人。
机に突っ伏しているところに面堂がやってきて、近くにあった椅子をガタガタと引き寄せて座る。
「――ところで諸星。お前は、金さえもらえればお前は男とでもするのか」
至極真面目な顔で突拍子もないことを聞きやがる。
まともに答えてやる義理はないので、瞼を閉じたまま「いくらくれんの」と尋ねた。
「…ということは、するんだな」
予想不能な思考回路は、予想だにしない回答を導いたらしい。邪魔したな。やけに神妙な顔で去ろうとする面堂の腕を思わず掴んだ。
「おい待て面堂。俺は、する、とは言っとらん。いくらくれるんだ、と聞いとるんだ」
「それは、する、という意味ではないのか?」
「ええい、違う。だから、つまり、お前はいくらくれるんだ、と聞いとる」
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