-26.7の輝き東の地平線が白み始めた。荒野の朝は遮蔽物のないぶん、一秒も遅れることなくやってくる。振り返れば西の国ではまだ鶏だって目覚めていない闇が広がっているのに、俺たちには朝がやってきて彼らにはまだない。朝日のスピードは時速何キロなのだろう。少なくとも休暇に乗せてもらうシボレーアバランチよりも速いのは確かだった。
世界の片隅からじわじわと夜を飲み込んでいく朝日はオセロを彷彿とさせた。盤上の夜は強烈に差し込む白い光線に次々とひっくり返される。ただ、あちらはゲームでこちらは現実という点だけが違った。
夜明けは作戦開始の合図だった。俺たちは太陽を背に、まるでその光線の一部かのように戦場へと駆け出し、敵を殲滅する。ほんの一時間も経てば折り重なった死体の山があちこちに形成されることだろう。そのおぞましい山の一部とならぬよう、今日も死に物狂いで生き延びなければならない。明け方の底冷えする風に震えそうになる体を押さえつけ、スコープを除き上官の指示に従い引き金を引いた。
太陽は開戦の狼煙。そして強者の象徴だった。
――と思っていたことを、不意に思い出した。
安寧の夜闇の世界を無理やり暴いて朝にする陽光の暴力的なまでの強さが殿下に似ている。
玲明学園での合同ライブの視察。視察対象はEve、というよりも突然殿下が引き抜いてきた漣ジュンとかいう男の方だったが、ついつい殿下に視線を惹きつけられる。自ら発光しているかのような眩しさ。溌剌とした表情。人々に熱狂を届け虜にする求心力。殿下は太陽のような男だ。
それに比べて闇夜に光る星々のなんと儚いことか。太陽を前に六等星など相手にもならない。夜は暴かれ、盤上は白一色に染まる。白熱光線が地上を焼き尽くし、あとに残るのは強烈な光の記憶のみ。
敗北していくアイドルを横目に、万人を惹きつけてやまない殿下のアイドルとしての有能さに体が震え、笑いが溢れた。
恐ろしい太陽も、我が手にあればこそ。