「茨は、この世界で何者でもなかった私に役割を与えてくれたんだ」
茨といるのが楽しい。
茨の一挙手一投足に秘められた謎を解き明かそうとするたびに知らない感情と出会って、自分がどんな形をしているのか発見できる。茨の大事にしているものを知れば、では私はどうかな、と自分と向き合うきっかけになった。茨の可愛い悪巧みを読み解こうとすれば、私は何を許し何を許容できないのか線引きすることができた。楽しそうに打ち込む茨の姿を見れば、私も何かやってみよう、私なら何をしたいと思うだろうかと考えるようになった。
「それはなあに?」
「……茨のお目付役」
「間違いないね!」
茨が何かアクションを起こすたびに知らない私が引き出されて、少しずつ私は私を理解することができた。茨が仕事や他のアイドルにばかりかまけて放っておかれると、寂しいと思う自分がいることを知った。茨が私の髪の毛を黙々と編んでストレス解消している時間を意外と心地よく思う自分がいることも分かった。
存在すら感知していなかった一面が提示され、パズルのピースがはまるように、あるいは真っ白いキャンバスが彩られるように、「乱凪砂」が完成に近づいていった。
でも、単純な話、
「君の隣で歌い踊っている時間が一番楽しいな」