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    すいか

    @vIf1EyQiVhXy11t

    類司(🎈🌟)が主の倉庫。
    すいげつ/きんか、あわせてすいかです。

    作者別で作品を表示する場合は「すいげつ」「きんか」でタグで検索すれば見れます。
    ※イラストのみです。文章は「文」で検索してください。

    R-18作品については現在フォロワーさんのみの18高卒↑の方の「リスト」申請で公開しています。

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    すいか

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    とある山のふもとにある旅館に泊まりに来てる類司を目撃するバイトのモブ子の話。

    ※大人側に年齢操作。ごく微少に事後を匂わせるシーンがあり。

    #文

    幸あるふたり 拝啓、お母さん。お元気でしょうか。大学入学のために家を離れた娘は今、山のふもと付近にあるこじんまりとした年期のある旅館で早朝バイトとして働いています。
     そんな私の目が間違いでなければ、脱衣所の前の休憩椅子に最近話題の若手舞台俳優の天馬司が、います。明らかに湯に浸かりにきましたよ。なんて装備で。

     え?マジで?目の錯覚とかじゃなくて?

     男性側のかごや洗面台を整え、準備ををおえた私は脱衣所の扉をうちから開けた。そうしたら彼が目の前の場所にいたのだ。突然の出来事に私は処理ができずに固まってしまった。
     当然扉が開けば湯を待っているらしい浴衣姿が様になっている彼はこちらへ意識を向ける。従業員の私が出てきたことで準備ができたと分かったらしく、パァと明るい表情へと変化して待ってましたとこちらへ向かってきた。

     頂点の金色から毛先にむけてオレンジのグラデーションの髪色と、それと同じ様に色のついた少し大きめな目。そして年齢の割には丸い顔つきとキリリとした眉毛は、どこからどうみてもテレビCMや舞台インタビューの取り上げなんかでみるあの天馬司だ。
     顔をじっくりみた私はやっぱり今起きていることを処理できずにポカーンと顎の力が抜けた。

    「すみません、湯の利用はもう可能でしょうか?」
    「あ、はい。大丈夫です。ごゆっくりお浸かりください」

     彼は見事に綺麗な角度のお辞儀をしてくれると、そそくさと脱衣所へはいっていった。カラカラと音を立てながら閉まった扉が彼がそこに実在していることを証明していて、ますます口は開いたままになった。
     私はそのみっともない口のまま女性側の脱衣所へはいって扉を閉めて鍵をかける。

     ここの旅館は特別有名宿ってわけでもない。だからといって寂れているわけでもないけど、少なくとも芸能人やら有名人がお忍びとしてくるスポットというわけでもない。言っちゃ悪いが何か話題になるようなものがあるわけでもない所だ。強いて言うなら景色はよい方だけど、テレビや他の取材が頻度にはいっているとはきかない。
     それに団体素泊まりの予定も大量の朝食予定もきいていないし。何かあるときは事前に言われるものだ。

     だけど今この場所に天馬司がいる。それはつまりプライベート、ってこと?

     私は女性用のかごをひっくり返し、枠に頭を打ち付けた。こんな場所でプライベート中の有名人に遭遇するなんてすごい確率だ。物凄くラッキーじゃないか!?

     言い知れない高揚感と緊張感に、こちらの脱衣所にはこないのに普段よりも余計に念入りにかごの位置を気にしたり、ドライヤーのコードのよれ具合をなおしたりなんかしてみてしまう。中で移動する度に鏡に水垢がないか何度も見直して、ついでに自分の前髪の位置も整えてみたりなんかしてしまった。

     そうして普段よりも時間をかけて女性側の脱衣所の準備をおえて、鍵を開けて外へでる。
     すると隣の男性用の脱衣所の方へおそらく向かって歩く若い男の人がいた。まだ休憩椅子よりも手前の距離の彼はここからみても高身長なことがわかる。しかし何よりも注目すべきところは髪だ。ラベンダーをベースにターコイズのメッシュを前と左横にいれた、特徴的ともいっていい髪型。

     そう、私の記憶違いでなければ彼は先程出会った天馬司と同じく最近若手としてお名前をよく見かける、演出家の神代類だ。
     私は心の中でひょえ、などと間抜けな声をあげた。よかった、口をついて出なくて。

     天馬司と神代類は仲良しで、なんでも学生時代から一緒に昔バズったらしい遊園地でショーキャストのバイトをしていたなんてよく雑誌でもテレビでもインタビューで取り上げられている。双方からよくそのあたりの仲間内の話題が出ることでも有名らしかった。
     天馬司がプライベートで来ているなら、友達としてあがる彼もまたプライベートで一緒に来たのだろうか。
     え、それってもしかしたら昔の仲間内で遊びにいらっしゃったということ?

     人生何が起こるかわからない。なんて出会いの確率なんだ。心の中でまた私は間抜けな声をあげた。どんな人だろうと優劣のないお客様だということはわかっている。だけどこんなの緊張しないわけがない。

     ポーカーフェイスを今度は保つことが出来た私に向かって、男性側の脱衣所の扉の真正面まで歩いてきた神代類はにこやかに話かけてきた。

    「人を探しているのだけれど、ここに金髪の男性は来てないかな?」
    「私が見た中だと湯開け後すぐにはいられた方がいらっしゃいますよ」
    「そうか。ありがとう」

     笑顔のまま私にお礼をしてくれた彼はそのまま脱衣所へと入っていった。彼の背を追うように閉じられた脱衣所の青いのれんを少しの間じっと見つめていると、「のぁあ!何だ!?あ、類!?何故ここに!?」なんて朝の五時に聞くにはちょっと辛すぎる大きな声が中から響いてくる。

     いや声でっか。
     天馬司の声がデカイのは文字通りよくテレビでも耳にするので知っているが、生は脱衣所の扉越しでもなかなかの破壊力を誇っていた。どのくらいかというと、聞いてしまった外にいる私の脳みそが揺さぶられてクラクラとぶれるくらいだ。近くで聞いたら一溜りもないだろう。

     これは彼の他にあのあとお客様が来ていないことを祈っておかなければいけない。この早朝にきくにはきつすぎる。
     私は脱衣所の前で掌を合わせて、避難も含めて次の仕事の場所へとなるはやの足で向かうことにした。二人の存在について名残惜しくはあったが、またあの爆音をきくのはちょっと避けたいからね。





     あれから朝食のセッティングがおわって、私は入ったトイレから出た。従業員の通路を通って表へと戻って大広間の周りへ行こうと廊下の角を曲がる。
    この旅館は人数分を作ってセットするタイプの朝食だから、実はそれが済んでお客様がはけるまではちょっと手が空く。だから何かしら自分で仕事を見つけないと、暇で逆に苦痛だ。

     何をしようかと悩みながら進んでまた角を曲がるとなんとあの二人、天馬司と神代類がいた。
     
     ひょえ。朝食のセッティングの時にネームプレートを見たが、あの二人は素泊まりの筈だ。それが何故こんなところに。私は思わず振り向かないまま早足で曲がり角へと戻って隠れる。
     ただ普通に通りすぎればいいものを、有名人というだけで緊張してしまった心を誤魔化すように忍びのように壁に張り付く。そうしてコソコソと二人の様子を伺った。

    「今日は少し遠回りして帰ろうよ」
    「なんだ、よりたいところでもあるのか?」

     そう話ながら天馬司がペットボトルの蓋を閉めている。もしかして自販機帰りだろうか?大広間へといく廊下には確かに自販機があってあのお茶のラベルもそこで見かけるものだ。風呂あがりの水分補給のために買いにきたのかな。

    「ドライブのお誘いさ。久しぶりにふたりだけの時間なのに、もうすぐお別れだと思うと離れがたくてね」
    「それは……そうだな。オレも同じ気持ちだ」

     肩をくすめて切なそうな顔をしながら、神代類はもたれ掛かっていた壁から背を離して天馬司へと距離をつめる。
     一方の天馬司はこちらから顔が見えないため表情は分からなかったが、言葉から隣の彼と同じ様に思っていることが伺えた。先程脱衣所で爆音を出していたとは思えない落ち着いた声色。実際大声を出している姿を見たわけじゃないから同一人物なのか疑いたくなる。

     しかしそっか。話題の人になると仕事に引っ張りだこで、こうして友人と遊ぶ時間をとるのも難しくなっちゃうのか。有名になるっていうのも大変だ。
     二人の業界からしたら仕事がいっぱいあるのはきっと良いことだろう。でも仲の良い友人と対面で合うなんて予定が組めないのはやっぱり辛いよね。私も地元の友達や両親とずっと会えないってなると寂しいし、そういう話なんだろうな。
     私は壁に隠れたままウンウンと首をたてにふって勝手に話へ同意をする。どうして二人がこの旅館を選んで旅行に来てくれたのか想像がついた気がした。きっと楽しい時間をのんびりと友人同士で過ごしたかったんだ。

     高まっていた緊張が解れていく。なんだか今なら妙な気分ではなく、いつも通りの心の穏やかさで接客出来るだろう。こうして変に意識してコソコソしたりするのはもうやめられそうだ。
     この先に進むための最初の一歩のために深呼吸をする。その間にまた二人の会話が聞こえてきた。

    「そうとなればルートを決めてしまうか」
    「ここから高速までの道のりをちょっとずつ変えてみようよ」
    「それは良い探検提案だな、類隊員」

     先程とは変わって旅行の帰り道についての相談で楽しそうに、きゃらりとした雰囲気で笑いあっている。
    未知の場所でのドライブ提案でこんなに盛り上れて、噂の証拠のような仲の良さだ。こういうことは相手との距離感や波長が読み取れていないとかなり苦痛じゃないのかと思っちゃうし。互いに楽しいと思うことが合ってるんだろうな。

     本当に気の合う友人とは生涯で合えるか合えないかの確率らしいと母からきいたことがある。この二人はそんな確率の中で出会って今ここに来ているんだろう。そう思うと彼らに対して外野ながら尊さを覚えるのと同時に羨ましくなった。
     だって学生からの付き合いでここまでずっと仲が良いのだ。それはきっと二人が互いの良いところも悪いところも見てきた上での結果じゃないのだろうか。そこは私の憶測でしかないけれど、もしそうならば素敵な友情だ。

     私が今日この二人と出会したのもすごい確率で、こうして会話を失礼ながら盗み聞きしているのもとてつもない確率。そしてこれは細やかながらきっと良い縁なのだと思えてきた。だってこうして私にとっても大切なことを、いつのまにか考えさせられてしまっているから。
     地元と大学の友達の顔が浮かぶ。私もみんなとの交流をこれからも大切にしよう。きっとそこに縁があるならこの二人みたいな関係になれると信じて。

     深呼吸の合間についそんな風に勝手に彼らの会話で浸っていれば、表情からご機嫌な様子が分かる神代類が早く部屋に帰ろう。と提案している。それを受けた天馬司は返事と共にコクリとひと頷きして、私のいる角とは別の泊まっているお部屋がある方の廊下へと身体を向きなおした。
     これならそのまま戻るのを待って出ていった方が雰囲気も壊さずにいいかも。

     私は彼らの歩く背を見つめ、見えなくなるまで角から顔を出した姿勢を保って忍びをやり遂げた。
     途中テンションの高いままらしい神代類が天馬司の手に指を絡めてちょっかいをかけていたが優しく振り払われていて、よっぽど彼にドライブに賛成してもらったのが嬉しかったんだろうなと失礼ながら微笑ましくなってしまった。

     しかしそれにしてもその行為はちょっと距離が近いような?私は二人の手遊びのような行為に微かな疑念を抱く。
     けど小学生のころから意外と男子の友人同士ってそういう距離の近さがあるのを見かけたことがあるし、あの二人もそんなコミュニケーションが延長線にきても不快にならない程度には距離を許せているのかもしれない。現にさっきの天馬司の振り払いかたは嫌そうという感じではなかったし、まあよくある高めのじゃれあい程度なのだろう。

     私は二人が消えたあとの廊下でこのあとのドライブが楽しいものになりますように。なんて願ったりしてみたのだった。
     今日は私の確率がキテるから、きっと彼らの幸運の確率も来ていると良いな。そうすればもっと楽しい帰り道になるだろうから。


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    そのために力を惜しまぬと言い放ったら、と。


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    そう、目覚めた。それだけがはじめの意識だった。ここがどこかはわからない。少し視線を動かすと、あちこち崩れた天井のむこうで、澄んだ青が高く見下ろしている。空だ。しかも昼の、晴れた空。なんだかそれにひどくほっとして、ほう、と息をつく。数回瞬いた。見える。問題ない。自分の意志で視界を動かせる。途方もないことだった。――――? そうかな。途方もないことだったかな。だって、見えるってそういうものではなかったろうか。青空があって、それを見ることができて、そんなのって、珍しかったっけ? わからないなあ。でも。でも。でも。



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    そういうものだと言わんばかりに、体が無意識にそうしようとした。
    が、阻まれた。ぐぇ、と首元がなにかに引っぱられる。
    わからないので、首を傾げた。耳元でなにかがふさりと揺れる。
    引っぱられた気がしたのだけれど、周囲に自分以外がいる気配はとんとない。
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    左を向く。
    寝そべっているのは地面だ。
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    「どうすればよかったかの算段がついたら、ほら、試したくなるじゃない?」

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