さっきまで治療していた竜の鳴き声が、満足そうに尾を振る音に変わっていた。
やれやれ、と息をついて、イファは潮の香りを含んだ風に顔を向ける。
夕方だが日が延びていて、町全体がまだ明るくゆったりとした時間が流れている。
「イファ?」
聞き覚えのある声に振り返ると、籠を提げたオロルンが立っていた。
「よう、きょうだい!」
甲高い声がして、イファの背後からもふもふの羽を揺らしながら、カクークが顔を出す。
「おまえ……なんでここに?」
「流泉の衆の宿に頼まれて、野菜の配達をしてたんだ。君は?」
「海際のコホラ竜の調子が悪くて診てた。もう、だいぶ落ち着いたよ」
ふっとイファが笑むと、オロルンも自然と頬をほころばせる。
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