眠るねことすん。ランチを味わっていた昼の屋上で、突然右肩に類の頭が乗ってきた。先ほどまで夢中でまた何かしらの装置になるパーツを組み立てていたのだが、どうやら眠ってしまったらしい。
このままでは食べづらいので、一旦弁当箱を閉じる。類の身体を抱き込んでから、ゆっくりとオレの膝の上へと頭を下ろし、所謂膝枕になる状態で再び寝かせてやった。
これなら類のことを落としてしまわずにすむし、ランチも気にせず食べれる体勢だ。オレはしっかりと寝かせられたことに満足して、弁当箱を再び開き中のプチトマトをつまんだ。
「御馳走様でした」
しっかりと手を合わせ、この弁当が出来上がった過程で関わったすべての人々や食材たちに感謝を唱える。今日も母さんの作ってくれたランチは大変美味しかった。余り物の詰め合わせだけれどね。なんていうが、オレたち家族にとっては食べられること自体が有難いことだ。
一息着いて膝の上にのせていた類を覗く。まだぐっすりと寝ているようだった。かかった髪の毛をよけてやって、整った顔つきをじっくりと観察する。顔をよく見るとアイラインの入った目の下は、濃い隈があった。すやすやと眠るちからの抜けた幼げな顔の目元をいたわるようになぞって、次の授業までゆっくり眠ればいいと声にださずに言った。
屋上にきたときから居座っていたので、今回の作業をずっと寝ずにあまつさえ授業もサボって行っていたらしい。全く、楽しいからとはしゃいで頑張ってくれるのは嬉しいし、そういうところが好きだが、他のことをないがしろにしてしまうのはいかがなものか。類の悪い癖だった。
風が吹きせっかく整えてやった髪がまた顔へと散らばる。もう一度刺激をしないように綺麗に整えてやっていれば、耳のあたりをくすぐってしまったらしい。うーんと唸りながら身体を丸めて顔をよじる。
しまった、邪魔をしたか。起こしてしまっただろうかとドキドキと見つめていると、なんとオレの膝に頬を擦り付けてきたではないか。予想していなかった行動に思わず食い入るように見ていれば、類がふにゃりと笑う。むにゃむにゃと唇を擦り合わせて、フフフ……と柔らかく声をもらすその姿に、衝撃が走った。
可愛い。直感的にそう思った。たまらずにもう一度、今度は頬を撫でてやる。
するとその手のひらに撫でた頬を押し付けてくるではないか!
まるで猫のようなその仕草にオレはすっかりと類が寝ていることを忘れていた。ゆっくりと優しく頭を何度も撫でてやれば、嬉しそうに頭を差し出してくる姿に完全にやられていたのだ。
それはもう夢中になって頭や頬はもちろん。耳裏から後頭部も毛を流すようにかき撫でた。そうしてゴロゴロと喉をならすのが聞こえてきそうな、脱力した全身の様子にオレの気分のボルテージが最高潮へと達して、顎下へ指を滑らせた時だった。
「あの……つかさくん…………」
いつのまにか目を開けた類が、顔を真っ赤にして見上げてきている。
オレはその事実に固まり、同じ様に赤くなるしかなかった。