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    _akihc

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    主に刀さにが昂った時に投げます。

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    フォロワーさんのつぶやきから思いついた則さに小話です

    #刀剣乱舞
    swordDance
    #一文字則宗
    oneText
    #女審神者
    femaleInquisitors
    #則さに
    inAccordanceWith

    主と一日デート権『主と一日デート権』

    そう、縦書きの墨で書かれた紙1枚が、一文字則宗の手に乗っていた。
    昨晩この本丸の刀剣男士達で開いた宴に参加した際、プレゼント交換会なるものが催された。その結果、則宗の手元に渡ってきたのがこの紙であった。
    ちなみに、主はこの宴会には参加していない。この紙を持ってきたのは、許可は得て来たと楽しげに話す鶴丸国永だ。
    会が散じて皆がぼちぼちと部屋へ引き取るなか、「一文字の御前に渡るとは、お前さんもなかなか"持ってる"な」と鶴丸に言われた。
    そう、則宗本人も特に隠していないが、彼は主であるこの本丸の女審神者を特別に想っているのだった。

    デート。
    則宗は縁側に腰掛け、さてどうしたものかと考える。何しろ彼が惚れている審神者という女は恋愛に対して鈍感…というか特殊な感性を持っている。
    きっとこの権利だって、鶴丸に提案されて軽い気持ちで了承したのだろう。自分に懸想する者がいるなどと、きっと考えもしていないのだ。

    「あ、則宗さん」
    その主の声がして、則宗は紙を懐にしまいながら振り返った。
    「主。おはよう」
    「おはようございます。朝食前に座り込んで、どうしました?二日酔いですか?お水もらってきます?」
    「いや大丈夫だ。そこまで深酒はしていないさ」
    「なら良かった。ちなみに清光は…」
    「新撰組の連中は相当飲んでいたからな。昼前まで寝ているんじゃないか?」
    「やっぱり。仕方ないな」
    初めてのことではないのだろう、審神者は心得た様子で苦笑する。
    「坊主に何か用事かい?」
    「新しい爪紅が欲しいって言ってたので、次の買い出しにお供してもらおうと思って。急ぎじゃないので後にしようかな」
    「そうかい。…そうだ。急がないなら、ちょっと座らないか?」
    則宗は扇子で右隣を指す。審神者は首を傾げながらも、言われた通りに腰を下ろした。
    隣に座った審神者からは、いつもと同じフリージアがわずかに香る。近づいた者だけが気づけるこの香りを、則宗は気に入っていた。

    「主、僕とデートするなら何がしたい?」
    直球の質問に、審神者は目を瞬かせる。
    ややあって、「ああ」と頷いた。
    「鶴丸さんのアレですか?」
    「そう。見事にこの僕が引き当てたっていうわけだ。いやあよかったよかった。他の連中に渡っちゃ困るからな!うははは」
    「そんな大した景品でもないと思いますけど」
    やはりと言うか、審神者は己自身が景品になることを軽く考えているようであった。
    「そんなことはないさ。大事な主の時間を頂くんだ。お互い満足したいじゃないか。何かないのかい?」
    「そうですね…お花見はもう皆で計画を立ててますし、山登りには早いし…」
    顎に手を当てて、彼女は考えこむ。
    「あ」
    「何か思いついたかい?」
    「……なんでも、いいですか?」
    どこか躊躇いがちに問う審神者に、今度は則宗が目を瞬かせる。
    「もちろん。言ってみなさい」
    さて、どんな答えが返ってくるか。この娘は時々突拍子もないことをしでかすが、それもまた一興。
    「水族館」
    「……ん?」
    「水族館に、行ってみたいです。…則宗さんと」
    「それが、僕とデートでしたいことかい?」
    「はい。嫌でなければ」
    「嫌なもんか。この僕が一日でも二日でもご一緒しようじゃないか!しかし…そんなに躊躇うような事かい?」
    水族館という場所に何か特別なものでもあるのか。心当たりのない彼に対して、審神者はどこかそわそわした様子だ。心なしか、頬も赤いように見えるのは則宗の心のフィルターのせいであろうか。
    「古い本を……いえ、とにかく水族館です!どこの水族館かは、お任せしますね。それじゃ」
    「あ、おい主」
    審神者はさっさと立ち上がり、軽く会釈して執務室の方へと立ち去ってしまう。

    則宗は扇子の先を顎に当てると、揺れる審神者の髪を目で追いながら、ふむ、と息をついた。
    「水族館、ねえ……どれ、どこか面白い所があるか、見てみるとするかな」
    何にせよ、ふだん願いごとの少ない審神者の希望を聞けた事は幸いだ。共に行って、彼女のどんな表情を引き出してやろうか。
    則宗はそんな風に考えながら、酒の残る身体をしばしそよ風に当てるのだった。


    まさか、これに気づくことはないであろう。
    端末の画面には、古い古い本の表紙と、タイトルが表示されている。
    気づかないで。
    気づいて欲しい。
    相反する思いは、あの美しいひとと接していると、いつだってかわるがわるやってくる。

    審神者は画面のタイトルを指でなぞると、その流れのままアプリを切り、気持ちを切り替えた。


    『水族館行こ ミーンズ I LOVE YOU』
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