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    あまや

    ⚠️閲覧ありがとうございます。こちらは店じまいして、ベッターへ移行予定です。ゆるゆる作業進めるのでもうしばらくお付き合いいただけると幸いです

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    あまや

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    SSS/あだむ
    寒い時期のコンビニは誘惑がたくさん

    ##CPなし

    「それから肉まんを一つ」「……ねえ茨」
    「ダメです」
    「……まだ何も言ってないよ」
    コンビニのレジ列に並んでいると閣下が俺の裾をくいと引いた。着いてこなくていいと言ってもきかない人なのでさっさと必要なものを購入して店を出ようと思っていたのだが、思ったより店内が混んでいてレジで足止めをくってしまった。
    「どうせそのケースの肉まん食べてみたいとかでしょう、ダメです」
    レジ横にある肉まん30円引きとでかでか貼られたケースを指して答えれば図星だったのかぴくりと閣下の眉毛が動いた。表情が変わらないからわかりにくいだろうけれど、その顔をよく観察すると感情のいろいろなヒントが隠れている。
    「……おでんかもしれないよ」
    「おでんでもダメです」
    「どうして? こんにゃくならカロリーないよ」
    「こんにゃくだけじゃすまないでしょう。昼に殿下とケーキも食べたんですからこれ以上の間食は認められません」
    それにコンビニおでんの鍋にはふたが付いておらず具が剥き出しで不衛生だ。店員の目の前で不衛生だなどとのたまって威力業務妨害だと言われても困るので決して口にすることはないが、本音はそちらだった。だいたい、最近は演技をしていない地の閣下で売り出しているとはいえ、Adamのイメージにコンビニおでんはそぐわないだろう。イメージ戦略は大切なのだ。
    「どうしてもだめ?」
    「ダメです」
    「私、明日死んじゃったらおでん食べられなかったこと後悔しながら死ぬことになっちゃうよ」
    「自分が死なせないので心配ありません」
    「明日の撮影中あの肉まん美味しそうだったなって涎垂らしてるかも」
    「……拭いて差し上げます。ていうかやっぱり肉まんなんじゃないですか」
    レジの列がまた一歩進む。あと一人でこの問答もおしまいだ。さっさと会計して退店しよう。
    「ほら、大根美味しそう。すごく染みているよ」
    「って何してくれちゃってんですか! 買わなきゃいけなくなるじゃないですか!」
    「一度手をつけたものを戻すのはルール違反だものね」
    俺が列から動けないのをいいことに閣下は俺より一歩先に進んでおでん鍋の前に移動した。そのうえ容器を手に取り一番端の大根をトングで摘み上げている。間違いなく確信犯だ。明日の撮影で使えそうなくらいとてもいい顔をしている。閣下は最近ちっとも俺のいうことを聞いてくれないし、あまつこういう小技を使うようになってきた。そんなに食べたかったのか。いや、味にも興味があるだろうが、コンビニでおでんを購入するという体験がしてみたかったのだろう。それはわかるが勝手をされては困る。
    「とっても美味しそうだね、茨」
    「〜〜もう閣下は連れてきません!」
    「……じゃあジュンにお願いしようかな」
    「閣下!」
    俺のお小言などどこ吹く風の閣下が満面の笑みでおでんの具を物色している。こうなればもはや俺に打つ手はなく、身バレしないうちにすばやく会計を済ませ車に戻るしかない。その支払いに、閣下が選んだおでんももちろん含まれている。
    俺は深い深いため息をついた。閣下のお戯れに対するため息であり、ケーキとおでんを加味して夕飯を決め直さねばならない労力へのため息であり、なんだかんだ閣下が楽しそうだからいいかと絆されている自分へのため息であった。

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    あまや

    TRAINING習作/凪茨(主人公ジュン、下二人メイン)
    ⚠︎パラレル。アイドルしてません
    三人称の練習兼、夏っぽいネタ(ホラー)(詐欺)

    登場人物
    ジュン…幽霊が見える。怖がり
    茨…ジュンの友達。見えない。人外に好かれやすい
    おひいさん…ジュンの知り合い。祓う力がある(※今回は出てきません)
    閣下…茨の保護者
    三連休明けの学校ほど億劫なものはない。期末テストも終わりあとは終業式を残すのみではあるのだが、その数日さえ惜しいほど休暇を待ち遠しく思うのは高校生なら皆そうだろう。ジュンはそんなことを思いながら今日もじりじりと肌を焼く太陽の下、自転車で通学路を進んでいた。休みになれば早起きも、この茹だるような暑さからも解放される。これほど喜ばしいことはない。
    「はよざいまーす」
    所定の駐輪場に止め校舎へ向かっていると、目の前によく知った背中が現れた。ぽん、と肩を叩き彼の顔を覗き込むとそれは三連休の前に見た七種茨の顔とはすっかり変わっていた。
    「ひええ!?」
    「ひとの顔を見てそうそう失礼な人ですね」
    不機嫌そうな声と共にジュンを振り返ったのはおそらく七種茨であろう人物だった。特徴的な髪色と同じくらいの背丈からまず間違いなくそうだろうと思い声をかけたのだから、振り返った顔はジュンのよく知るメガネをかけた、男にしては少し可愛げのある顔のはずだった。が、見えなかったのだ。間違った文字をボールペンでぐるぐると消すように、茨の顔は黒い線でぐるぐる塗りつぶされていた。
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